Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

トヨタ vs テスラ クルマの未来はどこへ 

 

  今や世界一とまで言われるようになったテスラ、そのライバルと目された二コラが躓いている。

 米GMゼネラル・モーターズ)が、二コラとの資本・業務提携を見直すと発表したという。日本経済新聞によれば、20億ドル(約2080億円)規模のニコラ株の引き受けを撤回し、提携範囲を大型商用トラック向けの燃料電池の供給などに絞るという。これを受け、ニコラの株価は一時25%安まで売られたという。

 ニコラが開発中のピックアップトラックGMが生産受託すると言われ、既存の自動車大手と新興EVメーカーの連携かと注目が集まったが、蓋を開けてみれば、二コラはピックアップトラックの開発計画を取りやめ、大型商用トラックの開発に専念するという。

 

www.nikkei.com

 

 

 

テスラが既存自動車メーカの買収を考え始める?

 躓く新興EVメーカがある一方で、テスラは相変わらず、驚きのニュースが続く。二コラが断念した既存自動車メーカーとの連携ではなく、それを買収しようと検討しているという。

 TechCrunchによれば、イーロン・マスクが、「敵対的な企業買収は絶対に行わない。友好的で『Teslaと合併するのも悪くないね』という感じの話なら、乗ってもいい」と語ったという。

既存勢力はかつて、マスク氏に電気自動車をメインストリームにする能力はない、と彼を無視していたという。そんなレガシーな自動車メーカーの買収は選択肢にあるか問われたマスク氏は、それは可能だが条件があると答えた。 (出所:TechCrunch)

 

jp.techcrunch.com

 

 色いろ想像してしまう。どこを買収するのか、買収後もCEOを務めるのか? 興味は尽きないが、まだ想像をめぐらすには早い過ぎるのかもしれない。

 

 

 

トヨタとウーブン・プラネット

 テスラのニュースに比例するように、トヨタのニュースも増える。デジタル化、DXデジタルトランスフォーメーションが問われる時代、それにあやかる論調も増える。

トヨタを抜いたテスラ 100年に一度の変革期に豊田章男が掲げる理想」というForbesの記事もそのひとつであろうか。

 ソフトウェアの重要性が、これまでにないスピードで高まる中で、章男は一大決心をした。

トヨタを本体の“ハードのトヨタ”と“ソフトのトヨタ”の二つに分割し、従来のモノづくりと、ソフトウェアの先行開発部門を分けたのだ。 (出所:Forbes)

 

  TRI‐AD トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメントを持ち株会社の「ウーブン・プラネット・ホールディングス」と事業会社のの3社体制に移行したのが、それの表れだという。

 

forbesjapan.com

 

 Forbesは、テスラが時価総額トップ、世界一の自動車メーカーに躍り出たかといえば、ソフトウェア開発力に対する期待値だという。そして、トヨタもまたソフトウェアの開発に傾注しているように指摘する。

 

 

  

ハードなのか、それともソフトなのか

 Forbesが指摘するように、かつての工業社会は、モノの価値が尊ばれたのかもしれない。しかし、時代変遷とともに、ソフトウエアが台頭、ソフトが人とモノのインターフェースの役割を果たすようになった。インターネットの普及がそれをさらに後押し、今日へと続く。

 多くの企業がソフトに傾注するようになり、ハードが軽んじられ、気づけば、ハードを主力にする国内メーカは少なくなった。

 一方で、アマゾンは、アレクサを活かすために、エコーを作った。マイクロソフトタブレットやPCを作るようになり、グーグルもアンドロイド端末を販売する。自らのサービスを活かすために、ハードウェア、モノづくりの世界に入るのがごく自然の流れに思える。

 ソフトの役割が変化しているのかもしれない。かつてはインターフェースとして機能したが、今では、ハードウェアがその役割を担い、ソフトと人をつなぐインターフェースになり、ハードの性能で、価値が変化するようになってきてはいないだろうか。

 ソニーはプレステイションを作り、ゲーム市場をリードする。任天堂のゲーム機も同じことが言えるかもしれない。 

 ソフト、ハードの両輪がそろった会社の時代になってきたのかもしれない。

 

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Forbesは、今日の消費社会は、モノそのものではなく、モノの付加価値もっといえば、新しいサービスに人々は価値を求めるという。

つまり、モノに加えてコトを消費することで得られる感動が、人びとを「幸せ」にする。 (出所:Forbes)

 

少しばかり違和感を感じる。Forbesの指摘は今さら、もう前の話ではないかと感じる。

 

バッテリー作りに精を出すテスラ

 テスラが、ドイツの首都ベルリン郊外に建設中の工場に「世界最大」のバッテリーセル工場を併設する計画だとAFPが報じる。

マスク氏は、ギガファクトリーと同じ敷地内でのバッテリーセル生産を年間生産能力約100ギガワット時から開始し、将来的には年間250ギガワット時まで引き上げると説明。その時点で「世界最大のバッテリーセル工場となる自信がある」と述べた。 (出所:AFP BB NEWS)

 

www.afpbb.com

 

 

 

 EV用のソフトウェア開発力だけが、テスラの株価が押し上げたのだろうか。

 テスラは世界各地にメガソーラーを建設し、家庭用ソーラーパネルを販売し、蓄電池も販売するエネルギーソリューションカンパニーの側面も持ち合わせる。

 EVは、走る大きな蓄電池。再生可能エネルギーをため込むにはもってこいのモノなのかもしれない。EVを含めたテスラのソリューションを利用すれば、今世界が求めるゼロエミッションの社会に一歩近づく。

 地球の危機を考え、真剣に火星への移住計画を推進するイーロン・マスクのことだ、テスラを単なる自動車メーカにする気はないのだろう。

 創業時にテスラモーターズと名のった社名をテスラに変えているのだから。

 

トヨタという会社

 トヨタの究極の目標は、「幸せの量産」とForbesは指摘する。

「幸せ」のイメージは、人によってさまざまだ。多様で奥深い。逆に、じつに平凡な言葉ともいえる。

しかし、世界的企業のトップが、あえて人びとの「幸せ」を目標に掲げるところに意味がある。とりわけコロナ禍においては。 (出所:Forbes)

 

 「幸せ」は、喜び、感動、価値に因数分解できるとForbesはいう。「幸せの量産」は、これまでにない「価値の量産」であるともいう。

 台数だけを追い求めた過去と決別し、「幸せを量産」できる会社に生まれ変わるということが、ウーブンプラネットだとForbesは言う。そうなのかもしれないが、それだけのなのだろうか。未来が一足飛びにやって来ることはない。

 

 

 

 昨年、トヨタは、電動車の年間の世界販売台数について、2030年に550万台以上としていた目標を2025年に5年間程度前倒しすると発表した。その内訳は、EVハイブリッド車、PHVプラグインハイブリッド車で450万台以上、EV電気自動車、FCV燃料電池車で100万台以上となっていた。

 5年後、電動車への移行は進むのかもしれない。それでも、まだ550万台という自動車がトヨタによって作り出されることになる。こうした発表もまた、ものづくり、雇用、技術、人財を守り抜くというトヨタの決意の表れなのだろう。

 そして、それもまた誰かの幸せにつながっていく。

 

創始者の佐吉は織機を、創業者の喜一郎は自動車をつくったわけですが、本当につくりたかったものは、商品を使うお客さまの幸せであり、その仕事に関わるすべての人の幸せだったと思います」 (出所:Forbes)

 

 トヨタが今年2月に販売を始めた「ヤリス」というクルマが、11月の登録車販売台数ランキングで首位になったという。その中のヤリスクロスが特に人気だという。

 そして、このヤリスシリーズに9月、GRヤリスが加わった。この時代にあって、すべてがガソリン仕様で、高性能なスポーツタイプの車が必要なのかと思うが、モーターファンには納得できる車に仕上がっているようだ。

  この先もしばらく、こうした車も作られ続け、トヨタは人々の幸せを量産していくのだろう。

 ただ、それだけではモビリティの未来をたぐり寄せることはできない。だから、ウーブン・プラネットという会社を作っただけのことかもしれない。

 

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(写真:トヨタ

 

モビリティの未来を切り拓く 

トヨタイムズによれば、「人の役に立ち、地球全体のためになるモビリティ社会を切り拓いていく」のがTRI-ADの役割であったというが、そのスピードをあげるため、組織再編し「Woven Planet」になったという。

豊田社長は、トヨタ自動車を、このカタチのままで未来に渡してはいけないと考えているとトヨタイムズはいう

 

dsupplying.hatenablog.com

 

 自動車を作るメーカであっても、トヨタとテスラでは目指す世界が異なっているように見える。トヨタは移動体の未来を考え、その実験となる場「ウーブン・シティ」まで用意しようとする。そこでの実験を積み重ね、やがてモビリティの未来を現実化させていく。ただ、それにはまだ長い年月が必要になるのかもしれないが。

  

 テスラのイーロン・マスクが始めたトンネル掘削会社The Boring Company(TBC)が、ラスベガスに地下交通システムの駅を完成させようとしているとEngadgetが伝える。

 

 

 最新の計画では輸送にテスラのセダン車を用いることにいるという。

 

japanese.engadget.com

 

 テスラ vs トヨタ、それぞれが違ったクルマの未来を描いているようだ。そこには、もうソフトだ、ハードなどと言っていることとは別な世界があるように思う。

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

「参考文書」

toyotatimes.jp

kuruma-news.jp