テスラのライバルになると目された二コラが騒動を起こしている。空売り会社のヒンデンブルク・リサーチ(Hindenburg Research)に詐欺だと非難され、株価が下落、創業者トレバー・ミルトン氏が辞任に追い込まれた。そればかりでなく、GMやBPとの提携話まで延期になってしまったという。ブルームバーグは初期投資たちの懸念を伝える。
フィデリティ・インベストメンツをはじめとする投資家は、大きな野望や自慢話を口にする二コラ創業者トレバー・ミルトン氏には、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)のようにビジョンを製品として現実化する力が欠けていると懸念していた。 (出所:ブルームバーグ)
創業者が辞任したということは、その懸念を払拭できないばかりか、ほかにも何か不都合なことがあったのだろうか。
今後が気になる。米証券取引委員会(SEC)や司法省が調査に乗り出していると聞く。その結果待ちということなのだろうか。
不正を暴くヘッジファンドの存在と空売り
最近では、ヘッジファンドが企業の不正を暴き、それに乗じてヘッジファンドが多額の利益を上げケースがあるという。独決済大手ワイヤーカードや英衣料品大手のブーフーなどがその例だ。日本経済新聞は、「企業の裏面を調査するのが得意なヘッジファンドが本気になれば、同様の不正が暴かれる機会も増える」という。
ブーフーは適正と考えられる賃金の半分しか工場労働者に支払っていないことが暴かれ、「現代奴隷」と揶揄されたうえ、株価が暴落したという。
二コラの競争優位性とは
テスラの成功はあまりにも鮮烈だ。ポジティブなニュースが続く。そうしたことに影響されてしまうのだろうか。二コラを過大評価し、提携しようと考えるのか、米自動車のGM、英石油メジャーBPなどに加え、欧州や韓国の企業が出資や協業するという。
二コラは水素自動車の商用化をなるべく早く実現するため、革新的な技術の開発よりもプラットフォームとしての位置付けを強化、水素やバッテリーの充電ステーションを建設することが二コラの優位性とForbesは指摘する。
ニコラはGMから新型バッテリーシステム「アルティウム」と燃料電池「ハイドロテック」の供給を受ける予定だった。また、GMはニコラのピックアップトラック「Badger」の設計、認証、検証、製造を行う予定だった。 (出所:Forbes)
欧州では独ダイムラーが、2023年から一部顧客向けのトライアルとして、走行距離1000km以上の燃料電池大型トラックの運用を始めるという。日本経済新聞によれば、日本でも、日野自動車はトヨタ自動車と、いすゞもホンダとそれぞれ共同開発を始めているという。長距離輸送の脱炭素を実現する本命技術として、FCVの開発競争が激しくなっているという。
テスラが登場したときかなり競争環境が異なりそうだ。
それでも、二コラは集めた資金で、アリゾナ州に工場を建設し、大規模水素ステーションを整備、2021年までに電動トラック「Tre」の製造などを予定しているという。
テスラは順風満帆か、ウォルマートがEVトラック大量予約、モデル3にはコバルト不使用バッテリーも
テスラの話題は尽きない。ウォルマート・カナダが、テスラ(Tesla)の18輪電動トラックの予約注文数を当初の3倍以上の130台に増やしたとBusiness Insiderが伝える。テスラは当初、セミトラックを2019年に発売すると述べていたが、2021年に納車を開始すると変更しているという。それでもテスラへの期待が予約注文ということになるのだろうか。
ロイターはテスラが、コバルトを含まないリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池を搭載した中国製のEVセダン「モデル3」の販売を開始する構えだと報じた。ロイターによれば、LFPは、EV用電池に使用する最も高価な金属の1つであるコバルトを使用しないため、より安価に製造でき、既存の電池と比べて「2桁台%」低いという。
LFP電池の採用は、コバルトの使用を「ほぼゼロ」にするというイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が2018年に表明した約束の実現も後押しするとロイターは指摘する。
多少の修正はあるにせよ、何事も有言実行することがイーロン・マスクということであろうか。創業者が退場した二コラは、テスラの背中を追うことができるのだろうか。
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