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「実質ゼロ」を目指す豪資源会社と因循姑息な国内石炭火力発電

 

 オーストラリアでは、温室効果ガス排出量の4分の1以上を鉄鋼やアルミニウム、液化天然ガス、その他の金属と化学物質などを扱うサプライチェーンが占めているという。そのサプライチェーンの川上にはこれらの産業に原料を供給する資源会社がある。

 BHPグループ、鉄、石炭、ボーキサイトなど様々な金属や鉱産品を取り扱う世界最大の鉱業会社である。

 Wikipediaによれば、2001年にオーストラリアのブロークンヒルプロプライエタリー・カンパニー(BHP) とイギリスの会社で南アフリカで大規模に操業するビリトン (Billiton) が二元上場会社となることにより形成され、2018年11月に社名をBHPビリトン(BHP Billiton)からBHPグループに改称したという。

 電機メーカで調達の仕事をしていたとき、鉄鋼メーカとの価格交渉時にその名をよく聞かされた。直接交渉することはなかったが、鉄鋼メーカの資料には必ず出てくる会社名であった。

 

 

 

豪英資源大手BHPグループ 2050年 温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す

 鉄鋼は、石炭を多量に使い、温室効果ガスを多量に排出して作られる。その原料を供給するBHPもまた、「気候危機」の原因の一端を作っている会社と思っていた。そのBHPグループがGHG温室効果ガスの排出削減に取り組むと発表した。2030年までに2020年と比較して30%の二酸化炭素の排出量の削減を目指し、最終的には2050年にスコープ1とスコープ2の排出量を「実質ゼロ」にする目標を設定したという。

 この先10年間は優先的に、発電に関連する排出量の削減に取り組む。既に、チリの銅鉱山2か所では、2020年代半ばまでに100%再生可能エネルギーに移行させ、クイーンズランド州の事業では、電力を風力と太陽光発電由来のものに変更し、電力使用による排出量を2025年までに50%削減するという。

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 スコープ1の排出では、材料運搬トラックのディーゼルによる排出量が主な原因となっているが、この削減はより長期的なプロジェクトになると、BHPグループのサステナビリティ責任者であるグラハム・ウィンケルマン氏が、 オーストラリアンフィナンシャル・レビュー紙の取材で答える。

「これは主に、材料を大規模に移動するために必要な技術ソリューションが、機器メーカーや研究施設によってまだ開発途上にあるためです」

 水素の活用と電化、その他の低炭素燃料の使用は、スコープ1の排出削減に大きく貢献する可能性がある。

「私たちは、他の人と協力してそれらのスケジュールを加速する上で果たすべき役割を果たす」、とウィンケルマン氏は述べたという。 

 

 

 

 BHPはスコープ3での削減を視野には入れているのだろうか。顧客がBHPから購入した原料を使用するときに発生する排出量の削減は、直接制御することはできない。が、削減への協力とそのためのコラボは可能だとウィンケルマン氏は指摘しているという。

 

www.afr.com

 

 「スコープ 3」とは、自社排出量以外の、原材料・商品の調達、配送、商品使用、廃棄過程からなるバリューチェーン全体から排出される温室効果ガスの排出量のことを指す。「ライフサイクルアセスメント(LCA)」という手法を活用して評価することができる。

 ちなみに、「スコープ1」は、自社での燃料使用や工業プロセスによる「直接排出」を指し、「スコープ2」は、エネルギー起源の間接排出を指す。自社購入した電気や熱の使用に伴う「間接排出」がそれにあたる。

 

 

 

 欧州で検討が進む国境炭素税とライフサイクルアセスメント(LCA

 欧州では、その「スコープ3」を重視した政策の検討が進んでいるという。

原材料の採取などを含む製品の寿命全体で二酸化炭素(CO2)排出量を評価する「ライフサイクルアセスメント(LCA」規制も圧力の手段だ。

電気自動車(EV)は走行時の排出はゼロだが、生産段階で出た排出量も規制対象に加える考え方だ。導入の実現に向けた議論が内部で進んでいる。

いずれも石炭を大量消費してつくられた鉄鋼や電力を使えば、4億5千万人を抱えるEU市場に輸出しにくくなる。 (出所:日本経済新聞

 

 コロナ禍をきっかけに脱炭素社会に移行する流れが加速するが、それに逆行するような動きが目立つのがアジアだと日本経済新聞は指摘する。世界の国別二酸化炭素排出量で上位を占めるのは中国をはじめ、インドや日本に韓国、インドネシアなど、アジアの排出減なくして、温暖化防止はあり得ないという。

 EUはそうした国々に環境対策を促す意味でも圧力を強める姿勢を見せているという。

 

 6月下旬の(EUと)中国との協議では「2050年以降のできるだけ早い時期に温暖化ガス排出の実質ゼロを実現してほしい」と中国首脳に環境対策を強化しながら景気回復をめざす重要性を説いた。 (出所:日本経済新聞

 

 

www.nikkei.com

 

 BHPもこうした欧州の動きを無視しえなくなっているということなのだろうか。

 

 

 

排出低減効果はどのくらいか? 奇策に動き出す国内の石炭火力発電

 国内では、非効率石炭火力発電のフェードアウト(段階的に減らす)政策に電力大手が法律の抜け道「奇策」を着々と進めているという。

 日本経済新聞によれば、2016年に定めた省エネルギー法の運用では、石炭の一部にバイオマスなどの燃料を使用すると、発電効率を見かけ上アップさせることでき、「高効率石炭火力」に変えられるという。この方法に電力各社が注目し、その準備を進めているようだ。

バイオマス混焼のための設備投資で省エネ法の目標達成を果たす」(中国電力)、「敦賀火力で15%に混焼を拡大」(北陸電力)とバイオマス混焼による効率アップを強調した。 (出所:日本経済新聞

 

r.nikkei.com

 

 エネルギーの安定供給は重要なことではあるが、因循姑息な手段で、LCA ライフサイクルアセスメントで評価した際はどの程度の効果があるのだろうか。温室効果ガスの排出が低減されなければ意味がない。

 こうしたことが、欧州などの輸入規制に抵触し、結果的に日本の競争力を弱めることになるのであれば、本末転倒と言わざるを得ない。インフラ事業者として矜持はあるのだろうか。

 

 

 「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

「参考文書」

www.businessgreen.com