Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

続々と開発されるサステナブルな素材たち

 

 ものづくりにおいて、素材選びは大切なこと。これはどのものづくりに共通することではないであろうか。

 地球温暖化防止や脱プラといった動き、EUでの環境政策もあり、様々なサステナブルな素材の開発が続いている。石油に頼らない植物由来のバイオプラスチック石灰石からできるプラスチック、さらに自然環境にもどる生分解性プラスチックなど様々だ。

 

 

話題のノースフェイス ムーンパーカに使われる人工クモの糸 スパイバーのブリュード・プロテイン

 そんな中で、ノースフェイスが人工のクモの糸からダウンパーカを発表し話題になった。この人工クモの糸を手がけるのは「スパイバー」という会社だ。スパイバーの社長の関山氏のインタビュー記事がWWD Japanにあった。

 関山氏は、『原料を石油などの化石資源に頼らない新しい素材がサステナブルな社会の実現に向けて貢献できる』と表現し、また、『できるだけいいエネルギー効率やいい調達方法を考えるのが人類や社会全体のサステナビリティにつながる』とも語る。

 スパイバーが作る人工のクモの糸「ブリュード・プロテイン」は、合成タンパク質を微生物の発酵プロセスを使い作る。ウールやカシミヤなどの動物由来のものとも違い、動物を飼育するときのように大量の温室効果ガスを発生することはない。

 「物質が自然の生態系の中で循環していく仕組みを作るのが合理的」と語る関山氏だが、まだこのクモの糸はリサイクルできないという。将来的には可能と語るが、まだリサイクルするほどの量がないことを課題にあげる。

 課題はまだある。そのひとつが発酵プロセスに必要な糖の確保だ。30年後に繊維の約15%をたんぱく質に置き換えたいと語る関山氏だが、苦しい内情を口にする。1000万tのたんぱく質を作るには6000万tの糖が必要となる。

現在の世界の穀物生産量は25~26億万tで、6000万tとなると約40分の1が必要。これを食糧でなくここに回すのは現実的ではない。(出所:WWD Japan)

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 新しい素材をひとつ作るには、その素材の原料確保から考えなければならない。可食できる植物ではなく、非食植物からという大きな課題がそこに横たわる。

 『今後は食糧生産には向かない場所で、海水を用いてセルロース生産をすることも視野に入れていきたい』と関山氏は対策を口にしている。

コットンやリネン、ユーカリやパルプから作られているビスコースレーヨンはこういった環境で生産したセルロースに置き換える。セルロースだけでは対応できない材料は、セルロースを分解してグルコースにして、人工構造タンパク質の微生物の発酵プロセスの栄養源にする。(出所:WWD Japan)

 まさに生みの苦しみのだろう。また、関山氏は、『人工構造タンパク質の研究を始めて15年くらいになるが、これから数千t、数万tの規模になるのには5~10年かかる。大規模に普及するには20~25年かかるだろう』とも話す。これだけの量を生産するには大規模なプラントも必要になるだろう。

 自動車などを含め色いろな産業で使用できそうな素材だが、まだまだ課題も多く実用化までにもう少し時間がかかるのかもしれない。

 

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ミドリムシユーグレナが作るバイオジェット燃料

 ミドリムシユーグレナが手掛けるバイオジェット燃料も、こうした産業化の手前までに来ている素材のひとつではないであろうか。

 欧米ではすでにバイオジェット燃料を使った商用飛行が始まっている。日本では来年、ANAユーグレナバイオ燃料を使い商用化飛行を目指す。プラントも完成、残る課題はコスト。現在の石油由来のジェット燃料のコスト100円にどれだけ近づけられるかが課題だ。

 横浜市とコラボして、「バイオ燃料地産地消プロジェクト」にも取り組む。横浜市内の飲食店等から出る廃食油を原料とするバイオ燃料を、川崎鶴見臨港バスの路線バスや、清水建設の建設工事現場の重機、横浜市内を走る配送トラックや大型トラック等に、宇佐美グループ 三和エナジーのローリー車を用いてバイオ燃料を提供するという。設備稼働率を上げるための取り組みだろうか。

  ユーグレナは、ミドリムシの大規模培養を成功させ、食品や化粧品へ展開、事業化した。バイオジェット燃料の事業化は計画通り進むのだろうか。

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積極的にサステナブル素材を使った商品を作るアディダス

 海の向こうでも、スパイバー同様に人工クモの糸の開発事例がある。

ボルトスレッズはスパイバーの米国版。酵母を用いて合成したタンパク質のシルク繊維“マイクロシルク(MICROSILK)”を開発して話題になった。この新素材は水、砂糖、イースト菌から合成しており生分解性である点もポイント。「“マイクロシルク”の量産に向けてパートナー企業と取り組んでいる」とジェイミー・バインブリッジは言うが、まだ産業化には至っていない。(出所:WWD Japan) 

  スナイパーと同様の課題を抱えているのだろうか。  

 

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 アディダス、廃棄された衣類をリサイクルした素材NuCycl™繊維から作られた100%リサイクル可能なフ-ディーと、Microsilk™とセルロース配合繊維を原材料とするテニスドレスのプロトタイプを開発した。

 

 素材を一から作り出していくには、長い年月を要する。しかし、一方では、こうしたサステナブルな素材への関心と需要は高まる。

 

 独アディダスは、このアメリカ製人工クモの糸を使って製品化の他にもいくつかの新素材プロジェクトを進め、よりサステナブルな商品作ろうとしている。

 繊維技術企業のEvrnuが開発したNuCycl™という素材を使ったadidas by Stella McCartneyの試作品が発表されている。このNuCycl™は、廃棄されたコットン製の衣料品を分子レベルにまで分解して作る高品質の再生セルロース繊維。3~4回リサイクルしても高い品質と機能性を維持できるという。

 もうひとつが、2015年に発売されたパーレイ・フォー・ジ・オーシャンズとのコラボによって生まれたシューズとウエア。海から回収されるPETボトルなどのプラスチック廃棄物や深海の違法刺し網を原材料とする。このシューズは1100万足が年内に製造される予定だという。この他にも、FUTURECRAFT. LOOPという100%リサイクル可能なランニング シューズを発表している。

 アディダスは、2024年までに製品に使用する素材をすべてリサイクルポリエステルに移行することにコミットし公表した。

 

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 リサイクルナイロン ECONYL®を採用するバーバリーなどのアパレルメーカ

リサイクルナイロン ECONYL®が使われる事例をIDEAS FOR GOODが紹介する。ステラマッカートニー、バーバリープラダだ。ECONYL®とは、

埋め立て地に捨てられたプラスチックや、海洋プラスチックとして問題になっている魚網などから作られる。Aquafil社の独自の製法により、バージンナイロンと変わらない品質を保ち、そのうえ何度も再生させることのできる無限の可能性を秘めた再生ナイロン繊維だ(出所:IDEAS FOR GOOD) 

ideasforgood.jp

 ECONYL®は、このほかにも多数の水着などに採用されている。その中で、最も大胆なのはプラダだ。プラダは、Re-Nylonという取り組みで、2021年までに、すべてのバージンナイロンを再生ナイロン繊維ECONYL®に転換することにコミットし公表した。

 

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 アディダスプラダは、最も重要であるはずのコアな素材を大胆にもリサイクル素材に変更することにコミットした。こうした行動が、素材メーカが抱える数量の確保という課題を解決していくのかもしれない。

 

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国内の繊維メーカもサステナブル素材を開発

 日本の繊維メーカもリサイクル素材の開発を進めている。東レユニクロとのコラボでリサイクル素材を作り、帝人サステナブル素材の開発に余念がない。

 WWD Japanは「現在はリサイクルポリエステル繊維を用いているが、今後は植物由来の繊維や生分解性繊維でも応用ができる」とする帝人の動きを伝える。

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植物由来の代替肉に、培養肉も登場

 米国発のビヨンドミートやインポッシブル・フーズがこの分野では先行するが、Business Insiderは中国企業が一気に進出を始めたと伝える。

中国では「人造肉」と表記され、今年後半以降、流行語になるほど話題になっている。11月25日、アリババのECサイト「T-mall(天猫国際)」で、香港企業ライトトリートが生産する人工豚肉「オムニポーク」が発売されると、230グラム28元(約430円)と本物の豚肉より割高にもかかわらず、2日で4000個、重量にして1トン分が売れた。(出所:Business Insider) 

www.businessinsider.jp

Business Insiderは、この他にも南京農業大学が開発する培養肉も紹介する。

 

 多くの企業が長い時間をかけ、こうしたサステナブルな素材を開発している。来年2020年には、こうした素材が使われた商品が本格的に市場に登場してきそうだ。

 地球環境のことやSDGsを気にするなら、こうした商品を手に取ってみたらどうであろうか。

 

 

「関連文書」

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