Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

便利、効率の裏側 ウーバー、リフトのサービス停止騒動

 

 米カリフォルニア州で、ウーバーとリフトが、21日午前に配車サービス事業を一時停止する可能性があるとロイターが報じ驚いた。

 その後、土壇場でサービス停止が回避される。

州控訴裁が、「ドライバーを個人請負人として扱うことを禁じる」という一審の仮命令の猶予期間を延ばしたことによるようだ。

 

www.nikkei.com

 

  8月10日、米国カリフォルニア州上級裁判所が、ライドシェアのウーバー・テクノロジーズとリフトに対し、ドライバーを個人請負人として扱うことを禁じる暫定的な差し止め命令を出したという。

 JETRO日本貿易振興機構によれば、カリフォルニア州、ロサンゼルス、サンディエゴの各市は、5月に、ウーバー・テクノロジーズとリフトが、ライドシェアサービスを提供する運転手を従業員ではなく個人請負人と分類したことが、2020年1月施行の「労働法などに関する改正法(雇用形態-従業員と独立請負人)」(AB5)に違反しているとして、訴訟を起こしていたという。

 

AB5は、自社のカリフォルニア州の労働者が3つの状況を満たさない場合には、労働者を個人請負人ではなく、従業員として扱うことを求めている。

労働者が従業員扱いになることで、雇用主には雇用保険などの負担が生じることになる。  (出所:JETRO

 

www.jetro.go.jp

 

 

 

 ウーバーは、欧州でも問題を抱えている。

 英国のウーバーのドライバーたちの団体が、オランダにあるUberの子会社に対し、個人データを開示しアルゴリズムに関する説明責任を果たすよう求める訴えを起こしたとTechCrunchが伝える。

 ウーバーのドライバーとUber Eats(ウーバーイーツ)の配達者は、ウーバーが、プロファイリングおよびアルゴリズムによって、欧州でギグワーカーをどのように管理しているかを公開するよう求めるこの訴訟に加わることができるという。

 

この訴訟を起こしたプラットフォーム労働者たちはまた、EUデータ保護法で定められている、データ開示に関する他の権利も行使することを求める考えだ。 (出所:TechCrunch)

  

 EU市民は、一般データ保護規則GDPRに基づき、自分の個人情報の開示を求める権利が与えられているという。 このGDPRの第22条では、AIブラックボックスが人間の動き方を決める力を制限する方法を定め、影響を受ける個人のデータを処理する際のロジックについて情報を提供することをデータ管理者に義務づけているとTechCrunchは指摘する。

 

これは今回のウーバー訴訟にも関係している。

なぜなら、同社のプラットフォームでアルゴリズムが配車・配達リクエストの中からどのように仕事を割り振るかによって、運転手や配達業者の収入額が決まるからだ。 (出所:TechCrunch)

  

jp.techcrunch.com

 

 気になるテーマだ。司法がどのような判断をするのだろうか。

 

 

 

 Forbesは、今回の州控訴裁の措置に対するウーバーやカリフォルニア州各市の反応を伝える。

 「ドライバーを個人請負人として扱うことを禁じる」 と裁判所が下した仮命令に、ウーバーとリフトは、ビジネスモデルを短期間に変えるには膨大なコストがかかり、現実的ではないと反発していたという。

 Forbesによれば、両社は、ドライバーを従業員にすることで、価格が上がり、サービスの利便性が低下すると述べているともいう。

 

 一方、この仮命令支持する州の議員や労働団体は、ウーバーとリフトがドライバーたちに、最低賃金や病気休暇など、労働者に与えられるべき必要な福利厚生の権利を提供してこなかったと指摘しているという。 

 サンフランシスコ市長は、ウーバーやリフトのサービスの重要性を認めた上で、「AB5を支持しており、企業は法律を遵守する必要がある」と述べたという。

 

 サンディエゴ市長とサンノゼ市長は共同声明で、州とライドシェア企業らがサービスの停止を回避するための交渉を行うことを望んでいるという。

 Forbesによれば、市長らは、ウーバーやリフトがカリフォルニア州でサービスを停止すれば、住民や経済に打撃を与えると述べ、ライドシェア企業のサービスが、患者の病院への送迎に利用され、交通手段を必要とする労働者にとっても重要だと話したという。

 

ドライバーを独立した契約者として維持することを求め、「ポータブル・ベネフィット」と呼ばれる新たな仕組みで、ギグワーカーらに福利厚生を提供できることを示唆した。

ウーバーCEOのダラ・コスロシャヒも今年、ニューヨーク・タイムズに寄稿した記事で、ポータブル・ベネフィットの利点を説いていた。 (出所:Forbes)

  

forbesjapan.com

 

 カリフォルニア州では、個人請負人 「ギグワーカー」として働くことを選ぶ権利を保護する提案(Proposition 22)が、11月に住民投票にかけられる予定だという。

 

同提案の目的には、ドライバーが働く時間や場所などを柔軟に選ぶ権利を保護することや、最低所得補償など労働者としての便益を提供するよう雇用主に求めることも含まれている。

同提案を支持する団体「Yes on Proposition 22」は、同団体ウェブサイトのFAQで、「デリバリーサービスやライドシェアのプラットフォームは、新型コロナウイルス感染拡大で収入や仕事を失って苦しむカリフォルニア州民に、収入を得る機会を提供している。

AB5は、ドライバーの働き方の柔軟性や独立性を排除する恐れがある」などと説明している。 (出所:JETRO

 

 ライドシェアという新しいビジネスが生み出した現代の矛盾なのかもしれない。利便性や効率だけを考えたビジネスモデルのリスクとも言えそうだ。

 

 SDGsには、「誰一人取り残さない」との概念もある。

 

 どのような結果になるのだろうか。

 

 結果が出る前に、誰もが納得できるようにビジネスモデルを見直すことがベストなことなのであろう。

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

  

「参考文書」

jp.reuters.com

 

f:id:dsupplying:20200822052336j:plain

 

アップルの時価総額 驚愕の2兆ドル なぜ投資家にも愛されるのか

 

  アップルの時価総額が2兆ドルを超えたという。ざっと210兆円。米国企業ではじめだという。日本経済新聞は、「安定成長が見込める企業にマネーが集中している」と指摘する。

 

コロナ下の株式市場では大型ハイテク株へのマネー集中が進んでいる。

アップルは在宅勤務需要に加え、次世代通信規格「5G」対応端末の買い替え需要やサービス収入の拡大が見込める。

マイクロソフトや米アマゾン・ドット・コムも在宅勤務の拡大による「クラウド」需要の拡大など、投資家は成長ストーリーを描きやすい。

アマゾンも年初来の上昇率が約80%に達している。 (出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

 

 マネックス証券の大槻奈那さんが、NEWSPICKSで「節目越えで将来性の真価が改めて問われると思います」とコメントしたのが印象的。

 市場との対話が重要ということであろうか。逆に、市場関係者が、アップルが発信する情報の中から何を認知し、反応するかということも重要なことなのであろう。

 

 

 

アップルのSDGs 2030年の「カーボンニュートラル」を宣言

 アップルがコンセプトムービーを公開した。 

 アップルは、2030年までに「カーボンニュートラル」になることを宣言している。

 アップル製品のライフサイクルにおいて、カーボンフットプリントを最小化するという。TradeInというプログラムで、自社製品を回収してリサイクル材料の使用を拡大、サーキュラー・エコノミーを実践する。

 そして、自然界生態系の再生に投資、そこでのCO2回収を目指していくという。

 

 世界で最も革新的な製品をつくると同時に、サステナブルな製造プロセスを設計すると宣言したAppleSDGsな取り組みとAD Gangはいう。

 


A climate change promise from Apple

   

adgang.jp

 

 

 

地球の危機 気候、自然、汚染の三重苦

 2020年は稀にみる災禍の年になるのだろうか。新型コロナ、記録的な豪雨、暑すぎる夏 危険な温度、経済の失速。

 世界に目を転じれば、レバノン ベイルートでは驚くほどの大爆発が起き、モーリシャスでは商船三井傭船したわかしお座礁し、大量の重油が流出、環境に甚大な被害を及ぼした。

 米カリフォルニア州ではまた山火事がおき、非常事態が宣言された。そのカリフォルニア州では慢性的な電力不足で計画停電が実施される。

 

 ブルームバーグによると、カリフォルニア州の一部地域では、8月17日 夜の気温が43℃になると予想されているという。

 

数十年で最も過酷な部類の熱波に見舞われている米カリフォルニア州では、17日夜に計画停電に追い込まれる可能性があり、最大で1000万人の住民が影響を受けるとみられる。

同州の送電系統を管理する独立系統運用機関(CAISO)は、エアコン使用などによる電力需要急増で送電システムが崩壊する事態を防ぐため対応に当たっている。 

計画停電はこの4日間で3回目となる。(出所:ブルームバーグ

 

www.bloomberg.co.jp

 

  

 最近の国連が発行するニュースでは、「地球の危機 気候、自然、汚染の三重苦」のような言葉をよく見かける。

 国連ニュースによると、新型コロナ COVID-19はスタンドアロンの問題ではないという。これは、人類の執拗な拡大と持続不可能な消費と生産に起因する三重の危機の一部だという。

 自然と生物多様性の喪失は、人類をCOVID-19などの人獣共通感染症とより密接に接触させ、一方で、私たちの生存を維持する自然のシステムを破壊している。木のてっぺんに腰を下ろし、私たちの下の幹で薪を刈っている。

 気候変動はすでに世界中で森林火災、極端な熱波、壊滅的な干ばつ、恐ろしい洪水をもたらしている。行動を起こさなければ、1.5°Cに保つというパリの目標を逃すという非常に現実的なリスクに直面し、このような影響の激化がさらに予想される。

 化学物質や廃棄物の汚染と管理の悪さは、世界中の多くの主要都市にかかる煙害から、ベイルートで見た恐ろしいシーンまで、あらゆる問題を引き起こしている。 (出所:国連ニュースを意訳)

  

www.unenvironment.org

 

アップルが愛される理由

 世界経済フォーラムは、「持続可能な製造業が、倫理面だけでなく経済面でも重要な理由」という記事を投稿し、持続可能でレジリエントな産業構造を構築できるこの機会を捉え、今すぐ行動に移さなければならないと提言する。

 そのためには、「デジタル・トランスフォーメーションを通じたレジリエンス向上」、「事業に新たな価値をもたらす方法でエネルギー消費を実現するための業務効率化の実現」、「再生可能エネルギーの活用」、「ライフサイクル思考の実践」、「サプライチェーンデータの透明性」などが求められるという。 

 

jp.weforum.org

 

 まさしくアップルが実践している行動ではないかと思える。アップルは何も革新的な商品を開発しているばかりではない。

 

 こうした側面を市場関係者はどう評価しているのだろうか。

 

 音楽や動画配信など各種のサブスクリプションサービスをひとまとめにした「AppleOne(アップルワン)」を「iPhone」の新機種の発売にあわせ、10月頃、サービスを始めるといわれている。

 日本経済新聞によれば、料金は明らかでないが、各サービスを個別に契約する場合に比べ割安になるという。

 

www.nikkei.com

 

 この経済情勢を鑑みてのことなのか、アイフォンSEといい、ここ最近、アップルは低廉なサービスの提供を始めているようだ。

 アナリストたちはこうしたアップルの行動をどう評価するのだろうか。

 

 8月18日、アップルはApple Musicのラジオを発表した。

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www.apple.com

 

ブルームバーグによれば、アップルミュージックと競合関係にあるスポティファイは、ミシェル・オバマ氏らの独自番組などポッドキャストの充実で会員数を増やそうとしているが、アップルは定額制を新たな収入源を増やす戦略の柱としているという。

 

www.bloomberg.co.jp

 

 何かとアップルの話題が尽きない。

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

dsupplying.hatenadiary.com

 

dsupplying.hatenadiary.com

 

dsupplying.hatenadiary.com

 

 

脱炭素の切り札は水素か 欧米で動き始める水素利用

 

 水素を燃料とする燃料電池車のスゴイ車が登場した。いよいよ水素の時代が始まりそうな予感がしてくる。

 

未来を予感するFCV HYPERIONハイペリオン) XP-1

 米国カリフォルニアのスタートアップ HYPERIONハイペリオン)社から、「XP-1」というFCVが登場する。 

 燃料電池車の可能性を示す最適なリファレンスとなるとGIZMOZOはいう。使われているパワーユニットは、NASAが宇宙開発のために開発したプロトン交換膜(PEM)燃料電池パワーモジュールだそうだ。 

 

最大出力値は未公開ですが、時速約100kmまでの加速は2.2秒以下。

最高速は354km/h以上で、しかも航続距離は1,609km!

エネルギーチャージは水素注入で済むため、EVの充電のような時間はかかりません。(出所:GZIMODO)

 

www.gizmodo.jp

 

 2022年までに300台販売されるという。

 

(写真出所:HYPERION

  

 

 

欧州グリーン・ディール  気候中立に向けた水素戦略

 7月初旬、EUは「欧州の気候中立に向けた水素戦略」を発表した。

 JETRO日本貿易振興機構によれば、同戦略は2050年までの気候中立(二酸化炭素の排出実質ゼロ)を目指す欧州グリーン・ディールの一環と位置付けられ、同日に発表された「エネルギーシステム統合戦略」を補完するものだという。

 

電化が困難な産業分野の燃料や、再生可能エネルギーの貯蔵手段として水素の可能性を見込んでいる。

中でも、風力や太陽光といった再生可能エネルギー由来の電力を用いて生産された水素を優先する方針。

一方で、短・中期的には、天然ガスなどを原料に二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS)などを取り入れて生産された低炭素水素も、補完的に利用するとしている。 (出所:NNA EUROPE) 

 

europe.nna.jp

 

 2050年までのロードマップで、再生可能な水素の電解槽の設置規模と再生可能な水素の2030年までの目標生産量を規定する。

 2030年以降は再生可能な水素技術を成熟させ、航空業、運送業など脱炭素化が難しいとされるあらゆる業種に拡大させたい考えだとJETROは説明する。

 

www.jetro.go.jp

 

 EUが、水素技術の実用化と普及に向けた戦略を発表したことで、水素の活用が本格的に動き出すことになるのだろうか。

 

 

 

東京オリンピックの聖火は水素で灯されるのか

 昨年末、東京都は「ゼロエミッション東京戦略」を公表した。その中で、再エネ由来CO2フリー水素を本格活用し、脱炭素社会の実現の柱にするとした。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 東京オリンピック2020では、 聖火などに水素を利活用するとしていた。

「聖火台は、東京大会による持続可能性の追求への象徴になる」

と武藤事務総長が説明していた。

 福島でCO2フリーで製造された水素が使用することが見込まれ、東京大会2020の会場では、来場者や関係者の移動のために、FCV燃料電池車が多数走る予定がだったという。しかし、東京オリパラは来年に延期となってしまった。

 

 NNA EUROPEによれば、EUの気候変動対策を担当するティメルマンス上級副委員長は、EUの水素戦略発表時に、「新たな水素経済は、新型コロナウイルスによる経済的打撃の克服に必要な成長の原動力となる」と話したという。

 

 来年、もしオリンピックが開催となれば、ぜひ水素の未来を見せてもらいたいと思う。

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

 

 

食べチョクやZOZOがヤマトと連携 クロネコヤマトのDXと働き方改革

 

 新型コロナによる緊急事態宣言下、必要な物資の配送を支えてきたヤマト運輸が業績を回復させたようだ。

 巣ごもり消費の拡大も業績回復を後押ししたのだろうか。

  20年4-6月期、ヤマトの宅急便の取扱量は17%増の4億9100万個あまりと大きく伸びた。売上高は3920億円と前年同期から3%増加し、前年同期61億円の赤字だった営業利益は99億円となり、黒字転換した。外出自粛で在宅率が上昇したことのいい影響もあったようだ。

 2017年、宅配ドライバーの勤務実態が明らかになり、待遇改善のため、配送料を値上げした。英断だったかもしれないが、結果的に、コストが増加し、業績は低迷していく。

 20年3月期の決算でも、営業利益は447億円と、前の期に比べ23%も減少していた。日本経済新聞によれば、夕方以降に配達する契約社員を増やし人件費が膨らんだことの影響もあるようだ。

 働き方改革構造改革を同時に進めることの難しさということであろうか。

  

www.nikkei.com

 

 ヤマトは、緊急事態宣言下、物流サービスを支えた社員に見舞金を支給、その功績に報いた。見舞金は人件費の増加につながったものの、物流全体におけるデジタルトランスフォーメーション DX デジタル化の推進による集配などの効率化や、幹線ネットワークの構造改革を推進した結果、費用全体では圧縮につながったようだ。

 日本海事新聞によれば、オンライン会見で芝崎健一副社長は「胸を張れるものではないが、構造改革の効果を確認できた」と話したそうだ。

  

 

 

 新型コロナがヤマトにとっては追い風になったのだろうか。

 ヤマトは今年1月に、新たな経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」を発表した。

  その構造改革に至る道のりを長尾代表取締役社長がディリー新潮のインタービューで答える。

 

荷物とともにご依頼主さまの想いを運ぶのが宅急便だった

 これまでの宅急便は、ご依頼主さまから託された荷物をお届け先まで配達するのが基本設計でした。

けれどもeコマースの急激な成長によって、いまは受け取る側のお客さまが「起点」となる荷物が急増しています。 (出所:ディリー新潮)

 

www.dailyshincho.jp

 

「YAMATO NEXT100」は、社会のニーズに応える新たな物流のエコシステムを創出することといい、 「3つの事業構造改革」と「3つの基盤構造改革」を実行するという。

 

3つの事業構造改革

1. 宅急便のデジタルトランスフォーメーション(DX)

 徹底したデータ分析とAIの活用で、需要と業務量予測の精度を向上し、予測に基づく人員配置・配車・配送ルートの改善など、輸配送工程とオペレーション全体の最適化、標準化によって、集配の生産性を向上するという。

2. ECエコシステムの確立

「産業のEC化」に特化した物流サービスの創出に取り組むという。
 まとめ配達や配達距離の短縮化、オープンロッカーや取扱店受け取り、安心な指定場所配達などを通じて、EC事業者、購入者、運び手のそれぞれのニーズに応える、EC向けラストマイルサービスの最適解を導き出するなどして、ECエコシステムを確立していくという。

 

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(資料出所:ヤマトホールディングス公式サイト ニュースリリース

 

3. 法人向け物流事業の強化

 ヤマトは、すでにヘルスケア業界や農産品流通において、サプライチェーン全体を最適化するソリューションを提供し始めているが、多頻度小口配送とデータ基盤を統合し、各業界、業種に幅広く提供していくという。 

 

www.yamato-hd.co.jp

 

 6月、ZOZOTOWNは、ヤマトの新たなEC事業者向け配送サービス「EAZY(イージー)」を導入し、「非対面受け取り」を可能にした。

 ヤマトがいう「ECエコシステム」を具現化したサービスのようだ。

 ヤマトによれば、ZOZOTOWNで購入したお客を対象に、商品発送後に「お届け予定通知(メール)」を送付、メールに記載されている専用WEBサイトから、玄関ドア前、自宅宅配BOXなどの非対面配達での受け取り場所を指定でき、自分の好きな場所・タイミングで受け取ることが可能になるという。

 また、外部パートナー「EAZY CREW(イージー クルー)」と連携し、高効率な配送を目指すという。

 

f:id:dsupplying:20200818082212p:plain

 

corp.zozo.com

 

 ヤマトが、巨大ECサイトが先行していたこうしたサービスを誰もが利用できるようにしたということなのだろうか。

 

 

 

 

 8月、食べチョクが、ヤマト運輸とシステム連携を開始すると発表した。

「食べチョク」は、生産者から“チョク”で食材を取り寄せられるオンライン直売所を運営する。

 

コロナの影響で、これから多くの生産者さんが販路を失う。

“生産者ファースト”を掲げる私たちが率先して動かないといけない。

人手が足りないとかスタートアップだからとかは理由にせず、やれることを全部やろう。

(出所:note 秋元里奈@食べチョク代表「食べチョク怒涛の5ヶ月間と、生産者さんとの約束」)

 

 3月、食べチョクは、新型コロナの影響を受ける農家支援に奔走するようになる。

 


昔ながらの野菜の味 繁昌農園 Tokyo篇【食べチョク生産者特集】

 

 ヤマトと連携することで、生産者は今までより簡単に発送作業をすることができるようになるという。1次産業のDX化への第一歩なのかもしれない。

 

note.com

 

 ヤマトは、今年1月、「YAMATO NEXT100」の発表に合わせ、SDGsの概念を取り入れた「サステナビリティ」の取り組みを公表した。

 環境と社会を組み込んだ経営を目指すという。

 

 2050年CO2実質ゼロに挑戦し、EVの導入や再エネ利用等を進め、持続可能な資源の利用、スマートモビリティ、働きやすい職場づくりを通じたディーセント・ワーク(働きがいのある、人間らしい仕事)達成への貢献、人権・ダイバーシティの尊重、健全でレジリエンス(強靭)なサプライチェーンマネジメントなどに注力していくという。

 

f:id:dsupplying:20200818080143p:plain

(資料出所:ヤマトホールディングス公式サイト ニュースリリース

 

 ヤマトらしさを取り戻しつつあるのだろうか。

 新型コロナによる環境の変化が、ヤマトの構造改革をさらに加速していくのかもしれない。

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

www.yomiuri.co.jp

 

 

 

「参考文書」

www.jmd.co.jp

結束する欧州、対立する米中、それに適応していくビジネスもある

 

 香港のことが気になる。香港国家安全維持法が制定され、同法違反容疑で逮捕者が出るまでの事態になってきた。

 20年近く、仕事を通して香港と関わりがあった。ニュースだけを見ると、再び香港を訪問しようとの気にあまりなれない。知り合いも多くいるが、声を掛けにくく連絡できずにいる。

 

www.jiji.com

 

 

 

 米中対立が激化する。報復合戦、何か事を起こしては互いに報復措置を繰り返す。

 

 米政府が、香港で製造され米国へ輸出される製品について、「中国製」と表示するよう義務づけると発表した。香港で国家安全維持法が施行されたのに伴う香港への優遇措置の廃止の一環だと日本経済新聞が伝える。関税は中国本土と同率になり、米政府が中国に課す制裁関税が香港製の物品にも適用されることになるという。

 

 香港は変わっていってしまうのだろうか。

 

r.nikkei.com

 

 中国のレアアースの輸出量が、4月以降、コロナ感染拡大の影響で減少しているという。

 米国はレアアースの8割を中国に依存している。今後、中国が輸出制限に動くことも考えられると共同通信は指摘する。

 

軍事を含むハイテクで中国産に依存する米国への輸出が滞れば、米中対立の新たな火種となりそうだ。

中国がトランプ政権による中国企業排除の報復手段に使う可能性もある。 (出所:共同通信

 

this.kiji.is

 

 こうした報復合戦は、サプライチェーンに影響があるのだろうか。

 

 「もはや中国が世界の工場である時代は終わった」と、アップル製品を生産するFoxconn鴻海精密工業)の劉揚偉会長がコメントしたという。

 貿易摩擦が激化、関税問題が現実化となれば、産業界は動くしかない。

 Foxconnは、米国向け商品の生産を中国から東南アジアやその他の地域にシフトしているとブルームバーグが伝える。

 デバイスメーカーも生産拠点を中国から離れ多様化するようになり、中国に生産を頼っていたiPhoneは中国国外でも生産できるようになったという。

 これは、中国中心の電子機器サプライチェーンが長期的には細分化されていくことを示唆しているとブルームバーグは指摘する。 

  

「China’s Days as World’s Factory Are Over, IPhone Maker Says」(Bloomberg)

 

  日本経済新聞は、アップルは従来のアイフォンの生産委託体制を見直そうとしているという。

 今まですべて台湾勢に発注し、大半を人件費の安い中国で作らせてきたが、今後は大きく二つに分ける構想が固まりつつあると指摘する。

 

この構想では、世界販売約2億台のうち、中国で売る約3000万台は中国メーカーを中心に作らせる。

担い手として有力視されるのがラックスシェアを中心とした「新・中台3社連合」だ。

中国市場以外で売るスマホについては生産地の中心をインドにする。

ペガトロンは7月、インド進出を決めた。鴻海やウィストンも相次ぎ、インドへの追加投資を計画。鴻海は既に高価格帯のiPhone11の生産にも乗り出したという。 (出所:日本経済新聞

 

r.nikkei.com

 

 日本経済新聞は、こうしたアップルの委託生産体制見直しには多くのメリットがあると解説する。

 一つは中国リスクの回避、そして、もうひとつは調達価格の低減だという。

 中国系EMSを中心とした体制で中国向け商品の生産を維持すれば、一定程度中国への顔向けはできる。その一方で、一極集中のリスク回避と高騰した中国の人件費抑制を目的に中国外の生産を拡大する。

 この危機上に乗じて、両者に顔を立てながら実行するアップルの強かさといってもいいのかもしれない。

 そのアップルは、サーキュラー・エコノミーを推し進め、レアアースの回収を独自に進める。

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 香港上場子会社のFIH Mobile Ltd.が、8月7日の決算発表で、Huaweiが中国で人気を博している一方で、米国の制裁を受けて他の地域では期待外れと述べたとブルームバーグが伝える。

 同社のもう1つの主要顧客であるXiaomi(小米)は、中国とインドの緊張が高まる中、インド市場で反発に見舞われているという。

 

☆★☆

 

  アグネス・チョウ(周庭)さんが、香港国家安全維持法違反の容疑で逮捕され、その後保釈された。

 10代から政治活動に身を投じてきた若手の民主派活動家の一人だという。AFPは、中国当局が、今、この世代の活動家らを沈黙させようとしているという。

 

 11日夜に保釈された周氏は記者団に「当局に対し、このようなばかげた政治的訴追の停止を求める」と述べた。

長きにわたって中国本土の独裁的指導者らやその香港出先機関との対立を繰り返してきた経歴に、今回の逮捕が新たに加わった。 (出所:AFP BB NEWS)

 

www.afpbb.com

 

 政治手法が陳腐化してきていないであろうか。力による支配には限界がありそうだ。

 そうした影響を回避し、強かにしなやかに生き延びようとする人たちがいるようにも見える。 

 

 

 

 欧州では、7月下旬、EU 欧州連合が、域内経済の立て直しのため、総額7500億ユーロの「復興基金」を創設することで合意したという。

 

 ロイターによれば、これまでギリシャ債務危機やイタリアに反EU的なポピュリズム政権が誕生したことなどで、投資家は何度も、ユーロ圏解体が近づいているとの恐怖にさいなまれてきたという。

 今回の復興基金の合意は、約70年にわたる欧州統合の取り組みにおける画期的で、未曽有の行動との評価がもっぱらだとロイターは指摘する。

 

投資家は拍手喝采を送った。

欧州の財政統合に向けて重要な一歩を踏み出したことになり、債務危機や南北対立に長年悩まされてきたユーロ圏の金融資産にとって、プラス方向への大きな転換点になったとみなされたからだ。

実際、ユーロ/ドルは基金創設合意を好感し、1年半ぶりの高値を付けた。 (出所:ロイター)

 

jp.reuters.com

 

 これはEUの奇跡であり、理想像でもあると、Forbesはいう。

 

「70年近くにわたる欧州統合の歴史で前代未聞の結束」

 ポピュリストや支出を渋る頑固者を含む27加盟国のリーダーの意見をまとめるまでに90時間かかった。

そんな中、長きに渡ってリーダーとして外交手腕を磨いてきた女性が3人いる。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相、欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長、欧州中央銀行クリスティーヌ・ラガルド総裁だ。

この3者を合わせた力は強大だ。

この雑多な群衆を7500億ユーロ(約93兆5000億円)の復興基金案で合意させる上では、3人のリーダーシップスキルが大きな役割を果たしたことだろう。 (出所:Forbes)

 

forbesjapan.com

 

 欧州は長い対立の歴史に終止符を打ったのだろうか。

 

 Forbesによると、メルケル首相は記者会見で「これは容易でなく、何日間もかかった」と認めたうえで、次のように語る。

私たちがそれぞれ別の立場にあることも示された。

しかし、私にとって大事なのは、私たちが最終的に合意に達し、皆が決定内容に納得していることだ (出所:Forbes) 

 

 主義主張は、それぞれの立場によって異なる。違いがあって当たり前のことだ。

 その違いを力によって征服しようとすることは時代錯誤が甚だしいということでもあろうか。

 

 そろそろ政治も変わらなければならないということなのかもしれない。

  

 

「関連文書」

www.afpbb.com

 

gigazine.net

 

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レジ袋とバイオマスプラスチックスを考察 環境への影響は

 

 レジ袋が有料化されたり、石炭火力発電など石炭政策が変化してきた。ここ最近、エコフレンドリーな施策が目に付くようになってきた。

 その火付け役である小泉環境相がたびたびメディアに登場し、その背景や経緯を語っている。

   

 「.....なぜ(レジ袋の有料化が)始まったのですか?」と問われた小泉環境相は、杉村太蔵氏との対談で「きっかけ」と答える。

 

目的が違うんです

目的は、レジ袋有料化をきっかけに、世界的な課題になっているプラスチックに問題意識を持ってもらうこと。

杉村さんも「有料化して何の意味があるんだろう?」と疑問を持たれた時点でプラスチックゴミのことを考えているとも言えますよね (出所:NEWSポストセブン)

  

www.news-postseven.com

 

  メディアがプラごみ問題が取り上げることで、問題が深耕され、疑問を投げかけることで、学びの機会になっているのかもしれない。

 

 

 

バイオマスプラスチックの裏側

  文春オンラインは、有料化対象外となった「バイオマスプラスチックも放置すれば「永遠のごみ」と指摘し、日本経済新聞は、「原料となるバイオマス(生物資源)の安定供給について注意しておきたい」という。

「レジ袋有料化ルール」3つの抜け道

国が定めたレジ袋有料化のルールには、三つの抜け道が用意されている。

一つは、厚さが0.05ミリメートル以上のもの。使い捨てではなく繰り返し利用できるという理由だ。

二つめは、ごみとなって海に流れ込んでも自然に分解されて消滅する「海洋生分解性プラスチック」だけでできているもの。

そしてもう一つが、バイオマス素材が重さにして25%以上含まれているものだ。 (出所:文春オンライン) 

  

bunshun.jp

  

農地でバイオプラスチック用の作物を作れば食料供給を圧迫するうえ、大規模な農地開発は森林減少によるCO2放出や生物多様性の問題を招く。 (出所:日本経済新聞

  

www.nikkei.com

 

バイオマス産業がさかんなブラジルの実態

 南米の農業大国ブラジルでは以前よりバイオマス利用がさかんであったと聞く。

 ガソリン代替としてサトウキビを原料とするバイオエタノールなどを利用する。石油価格高騰でバイオエタノール生産に拍車がかかったようだ。

 

耕地が膨大でサトウキビを作付けする余地の大きなブラジルでは、サトウキビがエタノール生産の原料となった。

特に、同国では、1970年代の石油危機の時の苦い経験から、石油への依存度を下げるためガソリンに20%~25%のエタノールを混合することを義務付けている。 (出所:独立行政法人農畜産業振興機構

 

 生産が増えれば、当然原料となるサトウキビの増産も必要になる。

 

 環境問題への影響として政府は、サトウキビであれば食料や環境との競合は少ないとみている。

ただ、バイオエタノール生産拡大によるサトウキビ栽培の拡大が、牧草地への大豆栽培を促し、大豆農家に牧草地を売った牧場主は更にアマゾンの奥地に牧場を求めて森林を伐採しながら移動するという、玉突き的な「森林破壊のサイクル」が生じているとの指摘がある

とはいえ、長期的なエネルギー不足や地球温暖化が懸念されるなか、ブラジルのバイオエタノール産業は、将来的にも世界の再生エネルギー分野を先導する産業であるといえよう。 (出所:独立行政法人農畜産業振興機構) 

 

www.alic.go.jp

 

進むブラジル アマゾンの森林破壊

 ブラジル アマゾンの熱帯雨林南端のパンタナル湿原で、今年7月から発生する火災件数が、観測史上最も多いとAFPが伝える。

 パンタナル湿原は、ブラジルからパラグアイボリビアにまたがり、生物多様性が高いという。 

 環境問題専門家らは、気候変動に懐疑的なブラジルのジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領が、保護地区での農業や採掘を促進する政策を取っていることで、国の重要な天然資源を破壊していると非難している。 (出所:AFP BB NEWS)

 

www.afpbb.com

 

 バイオベースで作られるプラスチックスは、こうした環境破壊のリスクもあるということなのだろう。

 

 

 

ユーグレナ 非可食バイオマスプラスチックスの開発

 サトウキビやトウモロコシなど可食成分に頼らず、非可食バイオマスからなるバイオマスプラスチックスの研究開発も進む。

 ミドリムシユーグレナ社は、環境省が推進する「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」を通して、「ミドリムシユーグレナ)の培養に、古紙や食物残渣などから分解した糖化物を栄養分として使用する非可食バイオマスによる資源循環システムの構築を目指します」と公表した。

 

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(資料出所:ユーグレナニュースリリース

 

www.euglena.jp

 

 8月6日、ユーグレナ社は、「微細藻類ユーグレナ成分を配合したバイオマス含有度50%のユーグレナ・プラスチックを開発」と発表した。

 研究成果のバイオマスプラスチックスを公表するが、実用化にはもう少し時間がかかるのだろうか。

 

汎用プラスチックの一種であるポリプロピレン(PP)とユーグレナ脂質抽出残渣を混錬し均一分散させたバイオマス含有度50%のユーグレナポリプロピレン複合体(図1)を開発しました。
 本研究で開発したユーグレナポリプロピレン複合体の物性上の特長は、100%石油由来ポリプロピレンと比較し、曲げ試験における最大曲げ応力と曲げ弾性率の向上が見られ、強さと硬さが付与されました。

開発したユーグレナポリプロピレン複合体を用いて射出成型によりフォーク等のサンプルを作成し、一般的な射出成型機での成型が可能であることを確認しました(図2)。今後、食品容器や成型材料など様々な用途への展開が期待されます。 (出所:ユーグレナ

 

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www.euglena.jp

 

 こうしたバイオマスプラスチックスの開発を環境省が補助事業や委託事業で後押しをする。ユーグレナ社以外でも非可食バイオマス利用のプラスチックスの研究開発が進むが、商用化にはもう時間がかかりそうだ。

 

 

 

プラスチックスの未来

 「化石燃料、化石資源を使って生み出されるプラスチックにこれだけ依存している社会のあり方を私たちは変えられるかどうか」と、小泉環境相は、NEWSポストセブンで語りかける。

 さらに、「これができれば私たちの経済社会は生活の質を落とさずに、なおかつ環境には負荷が低くなる。産業としてもより持続可能になります」と述べ、「もはや、環境に取り組むことは経済や雇用の重荷ではなく、競争力の源泉です」と続ける。

 

 杉村氏は、「それにしても、なぜ環境問題に取り組むと批判する人が出てくるのでしょうか」と訊ねる。 

「これをやって意味があるんですか」ということだと思います。

地球規模で解決しないといけない課題にもかかわらず、アクションが圧倒的に小粒に見える。

だから、「それって自己満足なの?」と思われるし、「やっている感」のツッコミが入りやすい。 (出所:NEWSポストセブン)

 

 「レジ袋有料化をきっかけに、そんな認識が広がっていくように取り組みを進めていきたいと思います。杉村さんも読者の皆さんも、一人一人ができるところから行動を始めてみませんか?」という言葉で、小泉環境相は、NEWSポストセブンでの対談を終えた。

 

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 プラスチックスが登場し、生活は圧倒的に改善された。しかし、そのプラスチックスが重荷になり始めている。

 プラスチックス産業のバリューチェーン全体を作り替えることで、それが競争力の源泉となり、持続化可能な産業へと変化していく。しかも、地球環境に負荷をかけることがない。

 できることなら、そうした世界の方が、今ある世界よりいいのかもしれない。

 誰もが参加して、プラ消費を少し抑えることで、その実現が早まっていくことになるのだろう。

 

 

「関連文書」

www.businessinsider.jp

 

 

「参考記事」

dsupplying.hatenablog.com

 

www.jetro.go.jp

 

 

TikTokを排除する米国 鎮静化はあるか 米中対立の行方 

 

 米政府が、動画共有アプリTikTokを提供する中国企業バイトダンス(ByteDance)とSNSアプリ微信(WeChat)を提供するテンセントとの取引を禁止する大統領令に署名したという。いずれの措置も署名日から45日後に有効となる。

  

 wiredによれば、「米中が新たな冷戦に陥る可能性があることから、中国系米国人やほかのアジア系市民に対する人種差別をあおらないように米国政府は慎重になるべきだ」と、中国の軍事戦略の専門家のエルサ・カニアは警鐘を鳴らしているという。

 

わたしたちが何に反対しているのか明確にする努力をすべきです。

わたしたちが反対しているのは、中国の権威主義政府であり、人権弾圧であり、有害なかたちで利用されるテクノロジーなのです (出所:wired)

 

wired.jp

 

 また、TikTokやWeChatに加え、中国企業の運営するアプリ排除の方針も表明したという。

 時事通信によれば、こうした措置に、共産党機関紙人民日報系の環球時報の胡錫進編集長は「中国が取ることのできる対抗措置は限られている。これが現実だ」と指摘し、打つ手がないことを認めているという。

 

www.jiji.com

 

 

 

 

パンデミックは、世界の勢力が大きく変化し、競争本能が協調的な考えを圧倒し、既に不安定な状態になっていた世界に襲いかかったのです」と 世界経済フォーラムは指摘する。

 

米国と中国の間では、数年にわたって科学技術における協力分野が確認されていましたが、現在では「テック・レース(技術競争)」が急速に展開されています。

この競争は大きな賭けです。

2008年の金融危機時には16億人だったインターネット利用者の数は、今日では41億人に増加。AI(人工知能)を支配した国々では、この技術のおかげで向こう15年の経済成長が30%も増加する可能性があります。

最先端技術で協力し合うよりも、これを支配することこそ、物質的、地政学的な利益の道に通じるという考え方があるのも、このためです。

(出所:世界経済フォーラム公式サイト「グローバルな連携が、これまで以上に重要である理由」)

 

jp.weforum.org

 

 2008年、リーマン・ブラザーズ破綻からわずか数週間後、世界各国の中央銀行は足並みを揃えて利下げを実施した。その後間もなくG20の会合がワシントンで開催された。 

 世界経済フォーラムによれば、この時、「世界経済の成長の回復と、世界金融システムに必要な改革の達成のために、協調を強化して協力し合うことを決定した」旨の共同宣言を発表したという。

「刺激策が自国の市民とビジネスにもたらす恩恵を最大化しようとするとき、世界のリーダーたちがとるべき賢明な行動は、相互に協力し合うことです」と 世界経済フォーラムはいう。

 

 

 

 欧米諸国が気にかけるウイグルや香港の問題を中国は抱える。こうした問題の解決を通して、両者が協力することはできないのだろうか。

 

 

  新疆ウイグル自治区では、ウイグル人約100万人が、テロ取り締まりを理由に拘束されているという。

 

国連人種差別撤廃委員会は8月末、最大100万人のウイグル人住民が刑事手続きのないまま、「再教育」を目的とした強制収容所に入れられているという指摘を報告した。

中国政府は事実と異なると反発しているが、「宗教的過激派に染まった者」は「移住と再教育の支援を受ける」と珍しく認めた。 (出所:BBC

  

www.bbc.com

 

  米国は新疆ウイグル自治区での少数民族に対する人権侵害に関与しているとして、中国企業11社を輸出管理対象にする。ウイグルの問題が米中対立のひとつになっている。

 

www.bloomberg.co.jp

 

 香港では、先に成立した香港国家安全維持法違反の疑いで逮捕者が出ているという。民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)さんや、中国政府に批判的な香港紙・蘋果日報の創業者が逮捕されているという。(逮捕されたのち、8月11日夜、保釈となっている)

 

r.nikkei.com

  

 こうした香港の動きに、ポンペオ米国務長官が「中国共産党が香港を党支配下の都市として扱う限り、米国も同様に扱うことになる」と述べたと時事通信が伝える。

 

www.jiji.com

 

 ことあるごとに、米中の非難、制裁合戦となっている。

 歴史は繰り返してしまうのだろうか。

 

 かつて米ソが激しく対立したように、米中は対立を激化させたままなのだろうか。

 東西冷戦では、相手を犠牲にして「勝利」することを求め、対立ばかりであったという。今こそ、協調し合うべきではなかろうか。まずは協力して対処できる問題の解決から始めて欲しい。世界には解決しなければならない問題が山ほどある。

 

 

jp.reuters.com

 

 

「参考記事」

 

www.asahi.com

 

jp.reuters.com

 

 

www.bbc.com

 

www.jetro.go.jp

 

www.jetro.go.jp

 

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