Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

故きを温ねて新しきを知る 伝統工芸から学ぶSDGs

 

 不易流行松尾芭蕉が追い求めた理念のひとつといわれ、いつまでも変化しない本質的なものの中にも、新しさを取り入れていくこと、新味を求めて変化を重ねていく流行性こそが不易の本質であることを意味する。

 そういう文脈をもってすれば、伝統工芸にも新味を求めて流行性を取り入れることはいいことなのかもしれない。

伝統工芸とSDGs

カーボンニュートラルな素材や原料のリサイクルは伝統工芸の未来を切り開くのか」、

 新しい波であるSDGs持続可能な開発目標の要素を取り込んで活路を見いだそうとする老舗企業があると日経ビジネスが紹介する。

SDGsは伝統工芸を救う切り札か 新素材やリサイクルに見る未来:日経ビジネス電子版

「ゆうはり」、1922(大正11)年に創業した京焼・清水焼の窯元である陶葊(とうあん)が開発した新しい焼き物で、薄く、涼感のある手触りで、これまでの陶磁器にはない風合いになっているという。この焼き物は、CNFセルロースナノファイバーを従来の素材に加えたという。

 日経ビジネスによれば、「安定度が劇的に向上し、焼いたときの質感も抜群に良くなった」そうだ。歩留まりが画期的に向上したともいう。また、CNFを「木材の繊維をナノサイズまで分解した植物由来のカーボンニュートラルな材料」と説明する。

 

 

 工芸、もともと生活用具としての実用性を備えたもので、人間の日常生活において使用される道具類のうち、その材料や技巧、意匠によって美的効果を備えた物品などのことをいう。工芸品に新味を加えることで、それが日常的に使われるものになれば、それが現代の民芸といっていいのかもしれない。

温故知新、金継ぎ

「金継ぎ」、壊れた陶磁器を漆で繕い、仕上げに金粉などで装飾する。

日本のキンツギ、世界へ。「欠損を愛でる」心が海を越えた理由 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

割れや欠けのある器を捨てたり、欠損部分を隠したりするのではなく、傷を受け入れ、ひび割れや欠けをあえて目立たせる手法である。壊れた器はふたたび使えるようになり、ひびを彩色することで豪華な器に変わりもする。(出所:Forbes)

「物を買いなさい、壊れたら捨てて、また新しく買えばいいというのが資本主義だ」とForbesは指摘し、しかし、これはごく最近の考え方で、物を捨てる習慣よりも修繕する習慣のほうがはるかに長い歴史があるという。

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温故知新、故きを温ねて新しきを知る、古いものの中から現代に応用できるものを知ると解釈してよいのではなかろうか。

 Forbesが指摘する過去150年間の資本主義体制に反してリサイクルへの関心が高まりを見せる最近の風潮も、温故知新といっていいのかもしれない。

 古くから伝わる工芸品や民芸品のなかにも、SDGsのヒントがたくさん隠されていると解釈したほうが良さそうな気もする。

 

 

 美濃焼の産地で生産者たちが進める「グリーンライフ21・プロジェクト」を日経ビジネスが紹介している。

 それによれば、不要になった陶磁器(食器)を回収、それらを粉砕したものを新たな土と混ぜ、焼き物に使う原料としてリサイクルし、Re-食器を製造しているという。

 そして、低価格化や輸入品などの影響を受け続けてきた陶磁器業界だが、SDGsを追い風に注目を集めるRe-食器は一つの光明になる可能性も秘めていると指摘する。

 脈々と引き継がれてきた日本文化の中に、実はSDGsに通じるものがある。たとえば木製のおもちゃもそうではなかろうか。かつては大量に輸出さえていたとも聞く。今流にいえば、カーボンニュートラルなおもちゃだったということではなかろうか。

 伝統工芸や民芸に学ぶ温故知新。伝統をただ墨守するのではなく、そこにある永遠の真理の今日的意味を探る、現代の火にかけて新しい味わいを問い直すといってもいいのだろう。そこからSDGsの意味を知ることができるのかもしれない。