Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

EVシフトの波 自動車産業の垂直統合を破壊するか

 

 バイデン米大統領が先月末、政府調達で米国製品を優先する「バイ・アメリカン」を改正する大統領令に署名したという。

 「連邦政府は、膨大な車両を所有していますが、それをここアメリカで、アメリカの労働者によって作られた、クリーンな電気自動車 EVに置き換えるつもりだ」と、大統領が署名に際し述べたとBusiness Insiderが伝える。

 また、この車両の置き換えがアメリカの自動車産業に100万人の新たな雇用を創出するだろうとも述べたそうだ。

www.businessinsider.jp

  一方で、そのEVの普及が米自動車産業に打撃を与えかねないとの指摘もあるようだ。

 「過去数十年間、石油を動力とする機械を造ってきた自動車産業労働者が、今後10年で別の仕事を強いられる、あるいは職を失う可能性は高まっている」と、NewSphereはいう。

 

 GMやフォードといった企業の想定どおり、内燃機関から電力へと歴史的な転換が進んだ場合、いまある「ピストンや燃料噴射装置の製造」といった仕事は、バッテリーパックや電気モーターの組み立てに取って代わられることになる。(中略)

EVへの移行で最も脆弱な立場に追いやられるのは、ガソリン車とディーゼル車のトランスミッションおよびエンジンを製造する、約10万人の工場労働者だ。 (出所:NewSphere) 

newsphere.jp

  NewSphereが指摘するGMやフォードの労働者たちが抱く心配は杞憂なのだろうか。

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 台湾の鴻海精密工業フォックスコン)が、米EV電気自動車メーカのフィスカーと提携し、2023年終盤から年間25万台超のEVを生産するという。そのフィスカーはオーストリアのマグナと協業しSUVタイプのEVも生産するという。

 自動車のEVシフトは、ガソリン車から部品点数を減らしたばかりでなく、かつて電機産業で起きた「水平分業」を引き起こすのだろうか。

 マグナのフランク・クライン社長は日本経済新聞の取材に「マグナは車業界で既にフォックスコンのような存在になっていると思う」と話したそうだ。

「顧客が新しい工場を立ち上げたいと言えば、その能力もノウハウもある。必要に応じて人員を増強したり、新しい工場を建設したり、様々なパートナーと協力したりする柔軟性もある。設備増強は企業からの受注状況にもよるが、スロベニアや中国の工場を拡張する計画を進める」 (出所:日本経済新聞) 

www.nikkei.com

 日本経済新聞によれば、マグナはソニーのコンセプトEV「VISION-S(ビジョンS)」の製造を受託し、アップルのEVの提携先の候補としても取り沙汰されているという。

 「ソニーとの関係は長く、2年ほど前から開発に取り組んできた。ソニーのチームとしての速さに驚かされた。オーストリアでは完全に機能する試作車を走らせることができた。ソニー自動車産業に参入するかどうかはソニー自身が決めることだが、(ビジョンSは)突出した品質だと思う」 (出所:日本経済新聞

 

 

 国内自動車メーカは今後どう対応していくのだろうか。従来の垂直統合型の生産にこだわり、あくまで自社生産を続けるのだろうか。

 かつて電機メーカは自社工場をことごとくEMSに売却していったことを思い出す。同じことが自動車産業で起きても不思議ではないような気もする。

「自動車メーカーは通常、販売開始の5〜7年前から車両製造を進めることから、仕事の清算は早期にやってくるかもしれない。2028年までに内燃機関車の開発が終了するだろう、という議論もあり得ます」と話す業界関係者の言葉をNewSphereが紹介する。

 長く待たずして、近々色々なことが起き始めるのかもしれない。そんな予感がする。

 

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