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【チャイナショック2.0】過剰生産される中国太陽光パネルと日本のエネルギー計画

 温室効果ガスを世界で最も排出している中国、温室効果ガス排出を正味ゼロにする目標を2060年に設定しています。他の多くの国が2050年を目標とし、それに比し遅いとの批判がありますが、今その中国が急速に再生可能エネルギーを拡大させているそうです。

中国、再生可能エネルギー利用が急拡大 2050年には88%に | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 現在の中国の発電総量における再生可能エネルギー電力の割合は30%で、それが2035年までに55%となり、2050年には88%に達するといいます。地球温暖化のペースを考えると、決して早いということはないのかもしれませんが、単に遅いと批判できるものでないような気もします。実績ベースで、2022年に世界で設置された太陽光と風力の発電施設の約40%が中国のものだったといいます。

 

 

 世界の太陽光パネルの9割は中国製といわれています。中国には年産100GWかそれに近い規模で量産するメーカが10社近くあるそうです。これらが激しいシェアを争い、それもあって、太陽光パネルの価格は右肩下がりで下落しているといいます。こうした低価格に供給する能力があって中国の再エネ計画が成立しているのかもしれません。

 一方で、欧米はこれを過剰生産能力と指摘、中国政府による補助金によるものだと批判し、「チャイナショック2.0」と呼んでいるようです。

 欧州の業界団体代表は、「政治が手を打たなければ、数カ月で大半の企業がつぶれる」と対応を求めているといいます。

脱炭素「中国抜き」でやれるのか 太陽光パネルで欧州ジレンマ、産業界は悲鳴 - 産経ニュース

 一方で、太陽光パネルにおいては中国リスクは薄いと指摘する欧州シンクタンクの研究員もいるといいます。補助金EU企業を支えても競争力はつかず、脱炭素化を遅らせるだけだとして、「欧州は一定量の在庫を確保しながら、光吸収効率の向上など技術開発に重点を置くべき」と訴えているといいます。

 ドイツの風力発電などを手が欠ける再エネ大手シーメンスエナジーのCEOも中国とのつながりを断つことは不可能に近く、そうした動きは再エネへの移行を危うくするとの見方を示しているといいます。

「中国抜きのエネルギー転換はありえない」独再エネ大手トップの見解 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

中国からの供給なしで風力タービンを作るのは不可能に近い。中国抜きのエネルギー転換はうまくいかない。(出所:Forbes)

さらに、「対等な国際貿易のための解決策は、米国で台頭しつつある激しい保護貿易主義と自由市場の間で妥協点を見出すことだろう」とCEOは指摘しています。

 

 

 日本では、エネルギー基本計画の議論が始まったようです。足元では電気料金が再び高騰をはじめ、また再エネ賦課金もアップされることになるといいます。

太陽光発電が国内最安の電源に、供給価格が4円/kWh台まで低下 | 日経クロステック(xTECH)

「チャイナショック2.0」といって、中国の過剰生産能力が問題視し、それを政治問題化することはかえってリスクとなり、エネルギー計画を歪めることにならないか心配になります。中国製太陽光パネルなどをどう扱い、次のペロブスカイト太陽電池を活用策を明確にし、どう移行していくのかがはっきりさせる必要がありそうです。太陽光パネルと同じ失敗を繰り返すことは許されないはずです。拡大するばかりの中国との差を埋めていかなければならないのでしょうから。そのためにずる賢く中国製を時に上手に利用することを必要ではないでしょうか。

 

 

 エネルギー計画の基本的な考えは『S+3E』といいます。「S」は安全性、「E」は安定供給、経済性、環境の3つだといいます。これらを政治問題化させては国民生活がますます脅かされることになってしまいます。