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【危ういDX】LINE問題のデータ利用とセキュリティ

 

 LINEの出澤社長が会見し、「ユーザーへの配慮が足りずにこうした事態になったことを重く受け止めている」と話したという。

ユーザーのわかりやすさ、感覚として『気持ち悪い』という点への配慮が欠けていた。そこに気をまわすことができなかったのが、一番の問題。

今日の発表は第一歩。外部からの監査など、もろもろを通じて信頼回復していきたい。 (出所:朝日新聞

 LINEがリリースされて10年あまり。開始当時はデータ収集と利用にばかりに集中、個人情報管理に対する認識の甘さがあったということなのだろうか。

 ユーザー視点の欠落。そうしたものが文化になっていたのであれば、こうした事態になっても何も不思議なことではないような気がする。

 

 

 法規制がなければ、契約書次第でも如何様にでもできてしまう。少しばかり恐ろしい話だ。社会インフラになりつつあるのであれば、良心や倫理観が極めて高いレベルで求められるのだろう。まさしく「配慮」ということなのだろう。 

「配慮」を辞書で調べてみれば、「事情をふまえて、気遣いのこもった取り計らいをすることを意味する」とある。

「配」はくばる意、「慮」はおもんぱかることの意で、「配慮」は気づかいを行き渡らせることを意味する。

  こうした意味からすれば、相手、ユーザーあってのことということであろう。

  使い勝手やUXばかりがユーザー視点ではないだろう。ユーザーからの信頼を笠に裏で好き勝手なことをやっているように見えては、「配慮」が足りなかったと言わざるを得ないのだろう。

「アカウントやユーザー数は、ありがたいことに大きな変化はなく使って頂いている。本当に感謝している。アカウントについては、自治体や政府関係機関での停止という話は認識している。企業に関しては現状、大きな動きはないと認識している」 (出所:朝日新聞) 

  「気持ちは悪い」が、まだ重大な信用の棄損には至っていないということであろうか。

 信頼回復のため、配慮溢れる対応が求められているのだろう。

 

 

「データに関して言うなら、ディストピア的に使われる可能性もあります」というのは、ビービット代表取締役の遠藤直紀氏。その言葉を日経XTECHが紹介する。

 我々は上海にオフィスがあるのですが、そこで働いているメンバーに驚いた話があると言われました。上海の街で信号でないところを渡ったら、家に交通違反の切符が届いたというのです。そこには誰もいなかったといいます。照合されて誰か分かって住所も特定されているわけですね。

それから上海市内はクラクションを鳴らしてはいけないのですが、無視して鳴らしているとやはり切符が届くのだそうです。音声を国家がセンシングしているということですよね。さすがにちょっと怖いと言っていました。 (出所:日経XTECH) 

xtech.nikkei.com

  こんな話を聞けば、否応なし変な想像が働いてもおかしくはない。

 「企業にここまでのことができるとは思えませんが、データをどう扱うかの哲学は必要でしょう」と遠藤氏は指摘する。

 経営共創基盤(IGPI)共同経営者兼IGPIグループ会長の冨山和彦氏は、「理想論的に言うと、国と個人、大量のデータを持っている会社で、きちんとしたルールを作っていくしかないでしょう」という。

 

 

「価値観によって幾つかのグループに分かれていくでしょうが、かっちり監視されてデータが何でも使える社会がいいのか、リベラルだけどデータの利用が制限されている社会がいいのか。これはややトレードオフになるのではないですか」と指摘する。

 

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「善循環」、という言葉があるようだ。「悪循環」の対義語なのだろうか。

 それを生み出すには、「サービス」の継続的な改善が重要ですと前出の遠藤氏はいう。

アマゾンを使っていて、昔買った本のページに行くと、自分が買ったことがあると分かるようになっています。単純に考えれば、これは売り上げを下げるものなんです。人によっては過去に買ったのを忘れてまた買ってくれるかもしれませんから。

でもそうしなくて、マシンパワーを使って購買履歴のデータを照合して買っていることを通知するわけです。こんなECサイトはほかには知りません。僕が好きな機能で、データを蓄積して人のために使うのがアマゾンの哲学だというのがよく分かると思います。 (出所:日経XTECH)

 

 社会インフラになりつつあるLINEでこうした問題が起きると、DXデジタルトランスフォーメーションの危うさを感じたりする。データ利用とセキュリティを考えるときが来ているのかもしれない。