国境炭素税という新たな関税のルール作りが始まる。そこには各国の思惑がありそうだ。
日本やEU欧州連合などWTO世界貿易機関の有志国が22日、閣僚級会合を開き、「炭素国境調整措置(国境炭素税)」の議論に着手したとJIJI.COMが報じる。
「国境炭素税」、温室効果ガス排出削減の取り組みが不十分な国からの輸入品に事実上の関税を課すことだという。
気候変動対策として有効な策のひとつだが、思惑の違いもあり、合意形成を難しくしているようだ。
「国境炭素税(国境炭素調整措置)」という発想が、EU欧州連合と米国で地歩を固めつつあるとロイターは報じ、この動きを解説する。
一見すると気候変動問題との戦いで、1つの勝利を得たようだ。
しかし、実はこうした政策には、企業の経営コストが高い国と低い国の競争条件を等しくし、先進国が雇用や投資を維持するのを支える働きもある。 (出所:ロイター)
<国境炭素税の実体> 企業への課税や、低賃金の諸外国への企業移転を阻止する取り組みなど、気候変動と次元が異なる政治的な議論へとつながっているとロイターは指摘する。
西側諸国は、環境規制が緩く、製品を安く作れるという理由で企業が大挙して中国やインドなどへ移転することを望んでいない。
国境炭素税を導入すれば、こうした国で作られた製品はコストが上昇し、製造拠点や雇用を海外に移す動機は弱まる。 (出所:ロイター)
他の経済障壁でも米国が動けば他の国はすぐに追随したように、もし、バイデン氏が前進を決断すれば、国境炭素税が世界的に普及する公算は大きいという。
100%再生可能エネルギー由来の電力調達を宣言する国際的な企業連合「RE100」が、日本の2030年度の再エネ比率の目標を50%に拡大するよう、政府に要請したと毎日新聞が報じる。
それによれば、菅首相に宛てた書簡には、主に日本国内に拠点を置く計53社が署名したという。
「RE100 」には、世界の290社以上が加盟し、日本からも現在50社が参加しているそうだ。
こうした動きの背景にも、「国境炭素税」の影響があるのだろうか。事業に使用する電力が非「脱炭素」であれば、ネガティブに捉えられる恐れがあるのだろうか。
分析計測機器メーカの島津製作所も「RE100」に加盟し、2050年までに事業活動に使用する電力を再生可能エネルギー100%にすると宣言した。
宣言にあたり、当社国内グループの工場、研究所などの主要な拠点については、2021年度から再生可能エネルギー100%由来の電力を導入する予定です。 (出所:島津製作所)
分析機器メーカとして島津製作所も、環境に配慮した製品開発を進め、すべての新製品で、従来製品よりも環境負荷を少なくすることを義務化しているという。お客様先のCO2排出削減に貢献するためだという。
省エネ機器であれば、事業で使用する電力が減り、温室効果ガス排出の低減につながる。
日本製鉄が国内の粗鋼生産能力を絞り、年5000万トンから4000万トンにするという。
この能力削減は、日鉄をはじめとする日本の製鉄業が粗鋼の輸出によって国内製造業の海外進出を支えてきたモデルの転換点を意味すると、日経ビジネスは指摘する。
CO2排出が多い鉄鋼は「国境炭素税」を視野に入れれば、いつまでも輸出に頼ってはいられないということでもあろうか。
出遅れ感のある日本が変わるきっかけになるのだろうか。