国がカーボンニュートラルの達成を目標にすると、雨後の筍のように脱炭素の動きが活発化する。しかし、そうしたことで乱開発が横行するようになり、その弊害も顕在化する。脱炭素は気候変動の緩和には役立つが、その適応に適うとは限らない。
乱開発された太陽光発電所のために、雨が降って土砂が流出するようでは、この先の気候変動による異常気象の頻発化を思えば、不安が増すばかりになる。
地方においても、様々な再生可能エネルギーの開発が進みはじめ、地方銀行も支援に乗り出しているという。
徳島大正銀行、小水力発電など脱炭素への資金需要対応: 日本経済新聞
小水力やバイオマスなど、その地に根ざした再生可能エネルギーの導入を促し、脱炭素を地方から推進するため、地域に近い金融機関が新たな流れを地元経済の発展につなげようと実践し、知見を蓄積しようとしていると日本経済新聞がいう。
徳島大正銀は、徳島県つるぎ町の小水力発電を支援する。小水力発電は高低差のある地形が適しているとされ、急峻な地形に設置され、「斜面での工事になり、技術のある建設会社が欠かせない」という。
そんなところに無理して工事を行う必要があるのだろうか。その設備が災害の起点になるおそれはないのだろうか。
長野県松本市でも、市内の乗鞍地域に小規模な水力発電や木質バイオマスといった再生可能エネルギーの設備を導入するという。
国が「脱炭素先行地域」という取り組みを進め、自治体が地球温暖化対策に取り組みを始めている。
「脱炭素先行地域」松本市が応募 小規模水力発電など導入|NHK 長野県のニュース
NHKによれば、国は2030年度までに電力消費に伴う二酸化炭素の排出を実質ゼロにしようと取り組む自治体などを「脱炭素先行地域」に選定し、事業費の補助を行うという。
脱炭素に取り組まなければ、気候変動のリスクは低減されない。しかし、2050年のカーボンニュートラルを達成してもなお、地球温暖化は進み、1.5℃程度の気温上昇が見込まれている。脱炭素によって、そのリスクは軽減されてもなお、気候変動による気象災害リスクが顕在化する恐れがある。それ故に、気候変動への緩和と同時に適応も求められる。気候変動対策における緩和と適応はどちらも欠かすことのできない車の両輪となる施策と言われる。
「日本企業において適応ビジネスの認知度を高めることが大きな課題」。
すでに緩和対策に取り組んでいる企業は多いが、適応対策となると認知度は非常に低い。(出所:日経ビジネス)
適応対策も緩和対策同様、大きなビジネスチャンスとなるはずともいう。
気候変動の時代 適応ビジネスが未来市場を切り拓く - 日経ビジネス電子版 Special
「現状の課題は、日本企業に適応ビジネスの可能性に気づいてもらうこと」と経済産業省は言う。
その適応分野には、「インフラと建築(自然災害に対するインフラの強靭化)」、「住民の健康維持と食料と水の安全」、「住民の生活とコミュニティ」などを上げる。
適応ビジネスに活用できる製品・技術を持ちながら、それに気づいていない日本企業も少なくない。
例えば、台風のエネルギーを電力に転化する台風発電は緩和策だが、災害時にエネルギーを安定供給できるという点では適応策とも捉えられる。また、ICT(情報通信技術)を活用した気象観測システム、先端技術を取り入れたスマート農業も適応策の一つだ。(出所:日経ビジネス)
脱炭素、気候変動の緩和は必要なことだが、そればかりに偏ってしまえば、日々の生活が気候変動のリスクに晒され続けることになる。
暑すぎる夏は身にこたえるし、命の危険さえある。その環境に適応していくためには、低廉な電力が求められるし、それと同時に高効率な省エネエアコンも求められる。それに加え、家の断熱構造も必要とされるのだろう。
地域で進める脱炭素には、こうした視点も不可欠ではなかろうか。
「参考文書」