オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が、重要な新興技術の国別競争力ランキングを公表し、44分野中37分野で中国が欧米諸国を「圧倒的にリード」していると指摘したそうです。
中国、重要な技術分野で欧米を「圧倒的にリード」=調査 | ロイター
米国は高性能計算や量子コンピューター、先端半導体関連技術や人工知能(AI)の自然言語処理に加え、小型衛星、ワクチンなど7項目の研究で世界をリードしているが、他の多くの分野では2位となっているといいます。
他方、中国は、防衛や宇宙、ロボティクス、エネルギーなど37項目で1位を占めているそうです。
政府プログラム下で「影響が大きい分野での研究で圧倒的なリード」を確立していると指摘し、欧米諸国は安全なサプライチェーン(供給網)の確保に向け協力し、戦略的技術の迅速な発展を目指すべきと提言しているといいます。
凋落した日本のテクノロジー
このランキングは、2018~22年に発表された影響力のある論文を分析した結果といいます。
日本は44項目中、5位以内に入ったのは原子力や量子センサーなどの4項目だけだったといいます。
技術競争力ランキング、中国が米国を圧倒 「4軍」の日本、どう戦う:朝日新聞デジタル
「1軍」は想像以上に圧倒的だった中国と差をあけられてしまった米国。「2軍」で英国とインドががんばっていて、「3軍」は韓国、ドイツ、オーストラリア、イタリア。日本が属しているのは、そのあとの「4軍」です。(出所:朝日新聞)
ショッキングな内容です。
「ノーベル賞をとる日本人はいるが、それは「数十年前の貯金が残っているだけ」、それでも多くの日本人が「日本はナンバーワンではなくても、まだ多くの分野において先端的な研究をしているはず」と心のどこかでそう思っているのではないか」と、東大先端科学技術研究センターの井形特任講師が述べています。
そうなのかもしれません。現実は相当に厳しそうです。
それでも狙われる日本の技術
中国には、外国企業に依存して「弱み」となっている品目をまとめた資料があるそうです。
現在は公表されていないといいますが、その資料を分析すると中国がターゲットにしている分野が見えてくるといいます。
中国「強国」戦略の脅威 “ターゲットは日本の得意製品” | NHK | ビジネス特集 | 経済安全保障
記事によれば、その資料から分かることとして、日本の強い分野と中国が強化したい分野はほとんどが重なり合うといいます。
それは、産業用ロボットや内視鏡、複合機など、また、部品や組み立て工程では半導体関連装置や自動車部品、燃料電池など。素材においては、炭素繊維や半導体の材料など、川上から川下まで幅広い分野に及ぶといいます。
また、中国はこうした製品や技術を対象に、国産品の割合を100%や75%にすることを求めているそうです。それは外国製品を排除するか、それとも中国で生産をするかという選択を迫るものだといいます。
「国際的なサプライチェーン=供給網の中国への依存度を高めることで外国による供給網の遮断に対し強力な反撃と抑止力を形成する」(出所:NHK)
中国はサプライチェーンを「武器化」しようとしていると記事は指摘しています。 その背景にあるのは米中対立で、対立が激化した時に有利に作用させるためといいます。
「経済安全保障」の確立が求められています。慎重な検討と大胆な行動が求められます。日本は再興するのでしょうか。まずはこの厳しい現実を受けとめなければならないのでしょう。
「参考文書」
中国が先端技術の「主戦場」に 豪シンクタンク、国別ランキング発表:朝日新聞デジタル
中国、日本の半導体輸出規制に「大きな懸念」=商務省 | ロイター