香港のことが気になる。香港国家安全維持法が制定され、同法違反容疑で逮捕者が出るまでの事態になってきた。
20年近く、仕事を通して香港と関わりがあった。ニュースだけを見ると、再び香港を訪問しようとの気にあまりなれない。知り合いも多くいるが、声を掛けにくく連絡できずにいる。
米中対立が激化する。報復合戦、何か事を起こしては互いに報復措置を繰り返す。
米政府が、香港で製造され米国へ輸出される製品について、「中国製」と表示するよう義務づけると発表した。香港で国家安全維持法が施行されたのに伴う香港への優遇措置の廃止の一環だと日本経済新聞が伝える。関税は中国本土と同率になり、米政府が中国に課す制裁関税が香港製の物品にも適用されることになるという。
香港は変わっていってしまうのだろうか。
中国のレアアースの輸出量が、4月以降、コロナ感染拡大の影響で減少しているという。
米国はレアアースの8割を中国に依存している。今後、中国が輸出制限に動くことも考えられると共同通信は指摘する。
軍事を含むハイテクで中国産に依存する米国への輸出が滞れば、米中対立の新たな火種となりそうだ。
こうした報復合戦は、サプライチェーンに影響があるのだろうか。
「もはや中国が世界の工場である時代は終わった」と、アップル製品を生産するFoxconn(鴻海精密工業)の劉揚偉会長がコメントしたという。
貿易摩擦が激化、関税問題が現実化となれば、産業界は動くしかない。
Foxconnは、米国向け商品の生産を中国から東南アジアやその他の地域にシフトしているとブルームバーグが伝える。
デバイスメーカーも生産拠点を中国から離れ多様化するようになり、中国に生産を頼っていたiPhoneは中国国外でも生産できるようになったという。
これは、中国中心の電子機器サプライチェーンが長期的には細分化されていくことを示唆しているとブルームバーグは指摘する。
「China’s Days as World’s Factory Are Over, IPhone Maker Says」(Bloomberg)
日本経済新聞は、アップルは従来のアイフォンの生産委託体制を見直そうとしているという。
今まですべて台湾勢に発注し、大半を人件費の安い中国で作らせてきたが、今後は大きく二つに分ける構想が固まりつつあると指摘する。
この構想では、世界販売約2億台のうち、中国で売る約3000万台は中国メーカーを中心に作らせる。
担い手として有力視されるのがラックスシェアを中心とした「新・中台3社連合」だ。
中国市場以外で売るスマホについては生産地の中心をインドにする。
ペガトロンは7月、インド進出を決めた。鴻海やウィストンも相次ぎ、インドへの追加投資を計画。鴻海は既に高価格帯のiPhone11の生産にも乗り出したという。 (出所:日本経済新聞)
日本経済新聞は、こうしたアップルの委託生産体制見直しには多くのメリットがあると解説する。
一つは中国リスクの回避、そして、もうひとつは調達価格の低減だという。
中国系EMSを中心とした体制で中国向け商品の生産を維持すれば、一定程度中国への顔向けはできる。その一方で、一極集中のリスク回避と高騰した中国の人件費抑制を目的に中国外の生産を拡大する。
この危機上に乗じて、両者に顔を立てながら実行するアップルの強かさといってもいいのかもしれない。
そのアップルは、サーキュラー・エコノミーを推し進め、レアアースの回収を独自に進める。
香港上場子会社のFIH Mobile Ltd.が、8月7日の決算発表で、Huaweiが中国で人気を博している一方で、米国の制裁を受けて他の地域では期待外れと述べたとブルームバーグが伝える。
同社のもう1つの主要顧客であるXiaomi(小米)は、中国とインドの緊張が高まる中、インド市場で反発に見舞われているという。
アグネス・チョウ(周庭)さんが、香港国家安全維持法違反の容疑で逮捕され、その後保釈された。
10代から政治活動に身を投じてきた若手の民主派活動家の一人だという。AFPは、中国当局が、今、この世代の活動家らを沈黙させようとしているという。
11日夜に保釈された周氏は記者団に「当局に対し、このようなばかげた政治的訴追の停止を求める」と述べた。
長きにわたって中国本土の独裁的指導者らやその香港出先機関との対立を繰り返してきた経歴に、今回の逮捕が新たに加わった。 (出所:AFP BB NEWS)
政治手法が陳腐化してきていないであろうか。力による支配には限界がありそうだ。
そうした影響を回避し、強かにしなやかに生き延びようとする人たちがいるようにも見える。
欧州では、7月下旬、EU 欧州連合が、域内経済の立て直しのため、総額7500億ユーロの「復興基金」を創設することで合意したという。
ロイターによれば、これまでギリシャの債務危機やイタリアに反EU的なポピュリズム政権が誕生したことなどで、投資家は何度も、ユーロ圏解体が近づいているとの恐怖にさいなまれてきたという。
今回の復興基金の合意は、約70年にわたる欧州統合の取り組みにおける画期的で、未曽有の行動との評価がもっぱらだとロイターは指摘する。
投資家は拍手喝采を送った。
欧州の財政統合に向けて重要な一歩を踏み出したことになり、債務危機や南北対立に長年悩まされてきたユーロ圏の金融資産にとって、プラス方向への大きな転換点になったとみなされたからだ。
実際、ユーロ/ドルは基金創設合意を好感し、1年半ぶりの高値を付けた。 (出所:ロイター)
これはEUの奇跡であり、理想像でもあると、Forbesはいう。
「70年近くにわたる欧州統合の歴史で前代未聞の結束」
ポピュリストや支出を渋る頑固者を含む27加盟国のリーダーの意見をまとめるまでに90時間かかった。
そんな中、長きに渡ってリーダーとして外交手腕を磨いてきた女性が3人いる。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相、欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長、欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁だ。
この3者を合わせた力は強大だ。
この雑多な群衆を7500億ユーロ(約93兆5000億円)の復興基金案で合意させる上では、3人のリーダーシップスキルが大きな役割を果たしたことだろう。 (出所:Forbes)
欧州は長い対立の歴史に終止符を打ったのだろうか。
Forbesによると、メルケル首相は記者会見で「これは容易でなく、何日間もかかった」と認めたうえで、次のように語る。
私たちがそれぞれ別の立場にあることも示された。
しかし、私にとって大事なのは、私たちが最終的に合意に達し、皆が決定内容に納得していることだ (出所:Forbes)
主義主張は、それぞれの立場によって異なる。違いがあって当たり前のことだ。
その違いを力によって征服しようとすることは時代錯誤が甚だしいということでもあろうか。
そろそろ政治も変わらなければならないということなのかもしれない。
「関連文書」