米政府が、動画共有アプリTikTokを提供する中国企業バイトダンス(ByteDance)とSNSアプリ微信(WeChat)を提供するテンセントとの取引を禁止する大統領令に署名したという。いずれの措置も署名日から45日後に有効となる。
wiredによれば、「米中が新たな冷戦に陥る可能性があることから、中国系米国人やほかのアジア系市民に対する人種差別をあおらないように米国政府は慎重になるべきだ」と、中国の軍事戦略の専門家のエルサ・カニアは警鐘を鳴らしているという。
わたしたちが何に反対しているのか明確にする努力をすべきです。
わたしたちが反対しているのは、中国の権威主義政府であり、人権弾圧であり、有害なかたちで利用されるテクノロジーなのです (出所:wired)
また、TikTokやWeChatに加え、中国企業の運営するアプリ排除の方針も表明したという。
時事通信によれば、こうした措置に、共産党機関紙人民日報系の環球時報の胡錫進編集長は「中国が取ることのできる対抗措置は限られている。これが現実だ」と指摘し、打つ手がないことを認めているという。
「パンデミックは、世界の勢力が大きく変化し、競争本能が協調的な考えを圧倒し、既に不安定な状態になっていた世界に襲いかかったのです」と 世界経済フォーラムは指摘する。
米国と中国の間では、数年にわたって科学技術における協力分野が確認されていましたが、現在では「テック・レース(技術競争)」が急速に展開されています。
この競争は大きな賭けです。
2008年の金融危機時には16億人だったインターネット利用者の数は、今日では41億人に増加。AI(人工知能)を支配した国々では、この技術のおかげで向こう15年の経済成長が30%も増加する可能性があります。
最先端技術で協力し合うよりも、これを支配することこそ、物質的、地政学的な利益の道に通じるという考え方があるのも、このためです。
(出所:世界経済フォーラム公式サイト「グローバルな連携が、これまで以上に重要である理由」)
2008年、リーマン・ブラザーズ破綻からわずか数週間後、世界各国の中央銀行は足並みを揃えて利下げを実施した。その後間もなくG20の会合がワシントンで開催された。
世界経済フォーラムによれば、この時、「世界経済の成長の回復と、世界金融システムに必要な改革の達成のために、協調を強化して協力し合うことを決定した」旨の共同宣言を発表したという。
「刺激策が自国の市民とビジネスにもたらす恩恵を最大化しようとするとき、世界のリーダーたちがとるべき賢明な行動は、相互に協力し合うことです」と 世界経済フォーラムはいう。
欧米諸国が気にかけるウイグルや香港の問題を中国は抱える。こうした問題の解決を通して、両者が協力することはできないのだろうか。
新疆ウイグル自治区では、ウイグル人約100万人が、テロ取り締まりを理由に拘束されているという。
国連人種差別撤廃委員会は8月末、最大100万人のウイグル人住民が刑事手続きのないまま、「再教育」を目的とした強制収容所に入れられているという指摘を報告した。
中国政府は事実と異なると反発しているが、「宗教的過激派に染まった者」は「移住と再教育の支援を受ける」と珍しく認めた。 (出所:BBC)
米国は新疆ウイグル自治区での少数民族に対する人権侵害に関与しているとして、中国企業11社を輸出管理対象にする。ウイグルの問題が米中対立のひとつになっている。
香港では、先に成立した香港国家安全維持法違反の疑いで逮捕者が出ているという。民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)さんや、中国政府に批判的な香港紙・蘋果日報の創業者が逮捕されているという。(逮捕されたのち、8月11日夜、保釈となっている)
こうした香港の動きに、ポンペオ米国務長官が「中国共産党が香港を党支配下の都市として扱う限り、米国も同様に扱うことになる」と述べたと時事通信が伝える。
ことあるごとに、米中の非難、制裁合戦となっている。
歴史は繰り返してしまうのだろうか。
かつて米ソが激しく対立したように、米中は対立を激化させたままなのだろうか。
東西冷戦では、相手を犠牲にして「勝利」することを求め、対立ばかりであったという。今こそ、協調し合うべきではなかろうか。まずは協力して対処できる問題の解決から始めて欲しい。世界には解決しなければならない問題が山ほどある。
「参考記事」