はじめてテスラの秘密のマスタープランを読んで、これが「サスティナビリティ」なんだと思った。極めてシンプルなワードでまとめられている。
スポーツカーを作る
その売上で手頃な価格のクルマを作る
さらにその売上でもっと手頃な価格のクルマを作る
上記を進めながら、ゼロエミッションの発電オプションを提供する。これは、ここだけの秘密です。 (出所:テスラホームページ)
この秘密のマスタープランは、2006年にイーロン・マスクが書いたものだ。そして、彼はその通りに実行してきた。
そして、今またイーロン・マスクが驚きの発言をする。
「経営者は、自分たちが作る製品や提供するサービスについて完全主義者を目指すべきだ」
と話したとBusiness Insiderが紹介する。
思わず腰を抜かしそうになる。さらに、マスク氏は「顧客からも、顧客ではない人々からも、あらゆる方面から否定的なフィードバックを集めるべきだ」と述べたという。
プロダクト・イノベーション
国内企業もかつては、プロダクト・イノベーションを標榜していた。そして、いつしか難しいといっては、努力を諦めてしまったのかもしれない。記事を読んで、そんなことを思い出す。
たとえ、プロダクト・イノベーションが難しいことだとしても、マスクはその技術は「絶対に学べるもの」で、最初のステップとしてやるべきなのは、シンプルに努力することであると述べた。 (出所:Business Insider)
Business Insiderによると、「アメリカの企業経営者たちは、製品を改良するために十分な時間をかけているだろうか。私はそう思わない」とイーロン・マスクが語ったという。
何も米企業だけのことではなかろう。
そして、そのマスク氏の口から「カイゼン」の基本のひとつ三現主義を聞くとは思わなかった。「カイゼン」も米国の大学で研究され、「リーン方式」として定着したと聞く。そうであれば、何も不思議なことではないのかもしれない。
そうした背景と、イーロン・マスクというよき先例ができれば、それに追従するものが現れたりするのだろう。電動車だけでどれだけのスタートアップが米国には出現したのだろうか。
オールドエコノミーたち
このコロナ渦という嵐がグリーンリカバリーを萌芽させ、今までの経済社会を作り変えようとしている。自動車産業はいち早く回復をみせたが、その前にカーボンニュートラルという壁が突如としてあらわれ立ちはだかる。
Car Watchによれば、日本自動車工業会のオンライン記者会見で、トヨタの豊田社長は危機感をあらわにし、「2輪、大型、軽そして乗用を合わせて、日本という国が今までの実績が無駄にならないように、どう2050年のカーボンニュートラルに向けていくか。簡単なことでもないですし非常に複雑です」と語ったという。
その背景には、メディア報道の誤謬があるようだ。
「日本の電動化は遅れてる」、「ガソリン車さえなくせばいいんだ。それが、カーボンニュートラルに近道なんだ」。 何の根拠もない、「不条理な話」ということであろうか。
豊田社長は、このオンライン記者会見で、メディアに異例の注文を付け、「正しい情報開示よろしくお願いしたいなと思います」と語ったという。
メディア報道が横槍となり、それによって生じる誤解が世相となれば、大きな障壁になってしまうことを恐れたのだろうか。
その日本自動車工業会は、難しいことではあるとしながらも、カーボンニュートラルにチャレンジすることを全会一致で決めたという。
バルミューダ IPO
家電メーカといっていいのだろうか、グリーンファンやスチームトースターの「バルミューダ」が東証マザーズに上場したという。
気になる会社だった。電機メーカに勤めていたこともあったし、以前同じ職場で働いていた仲間が商品開発の責任者をしているからかもしれない。スチームトースタが売れ始めた頃であっただろうか、調査会社からレポートを購入してまで調査したこともあった。
メディアやアナリスト、知識人など様々な人々が色々なことを言っている。「デザイン経営」だの、尖ったデザインや機能、アートだとか、高級家電、ファブレスなどなど。ハードウェア系の生みの苦しみをわかっているのだろうか。売れる製品を作るまでのもがき、先行投資の繰り返し、資金ショートの恐怖。
バルミューダの寺尾社長もまた、イーロン・マスク氏のように何かマスタープランをもっているのかもしれない。ここまでの過程が重ねてきた失敗の経験が、マスク氏のように完全なる商品にこだわるようになったのかもしれないと感じた。
日本経済新聞にこんなコメントがあった。
スタートアップといえば「ネット系」が多かった日本の起業シーンもずいぶん変化してきました。「ものづくり系」はいくつかある注目分野の1つです (出所:日本経済新聞)
やはりものづくりは裾野が広い、メーカがひとつ誕生すれば、素材から組立まで、そのサプライチェーン上で関わる産業が増え、雇用の機会が生まれるかもしれない。また、サスティナビリティなものづくりの機会になれば、カーボンニュートラルの社会に貢献していくのかもしれない。
バルミューダの成功事例を学習して、新たなものづくり系スタートアップが次々と立ち上がって欲しい、そう思った。