米中対立が気になる。互いの総領事館閉鎖まで事態がこじれてきた。単なる経済的な対立ではなそうだ。
23日、米カリフォルニア州で演説したポンペオ米国務長官の内容をブルームバーグが伝える。
ポンペオ長官は演説で中国の習近平国家主席について、「われわれが許さない限り、中国の国内外で暴政を行う運命にはない」と述べ、「われわれの自由を中国共産党から守ることが現代の使命だ」と強調した。
さらに、「今ひざまずけば、われわれの子孫は、中国共産党の言いなりになる。共産党の行動は今の自由世界にとって主な挑戦となっている」と指摘し、「自由世界はこの新たな暴政に勝利しなくてはならない」と訴えた。 (出所:ブルームバーグ)
少し過激に聞こえるが、それだけ苛立ちを募らせているということのなのだろうか。
「無分別な関与という古いパラダイムは失敗だった」
「必要なのは(かつての)封じ込めではない。これは直面したことのない、複雑で新しい問題だ。ソ連は自由世界の外にいたが、中国は既に内側にいる。だから一国では対処できない」
と、ポンペオ長官が演説で語った言葉が朝日新聞が紹介する。
中国は、「中国標準2035」を今年中に発表するという。
こうした動きが、米中対立の背景のひとつなのであろうか。
「グローバルな技術標準はまだ形成の途中です。このことは、中国の産業と標準に、世界を追い越す機会を与えてくれます」。
国際規格を作成するための産業計画であるChina Standards 2035(中国標準2035)を立ち上げようとしているところだ。
China Standards 2035は、Made in China 2025(中国製造2025)後継計画だ。このあと続く10年間のさらに大胆な計画は、グローバルな商品の製造場所を管理することではなく、それらを生産、交換、消費を定義する標準を策定することを狙っている。
例えば産業用IoTを支配することによって、世界の産業を取り込むこと。次世代の情報技術およびバイオ技術基盤を定義すること。社会的信用システムを輸出すること ―― そして北京政府のインセンティブ形成プラットフォームのこれでもかというほどの強化などだ。私たちはそこに、商業、資本、協業を武器にしていこうとする明白でグローバルな野心を見た。
China Standards 2035は、ハイエンド機器製造、無人車両、付加製造技術(additive manufacturing)、新素材、産業用インターネット、サイバーセキュリティ、新エネルギー、エコロジー産業などの、新興産業向けの標準策定に焦点を当てている。これらは、Made in China 2025にもあった、戦略的新興産業活動の重点分野とも一致している。 (出所:TechCrunch)
こうしたことは何も特別なことでもないように思う。
日本政府も同様に、「Society 5.0」を国家戦略の中心に置き、デジタル化を推進する。この戦略下で開発した技術を使って国際貢献と称し、ある意味ではデファクトを狙っている。
ただ違いは、中国は緻密に計画し、それを強かに確実に実行している。
こうした中国の強みは、欧米視点からすれば、間違いなく脅威であろう。逆に、中国の立場からすれば、欧米が以前からしてきたことと同じように振舞って何か問題があるといっても何も不思議ではない。中国には中国の価値観があるということだけだ。
地政学リスクが高まってきているのかもしれない。
朝日新聞によれば、中国は局面を変えようと水面下で動いてきたという。香港や台湾への介入を控えるようポンペオ長官に求めていたが、議論は平行線をたどったという。
中国もトランプ政権の対中強硬路線が、民主党を含むワシントンの総意に近いとみるようになっている。
対米関係が専門の北京の大学教授は「大統領選が終わるまでの我慢だという意見もあるが、どちらが勝っても米中関係が元に戻る可能性は低いだろう。我々はその前提で対米政策を考える必要がある」と指摘する。 (出所:朝日新聞)
何事にも極端にならず、中立を貫いて欲しいと思う。米中どちらも重要なパートナ関係にあることは間違い。
多くの企業が中国に進出している。巨大な中国市場をターゲットにしている企業が多いようだが、このコロナで、マスクや医療防護服などは中国で作られていることが判明した。
VIETJO ベトナムニュースによれば、JETRO日本貿易振興機構が、サプライチェーンの脆弱性への対策他を目的とした海外サプライチェーン多元化等支援事業の第1回公募結果を発表したという。
採択された30社は生産拠点を中国から東南アジア諸国にシフトし、政府から補助金を受けることになるという。
ベトナムに移転する15社のうち9社が中小企業、6社が大企業。
製造品別では、医薬製造機器や医療用防護服・ガウン、医療用フェイスシールドなどの医療関連製品を生産する企業が全体の半分近くにあたる7社に上る。 (出所:VIETJO ベトナムニュース)
ベルリンの壁が崩壊して、世界はグローバル化に向かった。それから30年あまり、コロナが触媒となって、パラドックスに満ちた世界が突如出現したようだ。
従来の考え方では、もう対処できないということかもしれない。
この地政学リスクを鑑みれば、企業はバリューチェーンの見直しを迫られている。
今、国際社会はSDGsという世界共通の目標を共有している。
国家という枠組みを超え、国際協調が求められているのだろう。
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