『アマゾンの正論「善意は役に立たない」を理解しない日本企業、DXで赤っ恥は確実だ』、過激なタイトル名の記事を日経XTECHが出す。読んでみれば、なるほど納得はする。
「Good intention doesn’t work, only mechanism works!」
とは、アマゾンの取締役会長に退いたベゾス氏がよく口にするモットーだそうだ。
「善意(良い意図)は役に立たない。仕組みだけが役に立つ」と記事筆者は訳し、アマゾンだけでなく、全ての米国企業、いや世界中の企業がそれぞれの「仕組み」によって、自らの事業を運営しているという。
さらに、「日本企業は勝手にやっている現場の集合体」という。これまた随分過激なものの言いようだ。記事筆者は全社的な仕組みがまともではないのだと指摘し、勝手にやっている現場は従業員の「善意」で満ちあふれ、部分最適や属人化を招いているという。
業務の遂行に必要な機能やプロセス、ルールなどがきちんとそろっており、標準化され明文化されていなくてはならない。機能は細かく分割されて各部署に割り付けられ、さらに細分化されて個々の従業員に割り当てられる。そして、それらをうまく連携させるための標準化されたプロセスやルールが存在する。これこそが仕組みであり、まさに全体最適だ。
(出所:日経XTECH)
中堅社員になりたての頃、上司が変わった。新しくやってきた上司はトヨタの生産システムの信奉者だった。属人的な仕事は止め、システムで仕事をできるように変革しろとの指示が飛んだ。まずは小さな職場からの変革だったが、やがてそれが拡がりをみせ、それで事業部が変っていったのかもしれない。栄華は長く続かないが、それでも一時は会社でトップクラスの利益を叩き出し、事業本部まで駆け上がった。小さな職場での取り組みが礎になり、それが花開いたのかもしれない。まだ、デジタル化やDXデジタルトランスフォーメーション、そんな言葉とは縁遠い時代のこと。
記事はまともな主張、正論をいう。
個々の従業員に割り当てられる機能は当然、従業員に分かるように明文化される必要がある。これをジョブディスクリプション(職務記述書)という。ちなみに、このジョブディスクリプションに基づいて働く雇用制度がジョブ型雇用だ。従って、従業員に求められるのは、職務(=機能)を果たすために必要な能力であり、間違っても「善意」ではない。もちろん、おもてなしが職務として記述されているのなら、善意ではなく機能として、おもてなしをする必要はあるが。 (出所:日経XTECH)
確かに、事業が一時の勢いを失い、コア事業から外され、他社と合弁して新会社を作ることになった。どちらも大手であるが、どちらの会社のしくみ、システムを使うことができず、一から作ることになった。当時のどちらの事業部のトップもあまり仕組み作りには熱心ではなかった。部分最適になり、仕事が属人化するようになった。筆者が指摘する通り、個人の善意に頼ることになっていたのかもしれない。
外部環境の変化もあったが、その新会社は7年あまりで幕を閉じることになった。
ANAが、コロナ渦で国際線の多くが運休する中、少しでも収益を生もうと、国際線機内食の通販を昨年2020年12月からスタートしたという。1月までに約7500セット、9万食を売り上げており、ヒット商品と言っても過言ではないだろうとAviation Wireはいう。
社員の善意で始まったことなのだろうか。それとも「仕組み」があって、その上に善意が花開いたのだろうか。
コロナ渦である。善意を活かすために、「仕組み作り」が求められているのかもしれない。