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九州はシリコンアイランドとして復活するか、世界トップの半導体受託生産TSMCの工場建設が始まる

 

 半導体受託生産で世界最大手のTSMC 台湾積体電路製造が九州熊本に進出を決め、工場建設が始まったという。TSMCの日本の子会社JASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)が熊本県菊陽町と立地協定を締結、2024年12月からの出荷を目指すそうだ。半導体ウェーハを月間5万5000枚製造する予定という。

TSMC熊本工場が建設着手~24年12月の本格稼働目指す(台湾新聞)

 協定締結式にJASMの堀田社長が出席し、 「九州そして熊本が、将来世界における一大半導体生産地域となる大きな可能性があると期待しています」と話したという。

雇用は約1700人を計画し、このうち7割の人員を新規雇用もしくはアウトソーシングする見込み。技術者約320人はTSMCから出向する見通し。すでに台湾から技術者10人とその家族が熊本入りしている。また、ソニーグループからも約200人が出向し、残りの約1200人を新規採用や派遣で確保する。技術系新卒の募集の開始も明らかにした。(出所:台湾新聞)

 ものづくりの工場ができれば、雇用が増える。また工場に関わる産業の発展の機会ともなる。久々の明るいニュースのような気がする。

 

 

 そうはいえども、今すぐに半導体不足の解決には貢献できない。半導体不足は未だ尾を引き、解消されていないという。これに中国上海のロックダウンの影響を受け、自動車産業は減産を強いられ、新車販売も低迷する。

【メーカー別一覧】半導体不足で低迷続く新車販売、5月以降の見通しは?|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

 ニュースイッチによれば、軽自動車の台数は11か月連続で減少しているという。ここ数年で見られない落ち込みになっているそうだ。5月も大手メーカーにおいて半導体不足などによる工場停止の発表がされるなど、依然として不透明な状況が続くという。

 一方、米アップルの業績は相変わらず好調のようだ。2022年度第2四半期(2022年1月〜3月)の業績を発表し、Macシリーズの好調により、同四半期としては過去最高の売上高を記録したという。

Appleの2022年度1月〜3月期売上高、Mac好調で四半期売上高の記録を更新 - iPhone Mania

 同じように半導体を使用するはずだが、アップルはその影響を軽微に抑えているということなのだろうか。

 

 

 アップルは以前よりチップに内製化を進めてきた。そのチップは、ハードの性能を向上させ、消費者に使いやすさという利便性を提供し、他方、今の半導体不足にも有利に働いているという。ただ内製と言えども、このチップも半導体の受託生産であるファウンドリー、TSMCで生産されている。

  そのTSMCは1987年に、半導体製造のみに特化する企業として操業を始め、今やファウンドリー業界での世界シェアの約半分を占めるまでに成長した。その顧客には、米Appleを筆頭に、台湾の半導体メーカMediaTek(メディアテック)、米AMD、米クアルコムQualcomm)、米エヌビディア(NVIDIA)といったそうそうたるグローバハイテク企業が名を連ねている。Appleだけで、TSMCの収益の4分の1以上を占めているそうだ。

Appleも依存する独走TSMC、台湾アナリストが語る地政学的リスク | 日経クロステック(xTECH)

 日経XTECHによれば、TSMCは、台湾のGDP 国内総生産の7.35%(21年時点)を占め、先端技術分野の人材や労働力に対しての強い需要を生んでいるという。

台湾に完成された半導体産業クラスターを築き上げています。半導体の原材料・設備・部品・システムベンダーといった現地の供給元を援助したり、人材を育成したりして積極的に発展につなげているのです。(出所:日経XTECH)

 日本で衰退したといわれる半導体産業が、ファウンドリーという形態をもっていて台湾の地で大きく成長した。

 

 

 九州はかつて「シリコンアイランド」と言われ、半導体産業が栄えていたという。その地にまたTSMCが工場を作り、地元でも期待を寄せているという。

シリコンアイランド復活へ 九州に投資1兆円超見通し今後数年で : ウィークリーけいざい : 企画・連載 : 九州発 : 地域 : 読売新聞オンライン

これを契機にして、単にファウンドリーを利用することにとどまるのではなく、積極的にバリューチェーンを見直して、日本の半導体産業、加えて他の産業の活性化につなげていくべきなのだろう。ハイテク関連の雇用が増えれば、やはり国内経済は活気づくはずだ。