Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

「実質ゼロ」を目指す豪資源会社と因循姑息な国内石炭火力発電

 

 オーストラリアでは、温室効果ガス排出量の4分の1以上を鉄鋼やアルミニウム、液化天然ガス、その他の金属と化学物質などを扱うサプライチェーンが占めているという。そのサプライチェーンの川上にはこれらの産業に原料を供給する資源会社がある。

 BHPグループ、鉄、石炭、ボーキサイトなど様々な金属や鉱産品を取り扱う世界最大の鉱業会社である。

 Wikipediaによれば、2001年にオーストラリアのブロークンヒルプロプライエタリー・カンパニー(BHP) とイギリスの会社で南アフリカで大規模に操業するビリトン (Billiton) が二元上場会社となることにより形成され、2018年11月に社名をBHPビリトン(BHP Billiton)からBHPグループに改称したという。

 電機メーカで調達の仕事をしていたとき、鉄鋼メーカとの価格交渉時にその名をよく聞かされた。直接交渉することはなかったが、鉄鋼メーカの資料には必ず出てくる会社名であった。

 

 

 

豪英資源大手BHPグループ 2050年 温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す

 鉄鋼は、石炭を多量に使い、温室効果ガスを多量に排出して作られる。その原料を供給するBHPもまた、「気候危機」の原因の一端を作っている会社と思っていた。そのBHPグループがGHG温室効果ガスの排出削減に取り組むと発表した。2030年までに2020年と比較して30%の二酸化炭素の排出量の削減を目指し、最終的には2050年にスコープ1とスコープ2の排出量を「実質ゼロ」にする目標を設定したという。

 この先10年間は優先的に、発電に関連する排出量の削減に取り組む。既に、チリの銅鉱山2か所では、2020年代半ばまでに100%再生可能エネルギーに移行させ、クイーンズランド州の事業では、電力を風力と太陽光発電由来のものに変更し、電力使用による排出量を2025年までに50%削減するという。

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  スコープ1の排出では、材料運搬トラックのディーゼルによる排出量が主な原因となっているが、この削減はより長期的なプロジェクトになると、BHPグループのサステナビリティ責任者であるグラハム・ウィンケルマン氏が、 オーストラリアンフィナンシャル・レビュー紙の取材で答える。

「これは主に、材料を大規模に移動するために必要な技術ソリューションが、機器メーカーや研究施設によってまだ開発途上にあるためです」

 水素の活用と電化、その他の低炭素燃料の使用は、スコープ1の排出削減に大きく貢献する可能性がある。

「私たちは、他の人と協力してそれらのスケジュールを加速する上で果たすべき役割を果たす」、とウィンケルマン氏は述べたという。  

 

 

 BHPはスコープ3での削減を視野には入れているのだろうか。顧客がBHPから購入した原料を使用するときに発生する排出量の削減は、直接制御することはできない。が、削減への協力とそのためのコラボは可能だとウィンケルマン氏は指摘しているという。 

www.afr.com

 

 「スコープ 3」とは、自社排出量以外の、原材料・商品の調達、配送、商品使用、廃棄過程からなるバリューチェーン全体から排出される温室効果ガスの排出量のことを指す。「ライフサイクルアセスメント(LCA)」という手法を活用して評価することができる。

 ちなみに、「スコープ1」は、自社での燃料使用や工業プロセスによる「直接排出」を指し、「スコープ2」は、エネルギー起源の間接排出を指す。自社購入した電気や熱の使用に伴う「間接排出」がそれにあたる。 

 

 

 欧州で検討が進む国境炭素税とライフサイクルアセスメント(LCA

 欧州では、その「スコープ3」を重視した政策の検討が進んでいるという。

原材料の採取などを含む製品の寿命全体で二酸化炭素(CO2)排出量を評価する「ライフサイクルアセスメント(LCA」規制も圧力の手段だ。

電気自動車(EV)は走行時の排出はゼロだが、生産段階で出た排出量も規制対象に加える考え方だ。導入の実現に向けた議論が内部で進んでいる。

いずれも石炭を大量消費してつくられた鉄鋼や電力を使えば、4億5千万人を抱えるEU市場に輸出しにくくなる。 (出所:日本経済新聞

 

 コロナ禍をきっかけに脱炭素社会に移行する流れが加速するが、それに逆行するような動きが目立つのがアジアだと日本経済新聞は指摘する。世界の国別二酸化炭素排出量で上位を占めるのは中国をはじめ、インドや日本に韓国、インドネシアなど、アジアの排出減なくして、温暖化防止はあり得ないという。

 EUはそうした国々に環境対策を促す意味でも圧力を強める姿勢を見せているという。

 6月下旬の(EUと)中国との協議では「2050年以降のできるだけ早い時期に温暖化ガス排出の実質ゼロを実現してほしい」と中国首脳に環境対策を強化しながら景気回復をめざす重要性を説いた。 (出所:日本経済新聞

www.nikkei.com

 

 BHPもこうした欧州の動きを無視しえなくなっているということなのだろうか。

 

 

排出低減効果はどのくらいか? 奇策に動き出す国内の石炭火力発電

 国内では、非効率石炭火力発電のフェードアウト(段階的に減らす)政策に電力大手が法律の抜け道「奇策」を着々と進めているという。

 日本経済新聞によれば、2016年に定めた省エネルギー法の運用では、石炭の一部にバイオマスなどの燃料を使用すると、発電効率を見かけ上アップさせることでき、「高効率石炭火力」に変えられるという。この方法に電力各社が注目し、その準備を進めているようだ。

バイオマス混焼のための設備投資で省エネ法の目標達成を果たす」(中国電力)、「敦賀火力で15%に混焼を拡大」(北陸電力)とバイオマス混焼による効率アップを強調した。 (出所:日本経済新聞

r.nikkei.com

 

 エネルギーの安定供給は重要なことではあるが、因循姑息な手段で、LCA ライフサイクルアセスメントで評価した際はどの程度の効果があるのだろうか。温室効果ガスの排出が低減されなければ意味がない。

 こうしたことが、欧州などの輸入規制に抵触し、結果的に日本の競争力を弱めることになるのであれば、本末転倒と言わざるを得ない。インフラ事業者として矜持はあるのだろうか。

 

 

 「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

「参考文書」

www.businessgreen.com

 

 

欧州が導入しようとする「国境炭素税」を学ぶ

 

 ブルームバーグが米石油メジャーのエクソンモービルの内部文書を入手、その中身を公表した。

 2025年までに二酸化炭素排出量が17%増加

 気候危機といわれる時代において、まだこんな予測をする会社がある。エクソンモービル二酸化炭素の排出量が世界で最も多い企業の1社だという。

 

気候危機に背を向ける米エクソンモービル

 ブルームバーグが今回確認した文書によれば、2018年からの7カ年投資計画では2100億ドル(約22兆1800億円)におよび投資が計画され、それによって見込まれる直接の排出量について、エクソンモービルが注意深く調査していたことを示しているという。

この投資により二酸化炭素排出量は年2100万トン増える見込みで、増加量は再生可能エネルギーの展開や二酸化炭素貯留など同社の取り組みの効果をはるかにしのぐ。 (出所:ブルームバーグ

 

www.bloomberg.co.jp

 

「事後反応型経営」と「事前反応型経営」

 資本配分の失敗、資本を他の用途の振り向けるべきが来ても、経営者が月並みな基幹ビジネスに巨額の支出を続けてしまうこと

 著名な投資家ウォーレン・バフェットは、「近視眼的な経営者は、資本の配分をしくじりやすい」と言った。エクソンモービルのCEOは、この言葉を知っているのだろうか。

 

コロナ渦で、脱炭素化への流れに弾みがついたかと思われたが、やはり抵抗勢力はいることを改めて知る。それが現実ということなのかもしれない。みなが脱炭素を共有できていれば、もう少し社会の雰囲気に変化があるということなのだろう。

 

 

 

欧州で検討が進む「国境炭素税」 

 欧州では、2023年1月から「国境炭素税」の導入を目指し検討が始まっているという。

国境炭素税は「国境炭素調整措置」とも呼ばれ、環境対策が十分でない国に対し、輸入関税を引き上げる構想。

温暖化ガスの排出規制が緩い国では、企業負担も軽く、欧州に安価な製品が流入しやすい。事実上の関税上乗せにより内外価格差を解消し、税収も増やすところに狙いがある。 (出所:日本経済新聞

 

 EUは50年に温暖化ガスの排出を実質ゼロとする目標を掲げる。日本経済新聞によれば、欧州企業はその目標に向けて生じる負担増には一定の理解を示しているという。

 翻って日本、経団連が「チャレンジ・ゼロ」の方針を示し、脱炭素化に向けて動き出したかのように見える。そうであっても、日本経済新聞は、「鉄鋼や石炭は日本から欧州への輸出は多くないが、対象が自動車などに広がると影響は無視できない」という。

 

世界貿易機関WTO)は原則、差別的な貿易制限措置を認めておらず、排出量の測り方など技術的な課題も多い。

ただ欧州では脱炭素を巡り、日本の姿勢に批判的な見方も多く、日本企業が標的になるリスクもある。 (出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

 

 成功の秘訣をひとつあげるとすれば、それは他人の観点を探りあてた上で、自分と他人の双方の観点から物事を眺める能力を習得することだろう (ヘンリーフォード)

 

 今、気候変動という問題はどういうポジションにあるのだろうか。誰がこの問題に果敢に取り組み、誰がそれに抵抗しているのだろうか。

  いくら堅固な要塞を築いても最後には陥落するというのが古今東西の戦史という。守勢に回ったら勝ち目はないということだろう。 

 いつまでも抵抗を続けるよりは、早めに流れに乗ってしまったほうが得られる利益やメリットが大きい。

 

 

 

 英ガーディアン紙も提言する「炭素税」

過去6か月間、私たちの社会を完全に脱炭素化することは技術的に可能であり、比較的安価であり、社会、特に繁栄の少ないセクターに大きな利益をもたらす可能性があるという認識が世界中で高まっていますと英ガーディアン紙は指摘する。

 その上で、9つの施策を提言し、脱炭素化を通して英国経済を変革できるという。その提言の一つに「炭素税」がある。参考になったりしないだろうか。

 

炭素排出につながるものすべての生産に税金を課すことによって、消極的な石油およびガス産業を支援するよう努めるべきです。

過去に、企業がより重い課税を要求されることはめったにありません。(出所:ガーディアン)

 

 しかし、今日、ほとんどすべての大規模な化石燃料会社は、石油やガスの採掘をやめるために必要なインセンティブを提供する炭素税を求めていると、ガーディアン紙はいう。「脱石油」宣言した英石油メジャーBPのことを指しているのだろうか。BPの戦略から考えれば、「炭素税」はウエルカムなのかもしれない。

 

www.theguardian.com

 

 

 

 まとめ

 日本も地球温暖化対策税という名目で炭素税を課しているが、税率が低く十分な効果が期待できないと日経スタイルは指摘する。

「例えば石炭火力発電は安価ですが、温暖化ガスを多く排出するという負の側面を持っています。炭素税を課すことで価格を上げれば、消費量を減らし、排出量の少ないエネルギーに移行することが可能になります」 (出所:日経スタイル)

 

 日経スタイルによれば、欧州などでは炭素税を上げる一方で法人税所得税社会保障負担を減らす取り組みが進んでいるという。温暖化対策と経済活性化という『二重の配当』を得られる政策として注目が集まっているという。

 

style.nikkei.com

 

 炭素税は鉄鋼などエネルギーを多量に使用する産業には一時的にはマイナスになる可能性があるが、一方で、重くなった税負担を軽減していくためには技術革新が必要不可欠になる。国内にも欧州同等程度の炭素税の考えがあってもいいのかもしれない。

 それは、欧州が「国境炭素税」を導入した際にその税を回避することにつながっていくかもしれないし、そして何より、それによってさらなる温室効果ガスの排出の低減につながれば何よりではなろうか。

 

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【脱炭素】水素燃料電池のトヨタとミドリムシ バイオ燃料のユーグレナが動く

 

 コロナ渦が起きてすっかり技術動向も変わってしまったということはないのだろうか。それまでのモビリティの世界は「CASE(=Connected コネクテッド, Autonomous 自動運転, Shared & Services シェアリングとサービス, Electric電気自動車)」が声高々に叫ばれ、自動運転やMaaSなどの人の移動に関わることがその中心にあった。しかし、このコロナで移動が制限され、その状態からの出口は一向に見えてこない。

 ある意味、今までは人の移動を中心した経済だったのかもしれない。株価こそ好調ではあるが、経済そのものは急激に悪化、様々な施策が繰り出されている。技術トレンドに変化があってもおかしくないのかもしれない。

 

 

 

 欧州でグリーンリカバリーの機運が高まり、コロナからの復興予算の4割近くを気候変動対策に充てられる。カリフォルニア州では大規模な山火事が発生し、今までにない被害状況だという。カリフォルニアの州知事は山火事の原因は気候変動だとし、そうしたことの影響もあってのことだろうか、ガソリンエンジンを動力とする乗用車とトラックの州内での新車販売を2035年から禁止する方針を示したという。EV電気自動車への移行を促進し、温室効果ガス排出量の削減を図ることが狙いだとロイターは報じた。

 こうした状況からすれば、気候変動の緩和策につながることに技術開発の中心が移ることは必然なのかもしれない。

 

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トヨタ 燃料電池技術で大型トラックや鉄道車両を共同開発

 トヨタが相次いで燃料電池車関係の発表を行っている。北米向けの燃料電池大型トラックをトヨタと日野で共同で開発するという。北米で販売されている日野の大型トラック「XLシリーズ」をベースに、トヨタのFCV燃料電池技術を組み合わせるという。2021年前半に試作車を開発し、24年までに量産化を目指すそうだ。

  トヨタと日野は国内向けでも共同開発する。今年3月に航続距離600kmになる燃料電池大型トラックを共同開発することを発表していた。

 

global.toyota

 

 トヨタは、燃料電池大型トラック共同開発を発表した同じ6日、水素を燃料とする燃料電池と蓄電池を電源とするハイブリッドシステムを搭載した鉄道用試験車両の開発についても発表した。

 こちらは、JR東日本日立製作所の3社で連携して開発を進めるという。2022年3月ころから、鶴見線南武線尻手支線、南武線(尻手~武蔵中原)などで試験運転されるという。

 

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global.toyota

 

 

 

ユーグレナ バイオ燃料の開発加速 

 ユーグレナが進めるバイオジェット燃料事業と燃料用微細藻類に関する研究開発が、NEDO 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の公募事業「バイオジェット燃料生産技術開発事業/実証を通じたサプライチェーンモデルの構築、微細藻類基盤技術開発」に採択されたとがユーグレナが発表した。

 ユーグレナによれば、バイオ燃料製造実証プラントの運転費用、商業化に向けた事業検討費、燃料用微細藻類の培養に関する実証設備への投資や運転費用等について、NEDO助成金を活用していくという。2025年中のバイオ燃料製造商業プラントの稼働開始に向け、原料調達から燃料製造技術、燃料供給までの一貫したサプライチェーンの整備、燃料用原料となる微細藻類生産における技術確立を加速させるという。

 

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www.euglena.jp

 

 まとめ

 ここ最近、一気に水素に注目が集まるようになってきた。エアバスの水素旅客機などがその顕著な例なのかもしれない。水素を利用した燃料電池であれば、二酸化炭素を排出することもないので、普及すれば温暖化抑制の一助になっていくのであろう。

 しかし、世界は広い。現実としては、地球の隅々までに普及するまでには膨大な時間が必要になるのだろう。その普及するまでの間は今ある車両が使い続けられることになる。それは、今ある気候変動の問題を引き起こした設備をこれからも使い続けることを意味する。そうした状態から少しでも二酸化炭素の排出を抑制するためには、バイオ燃料の活用が望ましい。

 ユーグレナには助成金を有効活用して、一刻も早くその普及に努めて欲しいと願うばかりだ。

 

 

「関連文書」

www.businessinsider.jp

 

「参考文書」

jp.reuters.com

 

 

 

ライバル テスラの背中が遠のく 電動トラックの二コラはなぜ躓いたか

 

 テスラのライバルになると目された二コラが騒動を起こしている。空売り会社のヒンデンブルク・リサーチ(Hindenburg Research)に詐欺だと非難され、株価が下落、創業者トレバー・ミルトン氏が辞任に追い込まれた。そればかりでなく、GMやBPとの提携話まで延期になってしまったという。ブルームバーグは初期投資たちの懸念を伝える。

フィデリティ・インベストメンツをはじめとする投資家は、大きな野望や自慢話を口にする二コラ創業者トレバー・ミルトン氏には、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)のようにビジョンを製品として現実化する力が欠けていると懸念していた。 (出所:ブルームバーグ

 

www.bloomberg.co.jp

 

 創業者が辞任したということは、その懸念を払拭できないばかりか、ほかにも何か不都合なことがあったのだろうか。

 今後が気になる。米証券取引委員会(SEC)や司法省が調査に乗り出していると聞く。その結果待ちということなのだろうか。

 

 

 

不正を暴くヘッジファンドの存在と空売り

 最近では、ヘッジファンドが企業の不正を暴き、それに乗じてヘッジファンドが多額の利益を上げケースがあるという。独決済大手ワイヤーカードや英衣料品大手のブーフーなどがその例だ。日本経済新聞は、「企業の裏面を調査するのが得意なヘッジファンドが本気になれば、同様の不正が暴かれる機会も増える」という。

 ブーフーは適正と考えられる賃金の半分しか工場労働者に支払っていないことが暴かれ、「現代奴隷」と揶揄されたうえ、株価が暴落したという。

 

r.nikkei.com

 

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二コラの競争優位性とは

 テスラの成功はあまりにも鮮烈だ。ポジティブなニュースが続く。そうしたことに影響されてしまうのだろうか。二コラを過大評価し、提携しようと考えるのか、米自動車のGM、英石油メジャーBPなどに加え、欧州や韓国の企業が出資や協業するという。

 二コラは水素自動車の商用化をなるべく早く実現するため、革新的な技術の開発よりもプラットフォームとしての位置付けを強化、水素やバッテリーの充電ステーションを建設することが二コラの優位性とForbesは指摘する。

 

 

 

ニコラはGMから新型バッテリーシステム「アルティウム」と燃料電池「ハイドロテック」の供給を受ける予定だった。また、GMはニコラのピックアップトラック「Badger」の設計、認証、検証、製造を行う予定だった。 (出所:Forbes)

 

forbesjapan.com

 

 欧州では独ダイムラーが、2023年から一部顧客向けのトライアルとして、走行距離1000km以上の燃料電池大型トラックの運用を始めるという。日本経済新聞によれば、日本でも、日野自動車トヨタ自動車と、いすゞもホンダとそれぞれ共同開発を始めているという。長距離輸送の脱炭素を実現する本命技術として、FCVの開発競争が激しくなっているという。

 

r.nikkei.com

 

 テスラが登場したときかなり競争環境が異なりそうだ。

 それでも、二コラは集めた資金で、アリゾナ州に工場を建設し、大規模水素ステーションを整備、2021年までに電動トラック「Tre」の製造などを予定しているという。

 

 

 

 テスラは順風満帆か、ウォルマートがEVトラック大量予約、モデル3にはコバルト不使用バッテリーも

 テスラの話題は尽きない。ウォルマート・カナダが、テスラ(Tesla)の18輪電動トラックの予約注文数を当初の3倍以上の130台に増やしたとBusiness Insiderが伝える。テスラは当初、セミトラックを2019年に発売すると述べていたが、2021年に納車を開始すると変更しているという。それでもテスラへの期待が予約注文ということになるのだろうか。

 ロイターはテスラが、コバルトを含まないリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池を搭載した中国製のEVセダン「モデル3」の販売を開始する構えだと報じた。ロイターによれば、LFPは、EV用電池に使用する最も高価な金属の1つであるコバルトを使用しないため、より安価に製造でき、既存の電池と比べて「2桁台%」低いという。

 

jp.reuters.com

 

 LFP電池の採用は、コバルトの使用を「ほぼゼロ」にするというイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が2018年に表明した約束の実現も後押しするとロイターは指摘する。

 

 多少の修正はあるにせよ、何事も有言実行することがイーロン・マスクということであろうか。創業者が退場した二コラは、テスラの背中を追うことができるのだろうか。

 

 

「関連文書」

www.businessinsider.jp

 

dsupplying.hatenablog.com

バイオテクノロジーの世界 ユーグレナが目指す「人と地球の健康」

 

  西武バスが、ミドリムシユーグレナ社のバイオディーゼル燃料を採用、路線バスに使い始めている。

 普通のディーゼルエンジンで使えることがこのバイオ燃料のメリットだが、まだ価格が高価ということもあるのだろうか、通常の軽油と混合して使用しているようだ。毎日新聞によれば、通常のディーゼル燃料で走るより二酸化炭素排出量が10%削減できるという。混合比率が上がれば、もう少し二酸化炭素の排出を削減できるのだろうか。

 

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 西武ライオンズの若獅子寮から出る廃食用油(月約60リットル)をユーグレナの燃料製造に提供し、西武バスは、燃料増産に合わせて使用車両を増やしていくと毎日新聞は伝える。

 

mainichi.jp

 

 

 

バイオテクノロジーミドリムシの可能性 

 今からおよそ5億年以上前に大気中の酸素濃度を上昇させ、生物に急速な進化と多様性をもたらした立役者ミドリムシ。体長約0.05mmと髪の毛の直径よりも小さく、植物と動物両方の性質を持つと、日経BP未来コトハジメは説明する。

 この稀有な生物が持つ力を借り、バイオテクノロジーによって食品からバイオ燃料までを作り出そうとしているのがユーグレナだ。ミドリムシの力を「5F」に応用し事業化する。「5F」とは、Food(食糧)、Fiber(繊維)、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)、Fuel(燃料)を指す。

 ミドリムシの豊富な栄養素を「食糧」に活かし、ミドリムシにしかない成分パラミロンは「繊維」に活かす。燃料はミドリムシの脂質から作ることができる。燃料製造で出る残渣は、その成分であるタンパク質を活かして飼料・肥料として販売できるという。

 ただ、燃料を石油代替とするためには、1リットルで100円前後という価格を目指さなければならないという。 これに反し「食糧」はマーケティングなどによって価値を高められる可能性があるという。

 

project.nikkeibp.co.jp

 

 

 

ミドリムシユーグレナマーケティング会社

 そう言ったのはユーグレナ社の取締役副社長 永田暁彦氏。Agenga noteのインタービューで答えた内容だ。

ミドリムシ」、この言葉を聞いたことがある人は90%。「ユーグレナ」、という言葉を聞いたことがある人は50%。全世代に向けた認知率調査の結果だ。 (出所:Agenga note)

 

 和名では「ミドリムシ」というが、英名は「ユーグレナ」。そのユーグレナが社名になっている。

 ミドリムシ、「小学校の理科の授業で、顕微鏡をのぞくと動いていた緑色の微生物」と、Agenga noteの記事筆者は説明する。「食べたり、何か別の用途に使ったり出来る、という認識はありませんでした」という。 

 

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  意外にそういう人が多いのかもしれない。 

人間のカラダがユーグレナを摂取すると、どんな効果が得られるのか、という便益に対する理解を上げていくために、ヒト臨床試験などを行い、ファクトづくりを強化し、メディアで情報を受け取った人の納得感を高めるよう、PRと広告で発信するという活動を地道に行っている。 (出所:Agenga note)

 

agenda-note.com

 

 そうした地道な活動に加え、ユーグレナは、バングラディシュでユーグレナ入りクッキーを無償で配布、子どもたちの栄養問題の解決を目指すプログラムを展開する。そのプログラムが始まったのは2014年、SDGsが国連で採択される前のことだ。ユーグレナ製品の売上の一部をこのプログラムの協賛金にあて、ユーグレナクッキーを寄贈する。そして、その数が1000万食に達したという。

 

www.euglena.jp

 

人と地球の健康」がユーグレナ社の目標と聞く。こうした活動で、その目標に一歩近づいているのかもしれない。

 西武バスなどが利用が始まったバイオディーゼル燃料が普及すれば、CO2の排出を抑制し温暖化対策に役立っていく。普及するようであれば、大規模設備につながり価格は下がるかもしれない。飛行機、船舶、トラックなどに今のままで使用できる燃料と聞く。多くの人がこのことを知れば、もう少し普及しないだろうか。

  それまでは、ユーグレナの地道な活動が続くということなのだろう。

 

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EVの未来予想図 中国北京モーターショーとテスラの「バッテリー・デー」 

 

 中国北京市で26日、 世界最大級の自動車展示会 北京モーターショー2020が始まったという。AFPによれば、今年の北京モーターショーは「知恵で未来をけん引」をテーマに、世界初公開車82台、コンセプトカー36台、新エネルギー車160台を含む785台を展示するという。

 AFPが伝えた写真をみると、トヨタは自動運転のEV「イーパレット」を展示し、中国自動車大手、中国第一汽車集団は、来年7月から量産が始まる「紅旗スマート2.0ミニバス」を展示、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)も「スマートコックピットソリューション」を展示しているようだ。

 

www.afpbb.com

 

 その展示規模からすれば、中国の自動車熱がまだまだ高そうだ。

 

 

 

テスラ 電池内製化と260万円のEV構想

 テスラは、北京モーターショーに先立って22日、株主総会を開き、それに続いて「バッテリー・デー」というイベントで、電池事業の今後について説明をした。 

 テスラとイーロン・マスクにはただ驚かされる。というか、ほんとうはそうあるべきなのかもしれない。 3年後、260万円のEVを販売し、そのためにバッテリーを内製するという。

 「値ごろなEVを発売することは、会社設立以来の我々の夢だった

イーロン・マスクが22日の「バッテリー・デー」で語ったと日本経済新聞が伝える。このイベントでは、電池事業の今後について説明もしたようだ。

 

大幅な価格低下を可能にするのが、EVコストの約3割を占めるとされるリチウムイオン電池の内製化だ。

テスラは22日、パナソニックなど外部から供給を受けてきた中核部品の円筒形セルについて、2022年にEV140万台分に相当する年間100ギガ(ギガは10億)ワット時を自社生産する計画を示した。

現在のパナソニックからの購入量の約3倍の規模だ。 (出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

 

 一方、ブルームバーグは「技術や製造の革新に関する説明は印象的だったが、テスラの突発力は既に時価総額に反映されており、期待の高かった今回のイベントでサプライズがなかったことに投資家は失望しているのではないか」という。確かに、このイベントの後、テスラの株価は一時7%下落した。

  

www.bloomberg.co.jp

 

 

 

中国EVメーカトップにとっての、テスラの「バッテリー・デー」

 ブルームバーグによれば、北京国際自動車ショーでは、むしろテスラのこうした計画の実現に期待を寄せる声があったという。

 威馬汽車(WMモーター)最高経営責任者の沈暉氏はテスラの計画は「われわれにとって良いことだ」と述べたという。

テスラが中国に進出してとても喜んでいる。テスラはまさに初期のアップルのようで、市場全体を教育してくれる

中国携帯電話市場では、アップルのシェアを小米やオッポ(OPPO)、華為技術(ファーウェイ)など地元勢が奪っている。沈氏はEV市場においても長期的にはテスラに同じことが起こると予想。「主流」EV市場でのテスラのシェアは5-10年で大きく減るとの見方を示した。 (出所:ブルームバーグ

 

www.bloomberg.co.jp

 

 EV市場がまだ5%未満ということもあるのか、小鵬汽車の顧宏地副会長は、テスラが上海工場の生産能力を今後数年以内に年100万台に拡大する計画は懸念材料ではないと語ったとブルームバーグが伝える。

 イーロン・マスクCEOが「100万台を達成するとすれば、われわれの予想より市場がずっと速いペースで大きく成長したことを意味する」と話す言葉に期待を寄せているのかもしれない。蔚来汽車(NIO)の李斌CEOは「総体的な電池コストの低下はEV普及の手助けになる」と語ったという。

 

 

 

需要が復調 

 EVを含めた新エネルギー車の販売は今年6月まで1年余りにわたって前年同月比で減少を続けてきたという。だが、今年7月は19.3%増と反転し、8月には26%も増えたと、ロイターは需要が復調したという。

LMCオートモティブの予想では、新エネルギー車の乗用車の販売は今年8.9%減少するが、来年は48.4%増えて152万台に達し、全乗用車販売の7%を占めそうだ。 (出所:ロイター)

 

jp.reuters.com

 

  こうしたのことの証左になるのだろうか、北京モーターショーでは、新エネルギー車の展示が160台になっているようだ。

 

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国内のEV化は進展していくのか

 翻って国内、中国と多少温度差があるのだろうか。国内のEV動向はどうなのだろうか。昨年、トヨタが「100年に一度の変革期」といい、「CASE」が本格化的に動きだすようかに思われた。オリンピックが開催されていれば、その場で、「CASE」が実現する世界を見ることができたのかもしれない。

  

dsupplying.hatenablog.com

 

 コロナ渦で、自動車業界の苦境を伝えるニュースが多い。構造改革に目が奪われがちだ。日産は、国内ではEV関連車種を追加し電動化率を60%以上にするという。さらに、2023年度までには年間100万台以上の販売を目指すという。国内のEVは加速するのだろうか、それとも、最優先市場中国から浸透を狙うということになのだろうか。

 自動車業界の未来予想図がそろそろ気になりだす。テスラが引き起こしている追い風に乗ることはできるのだろうか。

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

 

 

 

【SDGsと水資源】 垂直農業で挑む「水節約」と「ゼロエミッション」

 

 海外記事を読んでは、世界のあちらこちらで、未来を危惧し、行動を起こす人たちがいると気づく。

 東南アジアでは、海洋に流出するプラごみの多さを憂い、問題を提起し、活動する人々を紹介する記事が多いと感じる。地域ごとに、現代の矛盾とでいえそうな、それぞれの問題を抱える。しかし、その背景には、コロナ渦や気候変動による異常気象の影響など、世界共通の課題がありそうだ。

 

www.malaymail.com

 

 

インドの水危機と垂直農業

 インドでは、「水資源」に危機を感じ、垂直農業にチャレンジするベンチャーがあるとTechCrunchが伝える。

 「深刻な干ばつにより、インドの一部地域では河川や貯水池の水が流出し、世界第2位の人口を誇るこの国の5億人以上の人々が2030年までに飲料水を使い果たすと推定されている」。

 衝撃的なことだ。少子化が進み、水が豊富な日本では考えられない。

 

 

 

 インドでその垂直農業に挑むのは、UrbanKisaan(アーバンキサーンス)というスタートアップ。 大量に水を消費しているインドの農業に一石を投じることはできているのだろうか。

「作物を育てるために土壌や有害な化学物質を一切使用せず、従来の農場に比べて水の使用量を95%削減しています。水が流れ続け、何度も何度もリサイクルされるような水耕栽培システムを構築しています。より少ない水を使っているにもかかわらず、UrbanKisaanは30%以上の作物を生産しています」と最高経営責任者であるVihari Kanukollu(ビハリ・カヌコル)氏が説明するとTechCrunchが紹介する。

  

jp.techcrunch.com

 

  かつて、中国黄河では、大量の水が農業用に汲み上げられ、下流域で水が途絶えるという断流問題がおきた。世界では、こうした水資源に関わる問題が絶えないようだ。

 

欧州初のゼロエミッションを目指す都市型垂直農業

 国内では、紀ノ国屋が、都市型垂直農業を展開する独Infarm(インファーム)製の水耕栽培装置を店内に導入、その装置で作られた野菜の販売を始めたという。

 

dsupplying.hatenablog.com

  

 垂直農業とは、高さのある建築物の階層や、傾斜面をつかって農業をすることをいう。Ideas for Goodによれば、平たい畑や温室などで野菜を栽培する代わりに、都会の超高層ビルや、輸送用コンテナ、使われなくなった倉庫などで、高さを利用して垂直的に農作物を生産することをいうそうだ。従来の農業のように広い土地がいらず、都市でも食物を生産できることが特徴的だという。

 

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 Techcrunchによると、Infarm製の垂直農法ユニットは、モジュール式でIoTを搭載しているという。

土壌ベースの農業よりも使用するスペースが99.5%少なく、水の使用量も95%少なく、輸送量も90%少なく、化学農薬もゼロであると主張している。

また、Infarmのネットワーク全体で使用する電力の90%は再生可能エネルギーを使用しており、同社は来年にはゼロエミッションの食品生産を達成する目標を掲げている。 (出所:TechCrunch)

 

 今はまだハーブや葉菜類の栽培になっているが、近い将来、根菜類、キノコ類、花卉(かき)類、さらには世界中のスーパーフードにまで拡大することができるとInfarmはそういうとTechCrunchが紹介する。

 

jp.techcrunch.com

 

 

 

ファミマが植物工場産野菜の普及に動く

 国内では、コンビニの総菜などで、植物工場産の葉菜類が多く使われていると聞く。ファミリーマートが、その植物工場産の野菜の普及に向け、バイテックベジタブルファクトリー(VVF)と協業するという。

 流通ニュースによると、ファミリーマートは2015年4月から植物工場で栽培された野菜を導入し始め、その使用量は、導入当初と比較し約60倍となっているという。

 

植物工場の野菜は、閉鎖された環境で栽培を行うため、天候や災害による影響を受けにくく、一年を通して安定した供給が可能となる。虫がつかないため農薬を使用する必要がなく、安全・安心であることが特徴となっている。また、野菜の洗浄などの手間も少なく済むことから、省力化・省資源化につながる。捨てる部分が少ないことからフードロスも最小限に抑えられ、環境負荷も軽減できる。 (出所:流通ニュース)

 

www.ryutsuu.biz

 

まとめ 垂直農業の可能性

 Infarm製のモジュール式水耕栽培装置があれば、様々な展開が期待できそうな気がする。都会はもちろんのこと、太陽光とのセットであれば、食糧危機にある地域に設置することはできないのだろうか。また、そうした地域で、新たな雇用を生みだすことができたりしないだろうか。

 国内では、今年、異常気象の煽りで、野菜高騰が頻発した。植物工場や都市で垂直農業が広がれば、野菜の価格安定に役立つのかもしれない。

 

 

「参考文書」

ideasforgood.jp