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便利、効率の裏側 ウーバー、リフトのサービス停止騒動

 

 米カリフォルニア州で、ウーバーとリフトが、21日午前に配車サービス事業を一時停止する可能性があるとロイターが報じ驚いた。

 その後、土壇場でサービス停止が回避される。

州控訴裁が、「ドライバーを個人請負人として扱うことを禁じる」という一審の仮命令の猶予期間を延ばしたことによるようだ。

 

www.nikkei.com

 

  8月10日、米国カリフォルニア州上級裁判所が、ライドシェアのウーバー・テクノロジーズとリフトに対し、ドライバーを個人請負人として扱うことを禁じる暫定的な差し止め命令を出したという。

 JETRO日本貿易振興機構によれば、カリフォルニア州、ロサンゼルス、サンディエゴの各市は、5月に、ウーバー・テクノロジーズとリフトが、ライドシェアサービスを提供する運転手を従業員ではなく個人請負人と分類したことが、2020年1月施行の「労働法などに関する改正法(雇用形態-従業員と独立請負人)」(AB5)に違反しているとして、訴訟を起こしていたという。

 

AB5は、自社のカリフォルニア州の労働者が3つの状況を満たさない場合には、労働者を個人請負人ではなく、従業員として扱うことを求めている。

労働者が従業員扱いになることで、雇用主には雇用保険などの負担が生じることになる。  (出所:JETRO

 

www.jetro.go.jp

 

 

 

 ウーバーは、欧州でも問題を抱えている。

 英国のウーバーのドライバーたちの団体が、オランダにあるUberの子会社に対し、個人データを開示しアルゴリズムに関する説明責任を果たすよう求める訴えを起こしたとTechCrunchが伝える。

 ウーバーのドライバーとUber Eats(ウーバーイーツ)の配達者は、ウーバーが、プロファイリングおよびアルゴリズムによって、欧州でギグワーカーをどのように管理しているかを公開するよう求めるこの訴訟に加わることができるという。

 

この訴訟を起こしたプラットフォーム労働者たちはまた、EUデータ保護法で定められている、データ開示に関する他の権利も行使することを求める考えだ。 (出所:TechCrunch)

  

 EU市民は、一般データ保護規則GDPRに基づき、自分の個人情報の開示を求める権利が与えられているという。 このGDPRの第22条では、AIブラックボックスが人間の動き方を決める力を制限する方法を定め、影響を受ける個人のデータを処理する際のロジックについて情報を提供することをデータ管理者に義務づけているとTechCrunchは指摘する。

 

これは今回のウーバー訴訟にも関係している。

なぜなら、同社のプラットフォームでアルゴリズムが配車・配達リクエストの中からどのように仕事を割り振るかによって、運転手や配達業者の収入額が決まるからだ。 (出所:TechCrunch)

  

jp.techcrunch.com

 

 気になるテーマだ。司法がどのような判断をするのだろうか。

 

 

 

 Forbesは、今回の州控訴裁の措置に対するウーバーやカリフォルニア州各市の反応を伝える。

 「ドライバーを個人請負人として扱うことを禁じる」 と裁判所が下した仮命令に、ウーバーとリフトは、ビジネスモデルを短期間に変えるには膨大なコストがかかり、現実的ではないと反発していたという。

 Forbesによれば、両社は、ドライバーを従業員にすることで、価格が上がり、サービスの利便性が低下すると述べているともいう。

 

 一方、この仮命令支持する州の議員や労働団体は、ウーバーとリフトがドライバーたちに、最低賃金や病気休暇など、労働者に与えられるべき必要な福利厚生の権利を提供してこなかったと指摘しているという。 

 サンフランシスコ市長は、ウーバーやリフトのサービスの重要性を認めた上で、「AB5を支持しており、企業は法律を遵守する必要がある」と述べたという。

 

 サンディエゴ市長とサンノゼ市長は共同声明で、州とライドシェア企業らがサービスの停止を回避するための交渉を行うことを望んでいるという。

 Forbesによれば、市長らは、ウーバーやリフトがカリフォルニア州でサービスを停止すれば、住民や経済に打撃を与えると述べ、ライドシェア企業のサービスが、患者の病院への送迎に利用され、交通手段を必要とする労働者にとっても重要だと話したという。

 

ドライバーを独立した契約者として維持することを求め、「ポータブル・ベネフィット」と呼ばれる新たな仕組みで、ギグワーカーらに福利厚生を提供できることを示唆した。

ウーバーCEOのダラ・コスロシャヒも今年、ニューヨーク・タイムズに寄稿した記事で、ポータブル・ベネフィットの利点を説いていた。 (出所:Forbes)

  

forbesjapan.com

 

 カリフォルニア州では、個人請負人 「ギグワーカー」として働くことを選ぶ権利を保護する提案(Proposition 22)が、11月に住民投票にかけられる予定だという。

 

同提案の目的には、ドライバーが働く時間や場所などを柔軟に選ぶ権利を保護することや、最低所得補償など労働者としての便益を提供するよう雇用主に求めることも含まれている。

同提案を支持する団体「Yes on Proposition 22」は、同団体ウェブサイトのFAQで、「デリバリーサービスやライドシェアのプラットフォームは、新型コロナウイルス感染拡大で収入や仕事を失って苦しむカリフォルニア州民に、収入を得る機会を提供している。

AB5は、ドライバーの働き方の柔軟性や独立性を排除する恐れがある」などと説明している。 (出所:JETRO

 

 ライドシェアという新しいビジネスが生み出した現代の矛盾なのかもしれない。利便性や効率だけを考えたビジネスモデルのリスクとも言えそうだ。

 

 SDGsには、「誰一人取り残さない」との概念もある。

 

 どのような結果になるのだろうか。

 

 結果が出る前に、誰もが納得できるようにビジネスモデルを見直すことがベストなことなのであろう。

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

  

「参考文書」

jp.reuters.com

 

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