パナソニックが米ソフトウエア大手Blue Yonder(ブルーヨンダー)を買収する方針を固めたという。
Business Insiderによれば、ブルーヨンダーは、エンドツーエンドのサプライチェーン・ソフトウェアの専門企業で、機械学習を用いたサプライチェーンマネジメントで優位に立つ企業だという。
パナソニックには昨年5月、この会社の発行済み株式の20%を8億ドル(約860億円)で取得すると発表した。それから1年もおかずしての買収となりそうだ。
この時、ブルーヨンダーのギリッシュ・リッシCEOが語った言葉をBusiness Insiderが紹介する。
「パナソニックは、企業向けソフトウェアの能力を持つ我々のようなパートナーを必要とする一方で、我々が持っていないエッジデバイスやIoTの能力がある。両社は補完的な関係だ」 (出所:Business Insider)
ブルーヨンダーにとっては、メリットのある連携なのかもしれない。
この発表してから5か月あまりたった昨年11月、パナソニックは、Blue Yonderのサプライチェーン計画系ソフトウェア導入すると発表した。
それによれば、ビジネスパーソン向けノートPC「Let's note(レッツノート)」などを製造販売するパナソニックのモバイルソリューションズ事業部が、Blue Yonderのサプライチェーン計画系のソフトウェア「S&OP (Sales & Operations Planning:販売・業務計画)」を導入するという。
属人的なオペレーションからサプライチェーン計画の高度化を実現すると発表した。
意外な気もする。パナソニックほどの大企業でもあっても、内部でサプライチェーンマネジメントを独自に高度させることができていなかったのだろうか。
今後、このソフトを他の事業にも展開されることになるのだろうか。
一方、 トヨタ自動車は、トヨタのVCベンチャーキャピタルであるトヨタAIベンチャーズ(TAIV)を介して、投資先であるスタートアップ企業の技術を、自動車の製造現場にも導入、活用しているとロイターが報じる。
それによれば、トヨタの現場で既に活用されているのは先進的なサプライチェーン・マネジメントや生産ラインでのロボットに関する技術などだという。例として、工場の1ラインで学習したことをAIを使ってトヨタの世界中の工場と共有する技術や、サプライチェーン上の部品をトラッキング(追跡)する技術などがあるそうだ。
トヨタはスターアップをあたかもかつての研究所のように使い、必要なテクノロジーを開発、それを実際に使いこなしているということなのであろうか。
少しばかりパナソニックとアプローチの違いを感じる。
かつて電機会社に勤めていた頃は、マレーシアの生産工場近くにVMI倉庫を運営し、フォワーダーの物流システムを改良して、サプライヤー誰もがアクセスできるシステムを構築、在庫情報やフォーキャスト情報を開示、サプライヤー側でVMI倉庫の在庫量調整を行なうオペレーションを実施していた。まだクラウドサービスもなかった20年前のこと。客先であったDELLのオペレーション模したものだったが、今の環境があれば、さらに高度することもできたのではないかと思ったりする。
そのオペレーションを実施しようと目的も、パナソニックと同じく、
1. リードタイムの短縮・納期回答の迅速化による顧客満足度向上
2. 在庫廃棄ロスの削減
3. 納期遵守による販売増
だった。このオペレーションを始めてから、廃棄ロスが極端に減ったと記憶している。システム導入することで在庫責任が明確になり、それがロス削減につながる理由になった。
「サプライチェーンマネジメントは、1990年代後半ごろから出てきたが、いまだにうちのサプライチェーンは盤石だという企業にあったことがない。日本市場はなかなか難しいところもある」と話すブルーヨンダーの日本法人の声をBusiness Insiderが紹介する。
企業の枠を越え、必要な範囲でシステムを共通化し、データを共有する取り組みは、簡単には進まない。システムは最先端でも、その導入には人間くさい組織間の合意形成が必要になる。 (出所:Business Insider)
20年前、システム導入した当時のことを思い出す。どれだけ話し合いの時間を持っただろうか。スタート時はほんの数社だけでしか参加しなかったが、きちんとオペレーションできることが実証されると参加するサプライヤーの数も増えていった。
自分たちの経験からすると、出来ないことはないはずである。互いの利害を認め合い、責任が明確になれば、合意形成は決して不可能なことではない。