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イプシロンS燃焼試験で再び爆発事故、日本の宇宙・防衛産業が成長産業という疑問

 JAXA 宇宙航空研究開発機構が開発中の小型固体燃料ロケット「イプシロンS」の開発試験で爆発事故が発生しました。秋田県能代市で昨年実施した試験での事故に続き、同種の失敗が繰り返されたようです。能代市の実験場が事故で使用できなくなったため、今回は種子島宇宙センターで試験が行われたそうです。この事故で種子島の施設も失うことになり、「イプシロンS」の開発の遅れは避けられないといいます。両施設とも復旧には数か月かかるそうです。

「安全保障にも関係する宇宙開発体制の強化」、政府にとって重要な政策といわれています。そんな中での致命的な事故、汚点になったのではないでしょうか。問題の真因を特定し、抜本的な見直しが迫られていそうです。

 

 

正しく原因が究明されていなかった
2回目となる2段目エンジンの燃焼試験は26日午前8時半に始まった。JAXAによると、燃焼開始20秒後から予想していた燃焼圧力を上回りはじめ、49秒時点で爆発したという。予想していた数値を上回り爆発した現象は、前回の爆発時と同じだという。また、記録されていた燃焼圧力は、モーターケースの耐圧圧力を下回っていたが、爆発した。これも前回と同じ現象だという。(出所:日経ビジネス

小型ロケット「イプシロンS」爆発に人手不足の影 15万人足りない宇宙人材:日経ビジネス電子版

 技術蓄積が浅い新興企業ならともかく、経験豊かな歴史ある企業が、なぜこのような致命的なミスを犯してしまったのでしょうか。

人手不足

 政府の宇宙基本計画では、国内市場規模を20年の4兆円から30年代に8兆円へと倍増させることを掲げているそうです。今年の宇宙関連予算は6000億円を超え、この10年間で2倍以上に拡大させてきたといいます。一方で、人員不足が課題となっているようで、天文観測衛星「ジャスミン」の打ち上げ時期を遅らせる事態にもなっているそうです。JAXAの職員数が減るだけではなく、関連する国内メーカの人員も同様の傾向といいます。

 

 

 JAXAが先に公表した「マネジメント改革検討委員会報告書」によれば、22年のイプシロン6号機、23年のH3初号機と2つの打ち上げ失敗の根本要因に人員不足を挙げ、「役割と事業の拡大にふさわしい人材強化をしてこなかった」との記載があるそうです。

 繰り返される事故、慢性的な人手不足、無謀なマネジメントが事故の原因になっているということなのでしょうか。専門家は「日本は研究者や開発者が多すぎる」との問題点を指摘し、宇宙開発を進めるためには研究者だけでなく、実際に現場で働き、研究者とのパイプ役になる技術者が必要と指摘しています。

成長産業への期待

 政府は宇宙や防衛関連を成長産業にすることを望んでいるのでしょうか。国産を重視し、巨額の政府予算をつければそれも叶うのかもしれません。

 実際、防衛関連企業の売上高は増加しています。防衛関連産業を担う重工業大手3社 三菱重工業川崎重工業IHIの防衛関連事業の売上高は、2025年3月期に前期から25%増加する見通しといいます。防衛産業は、年平均4~5%の成長率が見込まれているそうです。

 

 

 爆発事故を起こしたイプシロンSの開発などに関わっているのは、IHI傘下のIHIエアロスペース。政府の支援を受けて事業強化を図るのも悪いことではないのでしょうが、一方で、それに見合うリソースを含め事業環境を適正に整えることができなければ、事業を担う資格があるのかとの疑問も生じます。

 功を焦って失敗する。問題を見誤っては効果的な対策を打てずにまた失敗する。今回の失敗を受けて一時、IHI株が売られたそうです。

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 政府が掲げる宇宙や防衛の計画があまりにも現状からかけ離れた妄想になっていないかと心配になります。そこに巨額の税金が投入されては単なる無駄遣い、生産性が極めて低い政策で、許容できるものでありません。

 実現できるものでなければ、解決できない問題を生み出してしまいます。それが明らかになっていそうです。政策マネジメントに疑問符がついたのではないでしょうか。

 

 

「参考文書」

小型ロケット「イプシロンS」燃焼試験で爆発 火災発生 去年に続き2回目 JAXA状況調べる 種子島宇宙センター | NHK | 宇宙

次世代小型ロケット「イプシロンS」試験で爆発 JAXA - 日本経済新聞

IHIの株価急落 「イプシロンS」試験で火災 - 日本経済新聞

政府、防衛産業戦略策定へ 基盤強化、装備輸出推進 | 共同通信

三菱重の4━9月期営業益86.7%増、防衛・宇宙など寄与 通期は維持 | ロイター

三菱重工の純利益17%増 4〜9月、防衛・原発で成長続く - 日本経済新聞

重工3社、防衛25%増収 今期、政府予算拡大で 傷んだ供給網の再生急務 - 日本経済新聞

三菱重工など防衛関連株が下落、イスラエルとヒズボラに停戦観測|会社四季報オンライン

 


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