Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

脱炭素を目指す「スチールゼロ」は鉄鋼業界を動かすのか

 

 環境省が、2019年度の温室効果ガス排出量の速報値を発表した。それによると、2019年度の温室効果ガスの総排出量は12億1,300万トン(二酸化炭素(CO2)換算)で、前年度比2.7%減少し、2013年度比で14.0%減、2005年度比12.2%減だったという。6年連続で前年度を下回り、過去最少を更新したという。

 

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(資料出所:環境省「2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(速報値)」

 

 NHKによると、鉄鋼や機械などの製造業で生産量が減少し、エネルギーの消費量が減ったことや太陽光や地熱といった再生可能エネルギーの利用が拡大したことなどが理由と環境省は説明しているという。

 2050年のカーボンニュートラル達成という目標は、現在の取り組みを続けるだけでは実現するのは難しいと環境省は見ていているという。NHKによれば、今後30年以内に目標達成するには、ライフスタイルの転換や革新的な技術開発が必要だと小泉環境相が述べたという。

 

 

 

 スチールゼロ立ち上がる

 英国のNGO クライメートグループなどが、二酸化炭素(CO2)の排出がゼロの鋼材利用を促進する団体「スチールゼロ」を立ち上げたと日本経済新聞が伝える。2050年までにCO2ゼロの鋼材を100%使うことを目指すという。

 デンマークの洋上風力発電世界最大手のオーステッドの他、需要家8社が参加し、今後は、建設・電力のほか、自動車業界など鋼材利用の多い企業の参加を募るという。

クライメートグループは事業活動で使う電力の全量を再生可能エネルギーで賄うことを目指す「RE100」で知られる。

鉄鋼は世界のCO2排出の7%を占めており、温暖化対策には鉄鋼の脱炭素化が必要と判断した。 (出所:日本経済新聞

 

 「スチールゼロ」は、CO2ゼロの鋼材の市場をつくることで、鉄鋼会社に技術の確立やコスト削減の加速を促す狙いがあるという。

 

www.nikkei.com

 

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日本製鉄は

 ブルームバーグによると、日本製鉄は、国内で自動車用鋼板などの高級鋼を生産する電炉を新設する可能性があることを明らかにしたという。 すでに、兵庫県姫路市の製鉄所に電炉を建設中で、22年の稼動予定で、EV電気自動車用モーターなどに使われる電磁鋼板や自動車鋼板を生産する予定だという。

電炉は鉄鉱石と石炭を原料に鉄鋼を生産する高炉と違い、鉄スクラップを原料として再利用された鉄を生産する。高炉に比べ生産規模が非常に小さく、建設コストも安い。 (出所:ブルームバーグ

 

www.bloomberg.co.jp

 

 鉄はリサイクルのチャンピオンというらしい。鉄スクラップを原料とする電炉での生産が拡大すれば、サーキュラー・エコノミー循環型経済へ近づくし、使用される電力が再生可能エネルギーを利用するようになれば、カーボンニュートラルにも近づく。

 しかし、現実はそう甘くはないのだろう。電炉だけで、鉄の需要をカバーできないのかもしれない。CO2を大量に排出する高炉を使用した鉄鋼生産も続けていかなければならいのだろう。

 

 

 

 「スチールゼロ」はこんな背景も鑑みて立ち上がったのだろうか。石炭、コークスと鉄鉱石を主原料に使う鉄鋼は未だCO2をゼロにする技術は確立されていない。水素還元技術の利用の早期実現が求められるが、鉄鋼メーカからは2050年というターゲットさえ見えてこない。大規模な投資が必要なことも足枷になっているのだろうか。産業界全体での投資負担を求めたいとの発言もあった。

 何かこのままでは、国際的に批判された「石炭」の二の舞にならないだろうか。

 

dsupplying.hatenadiary.com

 

 ブルームバーグによれば、日鉄の宮本副社長が、「国内では電気料金が高いため電炉の生産コストが高くなるなど課題がある」と指摘したという。それは産業界みなが感じていることではなかろうか。自ら率先して、再生可能エネルギー拡大などのアクションを起こす必要があるのではなかろうか。

 自社の業績ベースで話をする時代ではなくなっているように感じる。みなが鉄鋼はどう脱炭素に挑戦するのかを知りたがっているのではなかろうか。

  

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

「参考文書」

www3.nhk.or.jp

 

 

 

 

モノが作れなくなるニッポン 拡大し始める海外製品

 

 中国製小型EVトラックが2020年内に国土交通省から認可を受けて日本の公道を初めて走行するという。そのEVトラックは、中国HWエレクトロ社の「エレモ」。

 2019年1月開催の東京オートサロンで展示されたのがきっかけで販売につながったという。

 

スピード感

 ”車のニュース”によれば、キッチンカーや地方自治体の公用車としてのニーズがあり、引き合いもあったという。当時は日本仕様の車種もなく、昨年1月の展示から2年も経たずして、国交省の認可を得るというのだから、そのスピード感にはやはり驚く。加えて、驚きのもうひとつはコスト。競合他社が1台800万円以上するのに対して、エレモは200万円台という。

 

 

 

 この中国製小型EVトラックは、コスト削減のためディーラー店舗を設けないで販売されるという。サポートも通常のクルマと同様な体制を整える予定で、自動車整備振興会との連携でサポート拠点を全国で2万箇所以上用意すると”車のニュース”は伝える。

2021年4月には予約を開始し、7月頃からエレモの納車をおこなっていき、2021年だけで350台から500台を販売したいといいます。 (出所:車のニュース)

 

 2022年後半からは国内の様々なのニーズに対応するためにHWエレクトロ独自の小型EV商用車を展開していく計画があるという。

 

kuruma-news.jp

 

フグリッドシステムに採用されるテスラの蓄電池

 集会施設規模での日本初の完全オフグリッドシステムが福島県に完成したという。そのシステムは、屋根上に40kWの太陽光発電システムがあり、総容量684kWhの蓄電池が導入して、電力会社から電力供給を受けないシステムだとスマートジャパンが伝える。

 今回導入された蓄電池は、あのEVメーカの米テスラ製。

 

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(写真:協和エクシオ

この施設では、復興支援や地域林業活性化への貢献、省資源・低炭素実現させるため、建材に地元の福島県郡山産材を用い、建物は自然換気と昼光が生かせるデザインにするなど、さまざまな環境配慮の設計を取り入れた。 (出所:スマートジャパン)

 

www.itmedia.co.jp

 

 家庭用蓄電池では、テスラ製が国内製に比べて安価と聞く。今回の蓄電池の価格はどの程度であったのであろうか。

 

 

 

忍び寄る海外勢

 洋上風力発電世界最大手のデンマークのオーステッド社が、政府が公募する着床式の洋上風力発電事業に応札すると産経新聞が伝える。それなりに目算があっての応札だろうか。東京電力ホールディングスと中部電力が出資するJERAや、再エネ開発大手のレノバなども参入を目指す構えで競争激化は必至だと産経新聞はいう。

 

www.sankei.com

 

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 脱炭素化政策が進み始めた途端に、海外勢が雪崩れ込んで来ているような感じがする。国内企業が出遅れるのは、潜在的なニーズがあったのに、黙殺し、技術開発をしてこなったということなのだろうか。それとも、今までの岩盤規制を突き破れず、技術開発を諦めてしまったということだったのだろうか。

 モノづくりはやはり産業構造が厚い。こうした事業が盛んになり、国内産業を再び育成できれば、新たに雇用を創出していくこともできるのだろう。

 産業界はそろそろデジタル化一辺倒から抜け出るべきではないであろうか。あきらかに変化が始まっている。デジタル化、DXデジタルトランスフォーメーションだけでは陳腐化するのではなかろうか。

 

business.nikkei.com

 

 はやぶさ2が帰還した。高性能な一品ものは作れても、工業製品を作ることができなくなってしまったのだろうか。見直す機会なのかもしれない。 

 

 

トヨタ vs テスラ クルマの未来はどこへ 

 

  今や世界一とまで言われるようになったテスラ、そのライバルと目された二コラが躓いている。

 米GMゼネラル・モーターズ)が、二コラとの資本・業務提携を見直すと発表したという。日本経済新聞によれば、20億ドル(約2080億円)規模のニコラ株の引き受けを撤回し、提携範囲を大型商用トラック向けの燃料電池の供給などに絞るという。これを受け、ニコラの株価は一時25%安まで売られたという。

 ニコラが開発中のピックアップトラックGMが生産受託すると言われ、既存の自動車大手と新興EVメーカーの連携かと注目が集まったが、蓋を開けてみれば、二コラはピックアップトラックの開発計画を取りやめ、大型商用トラックの開発に専念するという。

 

www.nikkei.com

 

 

 

テスラが既存自動車メーカの買収を考え始める?

 躓く新興EVメーカがある一方で、テスラは相変わらず、驚きのニュースが続く。二コラが断念した既存自動車メーカーとの連携ではなく、それを買収しようと検討しているという。

 TechCrunchによれば、イーロン・マスクが、「敵対的な企業買収は絶対に行わない。友好的で『Teslaと合併するのも悪くないね』という感じの話なら、乗ってもいい」と語ったという。

既存勢力はかつて、マスク氏に電気自動車をメインストリームにする能力はない、と彼を無視していたという。そんなレガシーな自動車メーカーの買収は選択肢にあるか問われたマスク氏は、それは可能だが条件があると答えた。 (出所:TechCrunch)

 

jp.techcrunch.com

 

 色いろ想像してしまう。どこを買収するのか、買収後もCEOを務めるのか? 興味は尽きないが、まだ想像をめぐらすには早い過ぎるのかもしれない。

 

 

 

トヨタとウーブン・プラネット

 テスラのニュースに比例するように、トヨタのニュースも増える。デジタル化、DXデジタルトランスフォーメーションが問われる時代、それにあやかる論調も増える。

トヨタを抜いたテスラ 100年に一度の変革期に豊田章男が掲げる理想」というForbesの記事もそのひとつであろうか。

 ソフトウェアの重要性が、これまでにないスピードで高まる中で、章男は一大決心をした。

トヨタを本体の“ハードのトヨタ”と“ソフトのトヨタ”の二つに分割し、従来のモノづくりと、ソフトウェアの先行開発部門を分けたのだ。 (出所:Forbes)

 

  TRI‐AD トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメントを持ち株会社の「ウーブン・プラネット・ホールディングス」と事業会社のの3社体制に移行したのが、それの表れだという。

 

forbesjapan.com

 

 Forbesは、テスラが時価総額トップ、世界一の自動車メーカーに躍り出たかといえば、ソフトウェア開発力に対する期待値だという。そして、トヨタもまたソフトウェアの開発に傾注しているように指摘する。

 

 

  

ハードなのか、それともソフトなのか

 Forbesが指摘するように、かつての工業社会は、モノの価値が尊ばれたのかもしれない。しかし、時代変遷とともに、ソフトウエアが台頭、ソフトが人とモノのインターフェースの役割を果たすようになった。インターネットの普及がそれをさらに後押し、今日へと続く。

 多くの企業がソフトに傾注するようになり、ハードが軽んじられ、気づけば、ハードを主力にする国内メーカは少なくなった。

 一方で、アマゾンは、アレクサを活かすために、エコーを作った。マイクロソフトタブレットやPCを作るようになり、グーグルもアンドロイド端末を販売する。自らのサービスを活かすために、ハードウェア、モノづくりの世界に入るのがごく自然の流れに思える。

 ソフトの役割が変化しているのかもしれない。かつてはインターフェースとして機能したが、今では、ハードウェアがその役割を担い、ソフトと人をつなぐインターフェースになり、ハードの性能で、価値が変化するようになってきてはいないだろうか。

 ソニーはプレステイションを作り、ゲーム市場をリードする。任天堂のゲーム機も同じことが言えるかもしれない。 

 ソフト、ハードの両輪がそろった会社の時代になってきたのかもしれない。

 

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Forbesは、今日の消費社会は、モノそのものではなく、モノの付加価値もっといえば、新しいサービスに人々は価値を求めるという。

つまり、モノに加えてコトを消費することで得られる感動が、人びとを「幸せ」にする。 (出所:Forbes)

 

少しばかり違和感を感じる。Forbesの指摘は今さら、もう前の話ではないかと感じる。

 

バッテリー作りに精を出すテスラ

 テスラが、ドイツの首都ベルリン郊外に建設中の工場に「世界最大」のバッテリーセル工場を併設する計画だとAFPが報じる。

マスク氏は、ギガファクトリーと同じ敷地内でのバッテリーセル生産を年間生産能力約100ギガワット時から開始し、将来的には年間250ギガワット時まで引き上げると説明。その時点で「世界最大のバッテリーセル工場となる自信がある」と述べた。 (出所:AFP BB NEWS)

 

www.afpbb.com

 

 

 

 EV用のソフトウェア開発力だけが、テスラの株価が押し上げたのだろうか。

 テスラは世界各地にメガソーラーを建設し、家庭用ソーラーパネルを販売し、蓄電池も販売するエネルギーソリューションカンパニーの側面も持ち合わせる。

 EVは、走る大きな蓄電池。再生可能エネルギーをため込むにはもってこいのモノなのかもしれない。EVを含めたテスラのソリューションを利用すれば、今世界が求めるゼロエミッションの社会に一歩近づく。

 地球の危機を考え、真剣に火星への移住計画を推進するイーロン・マスクのことだ、テスラを単なる自動車メーカにする気はないのだろう。

 創業時にテスラモーターズと名のった社名をテスラに変えているのだから。

 

トヨタという会社

 トヨタの究極の目標は、「幸せの量産」とForbesは指摘する。

「幸せ」のイメージは、人によってさまざまだ。多様で奥深い。逆に、じつに平凡な言葉ともいえる。

しかし、世界的企業のトップが、あえて人びとの「幸せ」を目標に掲げるところに意味がある。とりわけコロナ禍においては。 (出所:Forbes)

 

 「幸せ」は、喜び、感動、価値に因数分解できるとForbesはいう。「幸せの量産」は、これまでにない「価値の量産」であるともいう。

 台数だけを追い求めた過去と決別し、「幸せを量産」できる会社に生まれ変わるということが、ウーブンプラネットだとForbesは言う。そうなのかもしれないが、それだけのなのだろうか。未来が一足飛びにやって来ることはない。

 

 

 

 昨年、トヨタは、電動車の年間の世界販売台数について、2030年に550万台以上としていた目標を2025年に5年間程度前倒しすると発表した。その内訳は、EVハイブリッド車、PHVプラグインハイブリッド車で450万台以上、EV電気自動車、FCV燃料電池車で100万台以上となっていた。

 5年後、電動車への移行は進むのかもしれない。それでも、まだ550万台という自動車がトヨタによって作り出されることになる。こうした発表もまた、ものづくり、雇用、技術、人財を守り抜くというトヨタの決意の表れなのだろう。

 そして、それもまた誰かの幸せにつながっていく。

 

創始者の佐吉は織機を、創業者の喜一郎は自動車をつくったわけですが、本当につくりたかったものは、商品を使うお客さまの幸せであり、その仕事に関わるすべての人の幸せだったと思います」 (出所:Forbes)

 

 トヨタが今年2月に販売を始めた「ヤリス」というクルマが、11月の登録車販売台数ランキングで首位になったという。その中のヤリスクロスが特に人気だという。

 そして、このヤリスシリーズに9月、GRヤリスが加わった。この時代にあって、すべてがガソリン仕様で、高性能なスポーツタイプの車が必要なのかと思うが、モーターファンには納得できる車に仕上がっているようだ。

  この先もしばらく、こうした車も作られ続け、トヨタは人々の幸せを量産していくのだろう。

 ただ、それだけではモビリティの未来をたぐり寄せることはできない。だから、ウーブン・プラネットという会社を作っただけのことかもしれない。

 

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(写真:トヨタ

 

モビリティの未来を切り拓く 

トヨタイムズによれば、「人の役に立ち、地球全体のためになるモビリティ社会を切り拓いていく」のがTRI-ADの役割であったというが、そのスピードをあげるため、組織再編し「Woven Planet」になったという。

豊田社長は、トヨタ自動車を、このカタチのままで未来に渡してはいけないと考えているとトヨタイムズはいう

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 自動車を作るメーカであっても、トヨタとテスラでは目指す世界が異なっているように見える。トヨタは移動体の未来を考え、その実験となる場「ウーブン・シティ」まで用意しようとする。そこでの実験を積み重ね、やがてモビリティの未来を現実化させていく。ただ、それにはまだ長い年月が必要になるのかもしれないが。

  

 テスラのイーロン・マスクが始めたトンネル掘削会社The Boring Company(TBC)が、ラスベガスに地下交通システムの駅を完成させようとしているとEngadgetが伝える。

 

 

 最新の計画では輸送にテスラのセダン車を用いることにいるという。

 

japanese.engadget.com

 

 テスラ vs トヨタ、それぞれが違ったクルマの未来を描いているようだ。そこには、もうソフトだ、ハードなどと言っていることとは別な世界があるように思う。

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

「参考文書」

toyotatimes.jp

kuruma-news.jp

 

 

コロナ渦と脱炭素社会 アフターコロナの脱炭素社会を目指すANAの構造改革 

 

 コロナはいつになったら収まるのだろうか。コロナ渦による経済の影響ばかりが強調され、対策がワクチン頼りでは、やはり厳しいということなのだろうか。

 感染予防策として「換気は重要な課題」とする東京都は、中小企業の換気対策工事に対する補助制度を拡充するという。日本経済新聞によれば、工事費用の3分の2を補助し、上限額を200万円に引き上げる。対象も事業者単位から事業所・店舗ごとに広げるという。

 

www.nikkei.com

 

 感染症が抑え込まれていない状況下にあって、利用者の感情に訴え、良心に頼る景気刺激に限界はないだろうか。まずは公衆衛生、安心・安全な環境が不可欠のような気がする。

 政策によるミスリードはないのだろうか。前政権の空前絶後の景気刺激策ではなく、多くの事業者、店舗が公衆衛生に資する環境作りに参加できるような補助制度が必要になっているような気がする。それがあってからの刺激策でないと、いつまでも、感染拡大で街中が静まり、感染が下火になると街中に人があふれ、また、感染が拡大する。それでは、生きたお金の使い方になっていないように思う。

 

 

 

 未曽有のコロナ渦という時期に、前年並みの売上を求めること自体に無理はないだろうか。ないものねだりのような気がする。

 可及的速やかに回復したいとの気持ちは理解できるが、まず現況を受け入れ、環境の改善を優先させ、そこから回復を急ぐという方向にマインドリセットできないのであろうか。そうすれば、いつまでも同じことが繰り返されることはなくなるような気がする。

  政府が2050年のカーボンニュートラルを宣言することで、社会に少し変化が起きているようにみえる。コロナもまた同様な気がする。政策を見直することで社会の雰囲気に変化が起きるのかもしれない。

 

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落ち込んだままのGDPギャップ

 GDPギャップが7~9月期はマイナス6.2%だったという。日本経済新聞によれば、金額にすると年換算で34兆円。4~6月期の57兆円から改善したものの需要の不足が大きいという。

 GDPギャップとは、「需給ギャップ」とも呼ばれ、日本経済全体の需要、個人消費や設備投資を積み上げる実際の国内総生産GDP)と潜在的な供給力の差を示すという。

 

www.nikkei.com

 

 

 

 コロナ渦で苦境のANA 構造改革続く

 ANAは、こうした状況下、公募増資で最大約3321億円を調達するという。ブルームバーグによれば、新型コロナウイルスの感染再拡大への懸念が高まる中、機材の購入費用などに備えるため追加の資金調達に踏み切るという。調達資金のうち2000億円をボーイング787型機の購入含む設備投資資金に使い、残りを長期債務の返済資金に充当するそうだ

 ANAによると、ボーイング 787の導入は、中長期的な成長原資として、需給適合対応力の向上と環境負荷の低減を実現する目的としているという。大型機のボーイング 777を中心に28 機を早期退役させ、中型機の787の導入により、国内線における需給適合対応力を高めることができるという。また、ボーイング 787は、従来型機と比較して燃料消費量、CO2排出量を約 20%削減することができるという。

 

www.bloomberg.co.jp

 

 コロナ渦の影響をまともに受け苦境に陥ったANA。早期の回復はないと見込み、それに合わせ、痛みを伴う構造改革を断行しダウンサイジングする。大企業であるがゆえにできることなのだろうか。しかし、そうした勇気ある決断がアフターコロナの成長につながるのかもしれない。

 航空業界ばかりでなく、コロナの影響を受ける他の業界も参考にしてもよさそうだ。ただ、それは中小企業にとっては厳しい選択になるのかもしれない。

 突如として降りかかったコロナという災禍で需要が蒸発した。それは誰のせいでもない。そんなときに、自らが生き残るためにと顧客を巻き添えにするようなことがあってのいいのだろうか。政策がそうしたことを誘発させているようなことがあれば、残念極まりない。

 

 

 

 一度、撤退すると再起するのが難しいのが今の日本なのかもしれない。この厳しい時期を乗り越えるために、一時的に撤退できる制度があってもいいのではないであろうか。誰もが容易に再チャレンジできるようになれば、また違った展開が生じるのかもしれない。  

 コロナ渦の経験を通してそんな寛容な社会になればいいのかもしれない。

 

 

カーボンニュートラルとEVの未来 気になるテスラ 

 

 米テスラがS&P500に追加されるという。これを受け、テスラの株価が上昇している。TechCrunchによれば、11月20日以降、テスラの時価総額は520億ドル(約5兆4300億円)以上増加し、時価総額は年初から5倍の5150億ドル(約53兆7900億円)にまで上昇しているという。 

jp.techcrunch.com

 

 

ガソリン車と原油時代の終焉なのか

 ここ最近のニュースを見ていると、テスラ、そしてEVにとっては順風満帆のように見える。

英政府は17日、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止すると発表した。カナダのケベック州もガソリン車の新車販売を禁じる。

中国なども規制に乗り出しており、電気自動車(EV)など新エネルギー車の普及が進みそうだ。 (出所:日本経済新聞

www.nikkei.com

 

 ロイターによると、IEA 国際エネルギー機関が、中国の自動車販売でEVが占める割合を2030年までに40%、インドその他の新興市場では20%になると予想しているという。このIEAの予想は「控えめな」シナリオだという。

 このシナリオをベースにすると、世界の原油需要伸び率が2030年までに70%縮小し、「原油時代」の終焉が後押しされるとの調査結果をシンクタンクのカーボン・トラッカーが発表したという。 

jp.reuters.com

 

 

EV時代の到来なのか

 2050年のカーボンニュートラルが世界の潮流になっている。日本を含め、既に約120ヶ国が宣言し、来年には米国も宣言するという。次世代エネルギーとして、水素に注目が集まり、水素を燃料とするFCVへの期待も高まる。

 一方、テスラのイーロン・マスクは、水素燃料電池を活用するFCVに冷ややかな目を向け、ブルームバーグによれば、今年6月には「燃料電池(Fuel cells)=ばかな売り物(Fool sells)」とツイートしたほどだという。

 イーロン・マスクの狙いは何であろうか。警告なのか、それともいつもの口撃なのか。それなりにFCVに脅威を感じるているのだろうか。  

www.bloomberg.co.jp

 

今月2日に公表された(中国の)新エネルギー車に関する15カ年計画で、国務院は燃料電池サプライチェーン構築と水素を動力源とするトラックとバスの開発に軸足を置くことを明らかにした。 (出所:ブルームバーグ

 中国のFCV市場について、トヨタは乗用車よりも、トラック・バスが中心になるとみる。「これは政府の支援を受けた非常に大きなトレンド」と、トヨタのプロジェクトマネジャー吉藤知里氏が述べたとブルームバーグは紹介する。

 イーロン・マスクの発言は杞憂なのだろうか。

 中国は、2035年を目処に、すべての新車販売を環境対応車にする方向で検討するという。ガソリン車をゼロにし、新エネルギー車(EV、PHV、FCV)を50%にし、HV車が50%とする方針だという。

 中国の政策が、EVを含め世界の自動車市場の趨勢を左右することになるのだろうか。

 

国内 HVが主流か

 日本経済新聞によれば、英国の調査会社のLMCオートモーティブは、世界の新車市場におけるHVの割合は20年の7%から30年には26%に上昇すると予測する。

 その表れなのだろうか、日産は、新型「ノート」を発表、今後はHVハイブリッド車専用とし、ガソリン車の設定をなくすと表明したという。

 日本経済新聞によれば、星野朝子副社長は「日産はゼロエミッション社会をリードするため、電動化に(経営資源を)集中させる。その象徴がノートだ」と述べたという。

www.nikkei.com

 

 一方で、英国は、ハイブリッド車(HV)を排出ゼロの規制をクリアしたもの以外は35年までに販売を禁止するといい、独フォルクスワーゲンVW)など欧州系の自動車大手はEV対応を急ぐ。

 

テスラに死角はないのか

 脱炭素社会を目指す世界とって水素は次世代エネルギーになり得るのかもしれない。しかし、まだコスト問題など解決すべきも多々あるようだ。FCVは、まずは物流を担う大型トラックから普及が始まるという予測が穏当なのだろうか。乗用車について言えば、その後、水素インフラが整ってからの流れなのであろうか。

 

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(写真:トヨタ

 

 今しばらくは、減少が予想されるガソリン車の市場をEVとHVで浸食していくことになりそうだ。それでも、2030年時点でまだガソリン車が半数近く残るとの予想もある。

 EVとテスラの未来は視界良好のように思われるが、意外なところに落とし穴があるのかもしれない。

 ロイターが、「テスラが米誌信頼度で下から2番目に転落」と報じる。それによると、米有力専門誌が発表した自動車ブランド信頼度調査で、テスラは総合ランキングを前回から2ランク落とし、26ブランド中25位となったという。1月に生産を開始したSUVスポーツタイプ多目的車「モデルY」の品質に消費者から厳しい評価が下されたことが影響したという。

モデルYのオーナーからは、車体パネルがうまくはめ込まれておらず、修理が必要とされたことや、塗装の不具合などに苦情が寄せられた。 

コンシューマー・リポートの自動車検査担当シニアディレクター、ジェイク・フィッシャー氏は、モデルYの問題がなければ、テスラの総合ランキングがもう2つか3つ上だったと指摘。

新車の信頼度に疑問が出てくるのはよくあることだが、モデルYの場合、塗装やパネルなどごく初期段階で対処しているはずの基本的な問題が出てきたことに驚きを隠せないし、失望を感じると述べた。 (出所:ロイター)

jp.reuters.com

 

 そのテスラが11月24日、「Model Y」のリコールを、米運輸省の全米高速道路交通安全局(NHTSA)に届け出てたという。17日は「Model X」のリコールも届けていたとIT media NEWSが報じる。

 Model Yは、ステアリングのボルトが適切に締められていない可能性があるという。また、Model Xは、ルーフの化粧パネルの接続に不備があり、パネルが外れる可能性があるそうだ。

 

www.itmedia.co.jp

 

 製造上の初歩的なミスともいえそうな内容だ。こうした些細なことと思われることが、信頼を大きく棄損させることもある。

 良くも悪くも、今しばらく、テスラから目が離せないのかもしれない。
 

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 「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

苦境のパナソニック 「くらしアップデート」できるのか

 

 パナソニック構造改革が終わらない。経営体制が変わるという。2022年4月から持株会社制へと移行し、社名をパナソニックホールディングスに変更するという。各事業を分社、完全子会社化する。ホームアプライアンスなど5つの事業からなる新たなパナソニック株式会社と、現場プロセス事業、デバイス事業、エナジー事業の4つの事業会社が、今後のパナソニックグループの中核を担うという。

 パナソニックの津賀一宏代表取締役社長は、「パナソニックの存在意義は、事業を通じて、人々の暮らし、社会の発展に貢献し続けることである。これは今後も変わらない。今回の再編は、変化の激しい時代において、存在意義を全うするために不可欠なプロセスであると考えている」と語ったという。

 

 

 

「事業領域を絞り込み、高い専門性を持ち、社会やお客様に対して、他社には真似ができない、より深いお役立ちを果たす。これを私は『専鋭化』と呼んでいる。

スピード感のある環境変化への対応、さらなる事業競争力の強化に向けて、グループの基本構造を大きく変革する。

今回の体制変更により、各事業には大胆な権限委譲を行い、自主責任経営を徹底することで、事業の『専鋭化』を加速する。 (出所:c/net Japan)

 

japan.cnet.com

 

見えないパナソニックの未来

 言っていることは理解はできるが、どう人々の暮らしに役立ち、社会の発展に貢献するのだろうか。どんな未来を描いているのだろうか。

 c/net Japanによれば、楠見次期社長は次のように語ったという。コア事業は絞ったが、まだ成長戦略を描き切れていないということなのだろうか。

ホールディングスの役割はこれから考えていかなくてはならないが、ポートフォリオマネジメントを通じて、事業ポートフォリオそのものを専鋭化していかなくてはならない。

だが、それ以前にホールディング会社が、各事業会社の競争力を現場視点に立ち返って見極めて、徹底して現場の改善力を向上させるための支援ができるようなケーパビリティを改めて身に着けることが必要である。その結果、事業会社の現場に寄り添って、ともに収益を伴う成長シナリオを作っていくことができる。

今後のコアといえる事業は、そうしたことをやり切った上で、競合他社が簡単には追いつけないような強みを、1つか2つは持ち、その強みによって、社会やお客様への貢献力、スピードが担保される事業にしたい (出所:c/net Japan)

 

 

 

 お客様の暮らしに役立つというよりは、未だ自分たちのことしか考えられていないように聞こえてしまう。これからの脱炭素社会やウィズコロナの世界で、パナソニックは何をしてくれるのだろうか。

 2018年の創業100周年にあわせて打ち出した「くらしアップデート」については、「この言葉で、十分な議論と実践ができているのかという意味では、まだこれからである。

新たな組織では、主として人に向き合う領域で、くらしアップデートのビジネスを作っていくことになるだろう。人が中心となって価値を判断していく領域において、くらしアップデートの深堀りをしていくことになる。ただ、広い意味では、現場の課題を解決することによって、モノの流通が変わり、くらしがアップデートされることもある。

くらしアップデートの認識や方向性には間違いはないと思っている。人の視点で、くらしアップデートをしていくことが、これからの成長につながる」 (出所:c/net Japan) 

 

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  元々ある自身の強みや財産を活かすことはできないのだろうか。パナソニックならもっとできることがあるように思えてならない。

 「くらしアップデート」が良い存在意義ではないであろうか。IoT家電も登場し、様々な方向に進化する。従来とは違うメーカが家電の世界に台頭し、市場シェアを伸ばす。

 また、「マネシタ」と揶揄されてもいいのではなかろうか。そう揶揄されても、当時の「ナショナル」ブランドには絶大の信頼があったし、その販売力で市場を作っていく力もあったはずだ。

 

www.itmedia.co.jp

 

 

 

ソニーも経験した長年続いた構造改革の痛み、そして、その後... 

 ソニーも社長が代わり、「存在意義」を明らかにし、また様々な新しいことに挑戦するソニーに変わったように見える。EVに挑戦し、環境再生型農業を手がけ、トリポーラスという素材まで手を伸ばす。

 

www.sony.co.jp

 

 今のパナソニックを見ると、少し前のソニーを思い出す。

エレキ全体で分社化せず、テレビやオーディオ、半導体、カメラと、個別の事業ごとに分社する方針にしたのかね。

これはソニーの経営トップが責任を放棄できる体制だよね。事業部門ごとの子会社トップに意思決定を委ねて、失敗したら責任を取らせようという体制にしか見えないな。

そのうえ、隙あらば事業ごとに売却しやすいようにしているようにも見えるよね。そういう意図が透ける経営方針を出したもんだから、社員はがっかりしたし、ソニーのOBも残念に思った。 (出所:日経ビジネス

  

business.nikkei.com

 

 持ち株会社制に移行すると、事業の売買がしやすくなるとSankeiBizは指摘する。それによると、楠見雄規次期社長は、強みを持てない事業は「冷徹かつ迅速に判断して、ポートフォリオから外す」と明言したという。

 いつまでも切り捨てを続けていては新たな成長の芽は育たないのではなかろうか。

 政府が脱炭素社会を宣言し、これからのウィズコロナ社会を考えれば、「くらしアップデート」は欠かせないはずだ。

 

 

「関連文書

dsupplying.hatenadiary.com

 

 

改善したGDPの裏側 新たな成長戦略「カーボンニュートラル」で将来リスクを回避できるか

 

 日本製鉄の橋本社長が17日開催された総合資源エネルギー調査会で、政府の方針「2050年のカーボンニュートラル」に理解を示した一方で、ゼロカーボンスチールの実現には莫大な費用がかかり、生産コストが上昇する可能性があると指摘し、「(このコスト増を)経済社会全体で負担することも検討してほしい」と述べたと鉄鋼新聞が伝える。随分と図々しい物言いではないかと感じてしまう。

 

dsupplying.hatenadiary.com

 

 

 

カーボンニュートラル 動き出す業界 求められる規制改革

「気候変動イニシアティブ(JCI)」の参加企業のトップが18日、河野太郎規制改革相が訪問、面談したという。

 日本経済新聞によれば、ソニーの吉田憲一郎社長やリコーの山下良則社長らが河野氏を訪ね、耕作放棄地の有効活用や国有林での開発制限の見直し、環境影響評価(アセスメント)の手続きの迅速化などを求め、要望書を提出したという。

 また、JCIの末吉竹二郎代表は「再生エネを日本のエネルギーの主役にするためにいろんな規制を外してほしい。規制改革をうんと前に進めてほしい」と要望したそうだ。

要望書では、再生可能エネルギーについて脱炭素社会の実現に向け国が高い長期的目標を定めたうえで企業や投資家が安心して開発に資金を投入できる環境をつくることや利用を進めるための規制改革を行うことなどを求めています。 (出所:NHK

 

 NHKによれば、これに対し河野大臣は、「再生可能エネルギーの主力電源化は待ったなしだ。日本はこの分野で相当遅れているという認識のもと、できることはしっかりやっていかなければいけない」と述べたという。

 

www.nikkei.com

 

 業界によって、その対応に差があるということなのだろう。今回、河野大臣を訪問したJCIは国にしっかりした対応を求め、一方で、膨大なCO2を排出する鉄鋼は、国の政策に理解は示しつつも、さらなら支援を求める。 

 

 

 

 出遅れ感が否めないカーボンニュートラルの具体策

 すでに欧州をはじめ諸外国が「カーボンニュートラル」に向け歩みを進める中、日本はどうするのかとニッセイ基礎研究所の矢嶋氏はいう。

環境投資の出遅れ感が気がかりだ

イノベーションは、民間が起こすものであるが、新しい社会構造への転換を目指す政府の強い意思が見えないと、民間はなかなか動くことができない・・・・

そのためには、相当な投資と研究開発を実施し、民間行動を抜本から変える必要がある。制度設計の詳細、支援策、規制緩和などの具体策が、どのように示されるのか。政府の強いコミットが求められる。 (出所:ニッセイ基礎研究所

 

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「成長戦略としての「カーボン・ニュートラル」-各国で進むグリーン戦略、日本は巻き返せるか」(ニッセイ基礎研究所)

 

 期待とリスク 7 - 9月期のGDP速報値の裏側

 7 - 9月期のGDP速報値が11月16日に発表された。前期比年率で21.4%増と、大幅な伸びとなったが、GDPギャップは大きなマイナスが残るという。

 大方の見方で、問題とされるのが設備投資の弱さだ。7 - 9月期の設備投資は前期比▲3.4%と2四半期連続で減少したという。日本の競争力や将来の供給力にも関わることなので、その憂慮が大きいようだ。

「そのような状況にあって足元で期待が高まるのが、コロナ危機で停滞した社会を、環境投資で立て直そうという「グリーン・リカバリ」。デジタルと合わせて、2つの成長戦略が実を結ぶかが、日本の復活、将来にとって極めて重要になる」と、ニッセイ基礎研究所は指摘する。

 いずれにせよ、行動し実行するのは企業だ。企業の本気度が問われているのだろう。

 

 

「参考文書」

www3.nhk.or.jp

 

news.yahoo.co.jp