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【リサイクルのチャンピオン】鉄の王者日本製鉄 2重のジレンマ

 

 石炭を大量に使う産業のひとつに鉄鋼業がある。その雄の日本製鉄が苦境に喘いでようだ。

 鉄は国の主要な産業だった。インフラ建設を支え、ありとあらゆる産業を支えてきた。そうした背景もあってのことだろうか、日本製鉄の営業と話をすると、『鉄は国家なり』と発言していた。

 もう20年前、2000年の頃だっただろうか。

 プラスチックスなどの価格が下落、鉄の代替化が一気に進んだ。経済成長しているときは、プラスチックスを利用した製品の生産数量が増えていれば鉄の需要はあった。なぜなら、鉄の使用量は減っても、プラスチックス代替できないパートがあるのだから。

 

 

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(資料出所:日本製鉄 Webページ

 

 鉄の成長に陰りがあるのだろうか。国内には一定の需要があっても、海外の需要取り込みは難しさもあろう。どの国も鉄を自国調達する傾向にある。そうした背景もあってか、日本製鉄は高炉整理を進めているようだ。

 先の中期計画には、厳しい環境下で次なる成長エンジンを模索する日鉄の苦悩がみえる。

 

 

 

石炭批判という重石

 鉄鋼にとって、石炭は切っても切れない存在だ。ステークホルダーから、その石炭や大量のCO2排出に批判があるのであろうか、日本製鉄が発行する『日本製鉄の環境に対する取り組み』に対応に苦慮する姿を見る。

 

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(資料出所:日本製鉄Webページ「日本製鉄の環境に対する取り組み」

 

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(資料出所:日本製鉄Webページ「日本製鉄の環境に対する取り組み」

 

 鉄は多くの天然資源を使用して作られ、環境負荷が高い産業なのかもしれない。使用する天然資源は、「鉄鉱石」、「石炭」、「石油」、「水」などなど

 

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(資料出所:日本製鉄Webページ「日本製鉄の環境に対する取り組み」

 

 その一方で、資源を効率的に使用する姿勢は強いようだ。その効率性が十分か不十分かは別にして。

 

 

 

環境技術は強みではないのか

 社会は「脱プラ」に向かい、循環型経済「サーキュラー・エコノミー」に注目が集まり、国も検討を始める。日本製鉄は、廃プラ処理のためのケミカルリサイクルに取り組み、グループ内で資源の再循環を行ない、循環型社会を支える。

 

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 (資料出所:日本製鉄Webページ「日本製鉄の環境に対する取り組み」

 

 マイクロソフトは、2030年までに「カーボンネガティブ」になり、2050年までには、1975年のマイクロソフト設立以来、電力消費によって排出されたすべてのカーボンを環境から除去すると発表した。

 この先4年間で10億ドルを炭素除去技術の開発に投資し、CO2回収を進めようというのであろうか。マイクロソフトの発表内容を見ると、こうしたCO2除去技術で新たなビジネスを生み出していくのかもしれない。

  

blogs.microsoft.com

 

 日本製鉄は、それよりも早くからCO2を分解・貯留するCCS/CCU技術の開発を続けているようだ。この技術をもっと有効に活用できないのだろうか。

 

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 (資料出所:日本製鉄Webページ「日本製鉄の環境に対する取り組み」

 

 日本製鉄が公表している2つの資料から、2重のジレンマに苦悩する姿が浮かぶ。

 

 かつて、巨大なグローバル企業IBMは大胆な構造改革を実行、経営不振を抜け出し、新たな会社として生まれ変わった。それまでのIBMは大型コンピューターをコアにする企業だった。社会に必要なものであったが、その営業姿勢は批判の対象になっていた。IBMは自社の強みを再分析し、ソリューションカンパニーに生まれ変わったが、大型コンピューターを手放すことはなくコアとして据え続けた。強みである研究開発も続け、その結果、今ではどこより早く量子コンピュータを商用化させ、そのソリューション提供している。 

巨象も踊る

巨象も踊る

 

 

 

こだわりを捨てれば

 日本製鉄は、「鉄」や「石炭」にこだわり過ぎていないだろうか。「石炭」を弁護する姿勢が強まれば、社会の批判の的になるし、反発を招き、さらに「石炭」嫌悪、分断化を助長する。

 

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(画像出所:一般社団法人石炭エネルギーセンター

 

 日本製鉄の強みであるはずの、環境技術をもっと前面に出してアピールはできないものであろうか。社会が求めている技術を多数保有しているように見える。

 

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 こうした環境技術をコアにした環境ソリューションカンパニーになれないであろうか。 EUもCO2回収の技術開発を急ぐ、世界にはこの技術を欲する企業や場は多数あろう。マーケットにしていくことが出来るのではないであろうか。

 

見る方向を変えてみれば景色も変わって見える

 日本製鉄は 「サーキュラ―エコノミー(循環型社会構築)への貢献」という。今求められているの貢献でなく、サーキュラー・エコノミー循環型経済への移行であり、ビジネスに変えてくことではないか。投入資源をミニマイズ化して、それでも回る経済への移行のはずである。

 

 SDGsについてもしかり、求められることは貢献でなく、課題を解決することのはずだ。日本製鉄の『日本製鉄の環境に対する取り組み』という資料には、課題解決できる技術があると主張しているように思う。こうした問題は長い時間がかかる。だからこそ、ビジネスに変え、持続的に解決していく必要があろう。

 

 そうすることで、SDGsの目標である#13、#14、#15の実現に近づく。そして、なにより重要なことは、#17の「パートナーシップで目標を達成しよう」との姿勢ではなろうか。

 

 日本製鉄から公表されている2つの資料を読んでそんなことを感じた。今まで見ている方向を逆にすることだけで、見える景色は変わるはずである。企業文化や姿勢が変わって欲しい。

 

common/secure/news/20191127_200_01

  

「関連文書」

www3.nhk.or.jp

一部報道について(日本製鉄)

 

 

「参考文書」

www.nipponsteel.com

www.nies.go.jp