Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

産業界でCO2排出量の半分を占める鉄鋼は「脱炭素」をどう進めるのか

 

 二酸化炭素の排出量が減り、地球温暖化が少しでも緩和され、気候が穏やかになることを願ってやまない。国が掲げたカーボンニュートラル目標が少しでも早く実現して欲しい。

 日本が排出する温室効果ガスのうち約9割がCO2二酸化炭素だそうだ。CO2の排出量の約4割が電力部門から排出され、残りの約6割が産業や運輸、家庭などの非電力部門からなっているという。

 

 

 エネルギー白書によれば、カーボンニュートラル実現のためには、パルプや紙加工業のように製造プロセス上で大量の熱エネルギーを必要とする産業や、化学反応でCO2が発生する、鉄鋼や化学、セメントなどの産業には大きな障壁があると指摘する。それぞれの産業ごとの問題と課題を指摘し、技術開発の必要性を解説する。 

 鉄鋼、産業部門のCO2排出の約5割を占める最大の排出産業。白書はあからさまにそう指摘する。

 国内鉄鋼の最大手日本製鉄が気にかける中国は、CO2排出量削減に向け動き始めている。ロイターによれば、中国では2億3600万トンの鉄鋼生産能力を削減する計画を発表し、環境対策の一環で、2025年までに2億2100万トンの生産能力の設備を更新するという。

 過剰生産を抑制し、足元では電炉など高炉以外の製鉄法への能力置換を推進し、鉄鋼業界のグリーン化と技術開発を奨励する。

jp.reuters.com

 日本製鉄の橋本社長が「私が思うに、中国政府の現在の明確な製造業に対する戦略は、カーボンニュートラルで世界のヘゲモニー(主導的地位)を握ること」との見方を示し、「鉄鋼業に対する中央政府の指示は、足元からカーボンニュートラルに向けて本格検討せよということになっている」との見方をしたと、鉄鋼新聞が伝える。

 

 

 日本製鉄は危機感を募らせたのだろうか。業績のV字回復を急ぎ、生産設備を再編、コスト削減で損益分岐点を大きく下げ、2022年3月期の事業利益4500億円との見通しを発表した。国内外の需要回復を受けて粗鋼生産を増やし、鋼材販売価格を引き上げ、収益力を高め、粗鋼1億トンに向けた成長戦略や脱炭素に力を注ぐという。

「値上げが受け入れられなければ、やがて安定供給できなくなる」。

 鋼材の販売価格水準があまりに低いことに、警戒感を強めているとブルームバーグが伝える。

「日本の鋼材価格は国際的にみて非常に陥没している」、「早期に改善が必要だ」と日本製鉄の副社長が強調したという。海外の主要なライバル企業と対等な立場で競争できる環境にすべきだと強く訴えたそうだ。

www.bloomberg.co.jp

森氏は、世界の鉄鋼市場の見通しについて、粗鋼生産の半分以上を占める中国が今年、減産を計画している一方、世界全体の需要は高まるため、今年度はさらに需給が引き締まるとみている。 (出所:ブルームバーグ

f:id:dsupplying:20210411151400j:plain

 一方、中国では、高騰する鋼材価格の抑制に動き出し、鋼材先物市場がそれに反応するかのように熱延鋼板価格が続落を始めたという。

 ブルームバーグによれば、日本製鉄の橋本英二社長が「理不尽な価格」が是正されなければ安定供給に責任を持てなくなると強調し、副社長の森氏は、国内メーカーの収益確保が遅れると「脱炭素に向けた新設備や製品の改良のための十分な資金確保ができない」結果につながりかねないと話したという。

「脱炭素」を身代わりにした論理に理不尽さを感じずにはいられない。果たして、鉄鋼のCO2排出量削減は進むのだろうか。

「日本製鉄 カーボンニュートラルビジョン2050 ゼロカーボン・スチールへの挑戦」

 国内鋼板最大の需要家であるトヨタをはじめとする自動車業界は鉄鋼の論理をどう受け止めるのだろうか。