米GE 石炭火力発電から撤退 それが意味すること
「米GE、石炭火力発電から撤退へ」との共同通信の報道に驚く。GE、米電機大手ゼネラル・エレクトリックは、あのトーマス・エジソンを祖とする。
世界初の商用発電所は、トーマス・エジソンにより建設され、1882年9月から稼働したニューヨーク・マンハッタンのパール・ストリートの火力発電所であった。当時の動力は石炭燃料による175HPの往復動式蒸気機関であった。電灯需要地に近いエリアへ直流送電するため都市内に建設されたものである。 (出所:Wikipedia)
それが後の大型火力発電所へとつながっていく。
祖業からの撤退を決めることは難しい決断になるのだろう。英断なのかもしれないが、発電機事業から撤退するわけではなさそうだ。
国際的に批判の的になった、ベトナム中部の「ブンアン2 石炭火力発電所」。このプロジェクトは三菱が主体となり、日本の銀行も融資することで検討されていた。このプラントを作るのは米GE、中国企業が据え付け工事を行うことで予定されていた。
このプロジェクトに影響はあるのだろうか。
欧州の石油メジャーは「脱石油」へ
欧州では、石油メジャー、ロイヤル・ダッチ・シェルが、石油・ガス生産コストを最大40%削減することを検討しているという。ロイターによると、経費節約で事業を見直し、再生可能エネルギーと電力市場へさらに重点的に取り組むという。
シェルはメキシコ湾、ナイジェリア、北海を含む主要拠点に生産能力を絞ることを検討。液化天然ガス(LNG)事業などのガス部門でも大幅なコスト削減を想定している。中でも、流通や販売を担う「下流部門」での削減は今後の移行計画実行において重要な意味を持つという。 (出所:ロイター)
欧州の石油メジャーは「脱石油」の流れが加速する。BPに続き、シェルも再生エネルギーへの移行を急ぐことになった。
こうした企業の動きを後押しているのが、EUの「グリーンリカバリー」政策なのだろうか。脱炭素社会への移行を着実にすすめようとする欧州の姿がそこにある。
EUは、2050年に温室ガス排出を「実質ゼロ」にする方針を法制化する「欧州気候法案」の成立を目指している。時事通信によれば、2030年までに温室効果ガスを1990年比で55%減(現行40%減)させる目標をその法案に反映させるという。
また、欧州委は、新型コロナウイルス禍からの経済再建として来年以降、7500億ユーロ(約92兆円)の巨額資金のうち、37%を気候変動対策に投じる方針も表明しているという。域内の水素エネルギー活用を拡大する「欧州水素バレー」構想も打ち出したという。
フランスの国家水素戦略
フランスでは、政府が国家水素戦略を発表したそうだ。JETROによれば、この国家水素戦略では、水電解によるクリーン水素製造セクターの創出と製造業の脱炭素化、クリーン水素を燃料とする大型モビリティ(トラック、バス、列車、船舶、航空機などの輸送機器)の開発、水素エネルギー分野の研究・イノベーション・人材育成支援、の3つの柱からなるという。2020~2023年に約34億ユーロを拠出するが、このうち54%が製造業の脱炭素化、27%がクリーン水素モビリティ開発、19%が研究・イノベーション・人材育成に充てられるという。
世界初 エアバスのゼロエミッション旅客機コンセプト
この動きに倣ってのことだろうか、エアバスが、世界初となるゼロエミッション旅客機のコンセプトを発表した。
2035年、世界初のゼロ・エミッションの民間航空機が空を飛ぶかもしれない。
このビジョンを現実にするために、エアバスはZEROeと呼ばれる革新的なコンセプトの航空機の開発を模索しているという。
(写真出所:エアバス公式サイト)
エアバスによれば、航空機には、水素推進と水素燃料電池の2種類があるという。エアバスのゼロエミッション「コンセプト」航空機は水素ハイブリッド航空機になるそうだ。つまり、液体水素を燃料として燃焼させる改良型ガスタービンエンジンを搭載し、同時に、水素燃料電池を使用してガスタービンを補完する電力を生成し、高効率のハイブリッド電気推進システムを実現するという。
(写真出所:エアバス公式サイト)
独ダイムラーは燃料電池トラックを発表
陸上輸送では、独ダイムラーが、走行距離1千キロメートル以上の燃料電池トラックを開発し、2023年から一部顧客向けにトライアルを始めると発表したと日本経済新聞が伝える。
欧州では、2035年までに中型トラックの55%、大型トラックの75%をそれぞれゼロエミッション車とする規制があるという。
地球温暖化の最前線 北極海の異常
北極海の海氷が今年の夏季、42年間の観測史上2番目に小さい面積にまで融解したことが明らかになったと AFPがいう。
地球温暖化の深刻な影響を示す新たな証拠という。
欧州が脱炭素を進める以上に、地球の温暖化が加速しているのかもしれない。
手遅れになる前に、国際社会が一致した行動を起こさなければならないのだろう。
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