Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

欧州が導入しようとする「国境炭素税」を学ぶ

 

 ブルームバーグが米石油メジャーのエクソンモービルの内部文書を入手、その中身を公表した。

 2025年までに二酸化炭素排出量が17%増加

 気候危機といわれる時代において、まだこんな予測をする会社がある。エクソンモービル二酸化炭素の排出量が世界で最も多い企業の1社だという。

 

気候危機に背を向ける米エクソンモービル

 ブルームバーグが今回確認した文書によれば、2018年からの7カ年投資計画では2100億ドル(約22兆1800億円)におよび投資が計画され、それによって見込まれる直接の排出量について、エクソンモービルが注意深く調査していたことを示しているという。

この投資により二酸化炭素排出量は年2100万トン増える見込みで、増加量は再生可能エネルギーの展開や二酸化炭素貯留など同社の取り組みの効果をはるかにしのぐ。 (出所:ブルームバーグ

 

www.bloomberg.co.jp

 

「事後反応型経営」と「事前反応型経営」

 資本配分の失敗、資本を他の用途の振り向けるべきが来ても、経営者が月並みな基幹ビジネスに巨額の支出を続けてしまうこと

 著名な投資家ウォーレン・バフェットは、「近視眼的な経営者は、資本の配分をしくじりやすい」と言った。エクソンモービルのCEOは、この言葉を知っているのだろうか。

 

コロナ渦で、脱炭素化への流れに弾みがついたかと思われたが、やはり抵抗勢力はいることを改めて知る。それが現実ということなのかもしれない。みなが脱炭素を共有できていれば、もう少し社会の雰囲気に変化があるということなのだろう。

 

 

 

欧州で検討が進む「国境炭素税」 

 欧州では、2023年1月から「国境炭素税」の導入を目指し検討が始まっているという。

国境炭素税は「国境炭素調整措置」とも呼ばれ、環境対策が十分でない国に対し、輸入関税を引き上げる構想。

温暖化ガスの排出規制が緩い国では、企業負担も軽く、欧州に安価な製品が流入しやすい。事実上の関税上乗せにより内外価格差を解消し、税収も増やすところに狙いがある。 (出所:日本経済新聞

 

 EUは50年に温暖化ガスの排出を実質ゼロとする目標を掲げる。日本経済新聞によれば、欧州企業はその目標に向けて生じる負担増には一定の理解を示しているという。

 翻って日本、経団連が「チャレンジ・ゼロ」の方針を示し、脱炭素化に向けて動き出したかのように見える。そうであっても、日本経済新聞は、「鉄鋼や石炭は日本から欧州への輸出は多くないが、対象が自動車などに広がると影響は無視できない」という。

 

世界貿易機関WTO)は原則、差別的な貿易制限措置を認めておらず、排出量の測り方など技術的な課題も多い。

ただ欧州では脱炭素を巡り、日本の姿勢に批判的な見方も多く、日本企業が標的になるリスクもある。 (出所:日本経済新聞

 

www.nikkei.com

 

 成功の秘訣をひとつあげるとすれば、それは他人の観点を探りあてた上で、自分と他人の双方の観点から物事を眺める能力を習得することだろう (ヘンリーフォード)

 

 今、気候変動という問題はどういうポジションにあるのだろうか。誰がこの問題に果敢に取り組み、誰がそれに抵抗しているのだろうか。

  いくら堅固な要塞を築いても最後には陥落するというのが古今東西の戦史という。守勢に回ったら勝ち目はないということだろう。 

 いつまでも抵抗を続けるよりは、早めに流れに乗ってしまったほうが得られる利益やメリットが大きい。

 

 

 

 英ガーディアン紙も提言する「炭素税」

過去6か月間、私たちの社会を完全に脱炭素化することは技術的に可能であり、比較的安価であり、社会、特に繁栄の少ないセクターに大きな利益をもたらす可能性があるという認識が世界中で高まっていますと英ガーディアン紙は指摘する。

 その上で、9つの施策を提言し、脱炭素化を通して英国経済を変革できるという。その提言の一つに「炭素税」がある。参考になったりしないだろうか。

 

炭素排出につながるものすべての生産に税金を課すことによって、消極的な石油およびガス産業を支援するよう努めるべきです。

過去に、企業がより重い課税を要求されることはめったにありません。(出所:ガーディアン)

 

 しかし、今日、ほとんどすべての大規模な化石燃料会社は、石油やガスの採掘をやめるために必要なインセンティブを提供する炭素税を求めていると、ガーディアン紙はいう。「脱石油」宣言した英石油メジャーBPのことを指しているのだろうか。BPの戦略から考えれば、「炭素税」はウエルカムなのかもしれない。

 

www.theguardian.com

 

 

 

 まとめ

 日本も地球温暖化対策税という名目で炭素税を課しているが、税率が低く十分な効果が期待できないと日経スタイルは指摘する。

「例えば石炭火力発電は安価ですが、温暖化ガスを多く排出するという負の側面を持っています。炭素税を課すことで価格を上げれば、消費量を減らし、排出量の少ないエネルギーに移行することが可能になります」 (出所:日経スタイル)

 

 日経スタイルによれば、欧州などでは炭素税を上げる一方で法人税所得税社会保障負担を減らす取り組みが進んでいるという。温暖化対策と経済活性化という『二重の配当』を得られる政策として注目が集まっているという。

 

style.nikkei.com

 

 炭素税は鉄鋼などエネルギーを多量に使用する産業には一時的にはマイナスになる可能性があるが、一方で、重くなった税負担を軽減していくためには技術革新が必要不可欠になる。国内にも欧州同等程度の炭素税の考えがあってもいいのかもしれない。

 それは、欧州が「国境炭素税」を導入した際にその税を回避することにつながっていくかもしれないし、そして何より、それによってさらなる温室効果ガスの排出の低減につながれば何よりではなろうか。

 

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