過度に自国産業を保護すべきという気はないが、十分な雇用を維持できる産業規模は必要だと感じる。このコロナ渦だから尚更そう感じるのかもしれない。多くの人が職を失っているが、それを受け入れるだけの雇用機会があるのだろうかと少しばかり不安になる。
そんな中、半導体ファウンドリー(受託生産)で世界最大のTSMC(台湾積体電路製造)が日本に開発拠点をつくる話が進んているという。
要素技術が魅力なのか、台湾TSMCの日本進出は
日本経済新聞によれば、日本では半導体の「後工程」パッケージ(封止)作業などに関連する開発を主に手掛けるという。
日本は世界でも有数の装置メーカーや素材メーカーが集まる。TSMCはこうした日本企業とは、既に台湾で連携を進めている。ただ先端の半導体開発を急ぐには、一段と関係を深める必要があると判断したようだ。 (出所:日本経済新聞)
TSMCは現在、海外初となる先端の半導体工場を米国に建設するため、準備を急いでいる。日本にも先端の開発拠点を設けることで、今後は日米台の強みを効果的に活用し、現在、世界最大手である優位性を今後も堅持したい考えだと日本経済新聞はいう。
いつまで、そしてどこまで広がるのか半導体不足
一方、このコロナ渦にあって、半導体が世界的な不足に陥り、あらゆる業界でその需要を満たしきれていないという。Gizmodoは、このコロナ渦が「ラップトップやモニター、ウェブカメラなど、「第2次消費者向けガジェットブーム」を誘発しているという。
多くの人がステイホームを続け、より恒久的なホームテクノロジーソリューションが求められていると指摘する。この半導体不足の影響を受け、2021年前半は引き続きガジェットや自動車の品薄状態は続くとみる。
ブルームバーグによれば、ミベアミツミが、半導体不足の影響が航空業界を含むさらに多くのセクターに広がる可能性を示唆、貝沼由久社長はアナリストとの電話会議で、「需要がわれわれの予想より早くいろいろなところで湧き出ている」と語ったという。
自動車業界における半導体不足はさらに深刻のようだ。「ゼネラル・モーターズ(GM)は今月、北米3工場の操業停止を余儀なくされ、フォード・モーターは短期的な20%の生産削減の準備を進めている」とブルームバーグが伝えた。国内メーカも同様に減産を強いられるが、唯一トヨタがその影響をミニマイズ化できているようだ。
営業利益2兆円 減産しないトヨタの強み
そのトヨタが2月10日、2021年3月期通期の業績予想を発表した。連結営業利益を2兆円になるという。
ITビジネスONLINEによれば、世界的な半導体不足の影響については、現時点で「減産になることはない」としながらも、リスクに備えて状況を注視していくという。
日本経済新聞は、ルネサスエレクトロニクスとの関係性を指摘し、東日本大震災を教訓に「供給網全体で半導体在庫を手厚く持つようになった」も影響を限定的にしたようだという。
今回の代替調達は震災でルネサス製の半導体供給が止まったとき、完成車メーカーが復旧支援に駆けつけた「信頼関係が作用した」(トヨタ幹部)という。トヨタとデンソーはルネサスにあわせて約11%出資。デンソーは18年に出資比率を引き上げ、このとき半導体の重要性が高まることを念頭においていた。 (出所:日本経済新聞)
電機メーカに勤め資材調達を仕事にしていた身からすれば、調達リードタイムが長く市場キャパが潤沢でない半導体を戦略資材とするのは当たり前のことであった。それでも、今足元多くの電機メーカでさえ十分な半導体を確保できていない。機械加工が主だった自動車メーカが苦慮するのは当然なのかもしれない。
自動車が一段と高知能化し、技術的に複雑化するにつれ、フォード・モーターやフォルクスワーゲン(VW)といった金属加工が伝統的強みの自動車メーカーにとって、リスクが顕在化した。ソフトウエアと半導体の専門知識がより豊富な自動車メーカーはこうした潮流を乗り切りやすいが、これら伝統メーカーの場合は供給面の問題に潜在的に見舞われやすい。 (出所:ブルームバーグ)
また、自動車メーカーが「『リーン生産方式』に非常に固執しており、在庫を低水準に保ってコスト効率を高めている」ことも指摘する。
まとめ
この半導体騒動を見ていると、国際分業の流れに乗り台湾系のファウンドリーやEMSばかりを活用してきたことがよかったのだろうかのかと疑問も沸いてくる。結局はそれによって一局集中を招き、あらゆる産業が市場の需要を満たすことができない事態に発展した。
この先、サプライチェーンを見直す動きにつながっていくのだろうか。もし仮に見直すのであれば、トヨタとルネサスの関係性のように相互に助け合うことができるようになっていくことが望ましいのかもしれない。
今回の台湾TSMCのつくば進出がそんなことを考えるきっかけになればいいし、こうしたことで国内の雇用機会になればいいのかもしれない。
「参考文献」