Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

コロナ禍で半導体競争激化 戦いの行方

 

 かつて半導体は「産業のコメ」と言われ、日本企業は世界の半導体市場を席巻した。米調査会社ICインサイツによると国別の半導体シェアで日本は1990年に49%を握っていた。投資判断の遅れや事業再編などで後手に回り、韓国や台湾企業の攻勢を受け、2018年には7%まで落ち込んだ。米ガートナーが発表する世界の半導体企業上位10社からも、2018年に日本メーカーの名前はなくなった。

 今、世界の半導体製造をリードするのは、台湾と韓国だ。ここに中国が加わってきている。米中対立の激化の影響もあるのだろう。

 昨年末には、半導体製造装置市場として、2021年には中国が最大規模になるだろうとの予測があったが、ファーウェイ制裁の影響で、中国製半導体が今後さらに増えていくことになるのだろうか。

business.nikkei.com

 

 

中国

 NEC日立製作所の部門が統合して設立されたエルピーダメモリ(現マイクロンメモリジャパン)は2012年に経営破綻した。その時の社長を務めていた坂本幸雄氏が、昨年末、中国のメモリー大手紫光集団の高級副総裁に就任したという。 

中国は米国などに半導体調達を依存している状況から脱却するため、半導体国産化を進める方針を掲げる。だが18年には量産開始目前だったDRAMメーカー、福建省晋華集成電路が米制裁の対象となり、事業が頓挫。

半導体は米中対立の争点の一つとなっている。 (出所:SankeiBiz

www.sankeibiz.jp

 

 半導体の受託生産では、現在台湾TSMCが世界シェアの半分ほどを握っている。ここにサムスンが真っ向勝負をかけると日本経済新聞が昨年10月に伝えていた。この半導体の受託生産分野でも、中国が力をつけ始めているのだろうか。

 東洋経済オンラインは、「中国「半導体受託生産」にファーウェイ制裁の影 「SMIC」子会社に国策ファンドが2420億円出資」と報じる。

中国の半導体受託生産(ファウンドリー)大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)が、生産拡大や製造プロセスのアップグレードを急ぐのは、以前は海外のファウンドリーに向かっていた半導体の生産委託の需要が国内にシフトしつつあることが背景にある。

興業証券の調査レポートによれば、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)傘下の海思半導体(ハイシリコン)など中国の半導体設計会社が、調達上のリスクヘッジや中国政府の国産化戦略などを考慮して生産委託の一部をSMICに振り替えている。(出所:東洋経済オンライン)

toyokeizai.net

 

 

ハイテク冷戦

 米国が、「ファーウェイおよび関連企業への輸出管理を強化、米技術を用いた外国製造製品も対象」と日本貿易振興機構JETROが伝える。

5月15日以降、次の2つの形態に該当する製品をEL掲載のファーウェイと関連企業114社に再輸出などを行う場合は、事前に米国商務省産業安全保障局(BIS)の許可が必要となる。

1.ファーウェイなどにより生産された半導体設計などで、CCLに掲載されているソフトウエア・技術を用いて生産された直接製品。

2.ファーウェイなどの設計仕様に基づいて生産されたチップセットなどで、米国外にある工場もしくは工場の主要な装置を用いて生産された直接製品。

ただし、BISはファーウェイなど向けに再輸出などが行われることを認知していた場合のみ許可を要するとしている。また、5月15日の時点で、既にファーウェイなどの設計仕様に基づき生産を始めている場合で、その完成品の再輸出などを行う際は、5月15日から120日以内であれば許可を求めない。 (出所:JETRO

www.jetro.go.jp

 

 日本経済新聞は、この規制を受け、「ファーウェイは主力のスマートフォンも含め、幅広い事業・製品の部品調達を見直す必要に迫られており今後、製品の開発や生産に支障が出る可能性がある」と指摘する。

 

www.nikkei.com

 

 英国もファーウェイの規制強化に乗り出すのだろうか。ロイターが「英国は、次世代通信規格「5G」や他のテクノロジー関連機器の供給で、中国依存を回避するため、民主主義の10カ国から成る連合の形成を目指している」と伝える。

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 米中間で「ハイテク冷戦」も激化しているようだ。 

 この冷戦で気がかりがある。半導体製造装置において、日本メーカの世界シェアは高い。東京エレクトロンアドバンテストは、中国半導体メーカーに最先端装置を輸出しているといい、中国リスクがあるとの指摘もある。 

一方で、レーザーテックは2世代程度前のマスク欠陥検査装置を輸出しているのみなので、大きなリスクはないと思われます。ディスコは、中国民族系、中国外資系(サムスン中国工場など)、OSAT(後工程専門業者)など顧客が分散しているため、これも大きな中国リスクはないと思われます。 (出所:トウシル)

 もっとも、アメリカの対中規制強化によってファーウェイのスマートフォンの販売シェアが落ちたとしても、シャオミ、オッポなどの他の中国スマホメーカーや、サムスン、アップルのシェアが向上すれば、半導体需要と半導体設備投資には問題が起こらない可能性はあるともトウシルは指摘する。そんな単純に割り切れるだろうか。

 

media.rakuten-sec.net

 

 米中「ハイテク冷戦」、米国側につくだけが戦略ではないように思う。それでは対立に巻き込まれるばかりだ。この手の話において、米国追従ではなく、そろそろ独自路線があってもいいのではないかと思う。

 関連する世界的なメーカーが日本にも多く存在している。 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenadiary.com

 

「参考文書」

jp.reuters.com

www.nikkei.com

 

対立激化 デカップリングする世界 東西冷戦の再来なのか

 

 ビフォーコロナでは、気候変動やSDGsが地球規模の課題になっていた。それに加え、世界は今コロナ危機のさなかにある。そう思えば、最近の米中のいざこざはあまりいただけないような気がする。何故、こうも対立するのかと思う。大国同士の覇権争い、メンツ争いが根底なのであろうか。対立する分野は多岐にわたっている。

 

 日本経済新聞は、「米中、技術覇権争いに拍車 ファーウェイへの制裁強化 他国企業にも影響必至」との記事で、ファーウェイへの制裁強化について解説する。

 日本経済新聞によれば、米商務省は19年5月、ファーウェイを安全保障上問題のある企業を並べた「エンティティー・リスト」に追加し、米国製の部材やソフトウエアの輸出を事実上禁じたという。コロナ問題で棚上げされていたファーウェイへの制裁が強化されるのではと指摘する。

 

www.nikkei.com

 

 その理由は、「中国人民解放軍北朝鮮、イランに米国技術が流れるとの懸念」があるからという。

 米ソが激しく対立した東西冷戦期を思い出す。対立構図は今のよう米中対立のように、そんなに複雑ではなかったように思う。当時「ココム規制」なるのものがあり、輸出制限があり、共産圏以外への輸出でも煩わしい手続きがあった記憶がある。

 また、そんな時代に逆戻りしてしまうのだろうか。

 

 

 

 そんな中で、台湾 新竹サイエンスパークに本社を構える半導体製造ファウンドリのTSMCがうまい立ち回りを見せているという。

TSMCは米の禁輸規制強化を受けて「米国のルール変更に従う」とのコメントを出した。一方「外部の弁護士と分析して解釈を確認する」といい、ファーウェイとの取引停止が必要か最終的な確認を行うもようだ。台湾の業界関係者の間では、TSMCが同日に米政府の要求に応じ新工場建設を表明したことで規制強化を回避できるとの期待も出ていた。 (出所:日本経済新聞))

 

 ロイターによれば、「米国の新工場が稼働しても、生産はTSMC全体の3-4%に過ぎず、収益率には重しになるかもしれない。しかし、この大型投資は、米中2大市場の顧客基盤を守るためには、TSMCがこれほど多額であっても喜んで支出しようとすることを浮き彫りにする。バーンスタインのアナリストは、TSMCが過去に中国で行ってきた工場進出でも同様の戦略が取られていたとし、今回の投資決定と合わせ「米国と中国の間で同社が、バランスを取ろうとしていることを示唆する」と指摘したという。

 

jp.reuters.com

 

 台湾の新竹市にあるサイエンスパークを最初に訪れたのは、もう何年も前のこと。そこは台湾のシリコンバレーと呼ばれる地だ。何度も通いうちに、台湾のハイテク企業と米国ハイテクの企業との結びつきの強さを感じた。

 台湾の玄関口桃園国際空港では、よく広東語が耳にし、香港便の多さに驚いた。台湾と香港の往来の多さから、その結びつきを感じたりしていたことを思い出す。

  

 

 

 香港問題が再燃している。香港国家安全法をめぐり、米政府は香港の自治失われたと公式に判断したようだ。

 香港が米中対立の前線となったといいうことだろうか。これに新疆ウイグル自治区の人権侵害問題も絡む。

 

www.bloomberg.co.jp

 

 一方で、台湾政府は、TSMCとはまた別の動きを見せる。 

 ロイターは、台湾の蔡英文総統が、香港の人々に「必要な援助」を提供すると表明したと伝える。

 

jp.reuters.com

 

 Newsweekは、香港が英国の統治下にあったときの最後の提督クリス・パッテン氏の言葉を紹介する。

パッテンはイギリス政府に対し、「私たちが目にしている事態は、共同声明を完全に破壊するものだ」と考えるべきだと主張。共同声明とは1997年の香港返還の際にイギリスと中国の間で交わされた合意文書だ。これによれば香港は「一国二制度」の下で少なくとも2047年までは自治を維持できることになっている。 (出所:Newsweek

 

www.newsweekjapan.jp

 

 新型コロナという人類共通の感染症問題に立ち向かわなければならない今、こうした二国間のデカップリング問題に世界が巻き込まれてしまう。

 

 政治とはいったい何であろうかと考えてしまう。

 

 ビジネスを通してだが、香港人、台湾人、中国人と多くの知り合いがいる。ビジネスを超えてよき仲間だと感じる。しかし、そこに国家とか政治が絡むと、その絆にも影響を及ぼす。

 

人類の歴史を対立の歴史として簡単に片づけてしまってはいけないのだろう。

 かつて、東西冷戦は、ソ連ゴルバチョフ、米国レーガン、英国サッチャーが協奏することで終結した。 

 

アフターコロナでは、この両国の動きに翻弄されることを避けなければならない。世界が協力することが今求められているはずだ。

 

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 「関連文書」

jp.reuters.com

 

dsupplying.hatenadiary.com

 

ポストコロナとコラプソロジー やめた方がいいものもあるのではないか

 

 ビフォーコロナでも、米中の貿易摩擦はあったが、このコロナによって、米中の摩擦が先鋭化していないかと心配になる。

 先日、開催となった全人代で、 李首相は「われわれは中米経済・貿易合意の第1段階の履行に米国と共に取り組む。中国は相互利益の実現に向け他の国との経済・貿易上の協力を引き続き強化する」と表明したという。

 

www.bloomberg.co.jp

 

 しかし、その一方で、米中での様々なやり取りが報道される。

ロイターは、米国の動きを「現職の当局者や元当局者によると、商務省および他の政府機関は、調達と製造の双方を中国から他の地域に移すよう企業に働き掛ける方法を模索。税制優遇措置や国内回帰に向けた政府補助などが検討されている」と報道する。

 

jp.reuters.com

 

 イギリスでも、ジョンソン首相が、新型コロナウイルス危機の観点から必要不可欠な医療用品などの調達について、中国への依存をやめる計画を立てるよう政府内に指示したとロイターが伝える。この他にも、次世代通信規格「5G」の通信網構築で、華為(ファーウェイ)の参入を制限する方針だともいう。

コードネームで「Project Defend」と呼ばれるこの計画はラーブ外相が主導。国家安全保障上の新たなアプローチの一環として、敵対する可能性のある外国政府に対して英国経済のどこが脆弱かを特定するという。 (出所:ロイター)

 

jp.reuters.com

 

 このコロナがきっかけで、何か、中国包囲網が形成されつつあるのだろうか。

 

 

 

「コラプソロジー崩壊学なるものがあるかしい。
 近年フランスで盛り上がる「産業文明の崩壊と、その後についての研究」のこととIdeas for Goodは説明する。

 多くの人が依存している化石燃料が枯渇し、気候変動による異常な気象がつづき、アンバランスな人口増加と減少がつづき、人の数が必要な食糧の量を超えてしまい、電気が使えなくなるなどして、人々これまで作り上げてきた文明が、人の手によって壊れるという考え方だそうだ(出所:Ideas for Good)。

 

 書籍「How Everything Can Collapse」の共著者で、環境保護活動家および農業技術者のパブロ・セルビーニュ氏は、「歴史の…そしてヨハネの黙示録に記される四騎士の大いなる教訓は、疫病、戦争、飢餓がそれぞれの結果として、連続して起きる傾向にあるということだ」と指摘しているとAFPが伝える。

「今はパンデミックが起きている。それはさらに次の事象──戦争や紛争、飢餓につながりかねない」

「そして飢餓は、別のパンデミックに対してわれわれをいっそう脆弱(ぜいじゃく)にする」 (出所:AFP BB NEWS)

 

 

www.afpbb.com

 

 あまり穏やかな学問ではないような気もする。コロナパンデミックが拡大し、米中の覇権争いがさらに激化しようにみえる。

 

選択肢を考えるチャンス

 現在の危機は私たちに新自由主義的な資本主義に代わる別の選択肢を考えるチャンスを与えている。そう語るのは、著名な哲学者で社会学者のブリュノ・ラトゥール氏だ。

 ラトゥール氏は自身のブログで、「コロナ危機の後、以前と同じところからスタートさせないよう」世界は気を付けなければならないと主張する。

「多くのものが強制的に中断させられたが、これを機に、やめた方がいいものとさらに発展させるものとを吟味すべき」

(出所:AFP BB News)

 

 縄張り争いやリーダー争いばかりを繰り返してばかりでは、他の生物と何ら変わりがない。人類は考える力を身に着け、智慧を手に入れた。それが他の生物との違いであろう。

 あまり過激にならないほうがいいのではないか。

 日本はそんな争いに巻き込まれて欲しくない。

 それよりは知恵を駆使して、地球の住人としてすべての人々が助け合い、協力し合う方が人間らしいと思う。

 

 

「関連文書」

jp.reuters.com

jp.reuters.com

 

「参考文書」

ideasforgood.jp

 

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ポストコロナ 存続し続ける企業の特徴は何なのか

 

 また、コロナの影響が明るみに出る。タイ航空が破産法に基づく会社更生手続きとのニュースが流れる。会社更生手続きを申請するのはタイ政府だそうだ。

 米国では、航空会社は連邦政府からの救済措置で、従業員の解雇や一時帰休命令、給料削減は禁じられているという。が、ユナイテッド航空は、従業員保持義務の期間が終わればすぐに人員削減に踏み切るようで、10月1日に解雇通知を受ける見通しとForbesが伝える。

 米国では、対応が冷淡で配慮に欠けているのかもしれない。ウーバーも大量解雇に踏み切り、その対応をForbesがレポートする。 

 

forbesjapan.com

 

 

 国内では、老舗アパレル「レナウン」が破綻した。破綻すべくして破綻したとの意見が多い。バブル期の成功体験があだになり、その後、改革が進まず、コロナが引き鉄になったようだ。

 時事通信が指摘する「時代に対応できず」という言葉がすべてを表しているのかもしれない。

 小郡の小さな洋品店だったユニクロが、グローバル企業に成長している。国内市場規模は小さくなったが、こうした成功事例があるのだから、老舗企業は時代に乗り遅れたということなのだろうか。

 

www.jiji.com

 

 ユニ・チャームやライオンはコロナ特需で利益を大幅に伸ばすようだが、多くの企業は深刻な影響を受けている。

 自動車産業もその影響は深刻のようだ。ブルームバーグによれば、欧州の新車販売が、4月は78%減になったという。スペインでは、97%減と4100台をわずかに上回る水準だったといい、その数字に驚愕する。

 

www.bloomberg.co.jp

 

 先日、トヨタが業績発表を行った。コロナにより甚大な影響を受けるというが、それでも、次期は5000億円の営業利益を確保することを目標にするという。こんなに厳しい状況下で、達成できる数字なのかと勘ぐってしまう。

 

 日経XTECHがこの数字のからくりを解説する。

 トヨタは、次期の売上目標を24兆円としている。まず、この24兆円の妥当性がどうかという議論もあるかもしれないが、この売上をベースにすると、5000億円の利益を得るためには、1兆5000億円のコスト改善が必要になるという。

 日経XTECHによれば、リーマンショック時にも、トヨタはこうしたコスト改善を実施していたという。09年3月期には約1300億円の利益改善を行い、営業損失をミニマイズし、翌年には、営業利益は1475億円を確保し黒字化を果たしたという。このときは、原価改善で5200億円、固定費削減で4700億円の利益改善を達成したという。

  実は、トヨタが行う改善は地味なもので愚直に積み重ねていくという。

緊急VA(Value Analysis、価値分析)活動
新工場プロジェクトの中止・延期・規模縮小
生産調整による在庫の圧縮と、労務費低減策の実施
一般経費の徹底的な削減  (出所:日経XTECH)

 

 日経XTECHは、「真実は平凡の中にある」と指摘する。

 

xtech.nikkei.com

 

 

 

 何もトヨタが特別なことをやっているようではない。ただひたすら基本を繰り返し繰り返し実行しているということであろうか。それが、大きな利益につながり、その継続に繋がっていく。

  アパレルも同じものづくりの業界である。ものづくりの基本に大きな差などないのではなかろうか。

 

 電機会社で働いていたとき、「トヨタの生産方式」を学ばされた。地獄の研修といわれるものであったが、今から思えば、よいことだったとつくづく思う。

 研修の最初に叩き込まれたのが、「つくり方の固定概念を捨てよ」ということだった。そして、協働の大切を教え込まれ、改善は無限であることを知った。

 会社は何に為にあるのかと繰り返し問われ、利益を永続的に上げ、雇用を創出して、地域社会に貢献することを教わる。

 

 豊田社長も、先日の業績発表の場で雇用のことに触れた。

今の世の中、「V字回復」ということがもてはやされる傾向があるような気がしております。

雇用を犠牲にして、国内でのモノづくりを犠牲にして、いろいろなことを「やめること」によって、個社の業績を回復させる。それが批判されるのではなく、むしろ評価されることが往々にしてあるような気がしてなりません。 

「それは違う」と私は思います。

企業規模の大小に関係なく、どんなに苦しい時でも、いや、苦しい時こそ、歯を食いしばって、技術と技能を有した人財を守り抜いてきた企業が日本にはたくさんあります。 (出所:トヨタ プレスリリース)

 

 「企業は何のために存在するのか」、それが明確であれば、苦境にあっても抜け出ることができるということなのかもしれない。

 

 ソニーも社長が交代し、会社の存在意義、パーパスを定義した。そのソニーは何やらソニーらしさを取り戻したように思う。

 昨日、5月19日にソニーの「2020年度経営方針説明会」があった。ソニーは「ソニーグループ株式会社」に社名を変更するという。「ソニー株式会社」の商号は、ソニーグループの祖業であるエレクトロニクス事業を行うソニーエレクトロニクス株式会社が継承するという。

 

www.sony.co.jp

 

 コロナショックと言われるが、多くの企業が基本に立ち返り、お客様と従業員、そして、地域社会や地球を大切にすれば、この苦境も抜け出ることができるのではなかろうか。

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.comdsupplying.hatenadiary.com

dsupplying.hatenadiary.com

 

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世論調査に思う、「迷走」それも新しい日常なのかも

 

 コロナ関連のニュースは重苦しいものばかりだ。そこに政治が絡めば、なお一層のことだ。世界経済を蝕んでいるのは間違いなそうだし、なかなか明るい兆しが見えない。第2波のリスクを犯して、無理して移動制限を解除するが、人々はどこまで行動範囲を広げることができるのだろう。まだ、感染の不安を払拭しきれていないのかもしれない。

 

jp.reuters.com

 

 フランスに在住の作家 辻仁成さんの日記を読まさせていただいている。日本にいながらニュースでは知りえないフランスの様子を手に取るようい知ることができる。

 5月18日の日記には、マクロン仏大統領が病院を訪問したことが描かれていた。

 看護師2人がマクロン大統領を呼び止め、抗議したという。これに大統領も興奮気味に応酬、身振り手振りを交えて話をしていたという。しかし、看護師は引き下がらない。

「ヨーロッパの大国なのに道具もない、予算減らされ、ベッドも足りない。政治的な発言はいらないから、私たちの質問にあなたの言葉で具体的に答えてください。なんで私たちは2001年に期限が切れているマスク(FFP2タイプ、コロナを通さないマスク)を使わされてるの?」とかなりきつい言葉を投げつけたのだ。 

(出所:辻仁成さんの滞仏日記)

 マクロン大統領は一瞬、言葉を失ったという。長年低い給料で働かされてきたことへの、道具もなく戦わなければならない現状への抗議だったと辻さんはいう。

 

 

 

 ベルギーでも、病院を訪問した首相に抗議があったようだ。

こちらは無言の抗議だった。病院を訪問した首相一行の車列が到着すると玄関前に並んだその病院の医師、看護師、医療従事者たちが全員出向かえたのだ。ただし、全員が背中を向ける格好で。この映像はあまりに衝撃的であった。コロナ軍と予算も武器もなく戦う最前線の兵士たちの無言の抗議であった。 (出所:辻仁成さんの滞仏日記)

 

www.designstoriesinc.com

 

 日本の総理が病院を訪問したら、どうなるのだろうか。

 

 フランスの通信社AFPは、「新型コロナ、日本の政策は奏功しているのか?」という記事で、 

「事態に先回りして対処することが最初からできていない。コミュニケーションを効果的なものにすることができず、補佐役からのサポートも十分ではない」

と、総理の対応には「むらがある」と辛辣に指摘する。

 

 どの国も、政治的な発言ばかりで、対応のまずさは同じということだろうか。 

「(感染件数が少ないのは)政策的なものではない

そこではかりきれない、生活習慣とか、日本の行動のスタイルそういったもので一見そういうふうになってるだけなんじゃないか」とも付け加え、衛生観念やあいさつの仕方などを例に挙げた。 (出所:AFP BB News)

 

www.afpbb.com

 

 朝日新聞世論調査で、内閣支持率が前回調査から急降下33%になったという。

 

www.asahi.com

 

 当然の結果なのだろう。突然現れたコロナにみなが右往左往しているときに、「コロナ」と全く関係のないことを密かに進めようとするのだから、当然の報いなのかもしれない。

 世論調査の結果をみて、法案を取り下げたいうのならもう呆れるしかない。

 熟考もない,

赴くままにということなのだろうか。そうしたことを他者が見えれば、それを迷走と呼ぶ。

 それも「新しい日常」ということなのだろう。

  

 

 

 ニュージーランドでは、コロナから国民の生命を守ったアーダーン首相の支持が急上昇しているという。 

 59.5%、前回の調査から20.8ポイント上昇したという。 

 

 AFPが、アーダーン首相がカフェで入店を断られると報じる。何か微笑ましい。

ニュージーランド新型コロナウイルス対策で厳格な予防措置を敷いており、誰一人としてこの措置を免れる者はいない。ジャシンダ・アーダーン(Jacinda Ardern)首相も例外ではなく、自身が掲げたソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)の規則のためカフェへの入店を拒否された場面を目撃された。

 アーダーン首相と婚約者のクラーク・ゲイフォード(Clarke Gayford)さん、その友人らが16日、首都ウェリントンのカフェを訪れたところ、受け入れ可能な客数の上限に達しているとして入店を断られた。 (出所:AFP BB News)  

 

www.afpbb.com

 

  こうしたことが日常になれば、もっと政治が身近になるのかもしれない。

 

「参考文書」

www.reuters.com

 

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せっかちな国政 頼みは「知事たちの裁量」

 

 「政府、ビジネス渡航解禁を検討」と時事通信が伝える。少しばかり、せっかちすぎないかと感じてしまう。やはり、経済優先の考えなのだろうか。

 政府は新型コロナウイルス感染症の収束をにらみ、抗体検査やPCR検査によって非感染が確認されたビジネス渡航者に「陰性証明書」を発行し、中国などへの渡航を容認する方向で検討に入った。(出所:JIJI.COM)

 

www.jiji.com

 

 39県の緊急事態宣言が解除され、首相の記者会見があった。対象39県から漏れていたこともあってか、あまり興味がわかなかったが、会見内容をみて違和感があった。

 言葉の節々がどうしても気になってしまう。その内容を読み進めると、結局、経済のことしか考えていないように思えてならない。

 

「多くの地域における緊急事態宣言の解除によって、ここから、コロナの時代の新たな日常を取り戻していく。今日は、その本格的なスタートの日であります」と語り、

80を超える業界ごとに、感染予防のためのガイドラインが策定したという。

 

 その上で、「事業者の皆様にはこのガイドラインを参考に、事業活動を本格化していただきたい」と語った。

 

 どういう真意かはつかみかねるが、「本格化」という言葉に引っかかってしまった。

 感染予防に努め、事業を再開していくとか、事業再開の条件としてガイドラインの徹底があるとかではなく、事業活動を本格化との表現に戸惑った。まだ、経済の中心である首都圏と関西圏が解除に至っていない段階で....

 

 対象39県に対する「3つのお願い」は理解できたが、その後、2次補正予算関連の話が延々と続き、

「今、また感染拡大を予防しながら、同時に社会経済活動を本格的に回復させていく。新たな日常をつくり上げるという極めて困難なチャレンジに踏み出します。しかし、このチャレンジも国民の皆様の御協力があれば、必ず乗り越えることができる。私はそう確信しております」

という言葉で結んだ。

極めて困難なチャレンジ」という表現も、どうも引っかかってしまう。

 

 

 

  「アベノマスク」はまだ届かない

 

www.tokyo-np.co.jp

 

「特別定額給付金」の申請書も届かない

 

(5月13日付読売新聞)

www.yomiuri.co.jp

 

 それでも、さらに「極めて困難なチャレンジ」を強いるのですかと言いたくなる。

 せっかち過ぎていないだろうか。

 この内容なら、すべての都道府県の緊急事態宣言が解除されたタイミングが語ることではないのかと感じてしまう。

  今までの施策の問題点をレビューし、その上での2次補正予算との説明でなければ、何の効果があるのかと疑念が生じてしまう。

 

 その上、ニュース番組では、緊急事態宣言解除に戸惑う声もある。

 

 

 

  夏の甲子園が中止になりそうだ。まだ警戒を解くことができないということであろうし、学校現場での課題もあるようだ。

 

www.jiji.com

 

 夏山シーズン到来前に、山梨県は富士吉田口の登山ルートの閉鎖を決めた。

 

www.jiji.com

 


 何かちぐはぐになってはいないだろうか。

 

 

  ニッセイ基礎研究所が、緊急事態宣言の一部解除について解説する。

....とは言え、すぐさま人々の生活がコロナ以前に戻り、経済が力強いV字回復を果たすのは容易ではない。4月7日に7都府県を対象に緊急事態宣言が発出されてから、1か月以上が過ぎた。巣ごもり消費、オンラインサービス活用、テレワーク、「3密」を避ける行動など、我々の生活様式も変化しつつある。そして、完全にウイルスが終息していない中では、気軽に旅行やレジャー、外食も出来ないという人も多いだろう。

今回、緊急事態宣言が解除される県は、日本のGDPに占める割合でみると約5割を占める。東京圏や大阪圏が緊急事態宣言の対象になっている限り、経済の本格回復は見えてこない。緊急事態宣言が解除された39県についても、東京圏・大阪圏との人の往来(出張、旅行など)が制限される上、感染拡大防止に向けて「新しい生活様式」を引き続き徹底せざるを得ず、経済活動が元の水準にすぐさま戻るわけではない。日本経済のV字回復の道は、非常に厳しいと言わざるを得ない。 (出所:ニッセイ基礎研究所

 

www.nli-research.co.jp

 

 

 

 5月15日、小池都知事が記者会見を行い、「休業要請緩和の目安」について説明を行った。

 

www.businessinsider.jp

 

 ニッセイ基礎研究所は、「感染状況や医療体制などには地域差があり、社会や経済の状況も全く同じというわけではない。自粛の要請(施設の使用制限の要請など)は、地域における感染状況などに応じて、各都道府県の知事が適切に判断する必要があり、政府だけではなく、地方自治体及びその知事の役割も極めて重要になってくる」と指摘し、「今問われているのは、民主主義や地方分権の「真価」であると言うこともできるだろう」という。

 

 このコロナの対応を見ると、何人かの知事の行動には目に瞠るものがあったように思う。

 一方で、国政はどうなのであろうか。この機に及んで、検察庁法の改正を急ぐ必要があるのだろうか。

 何から何まで、せっかちにことを進めようとし過ぎていないか。


「急いては事を仕損じる」ともいう。

どこかでつけが回ってくることはないのだろうか。

 

 小池都知事は記者会見で、6月の都知事選について問われると、

「それどころではないというか、私はやはりこのコロナ対策をしっかり取り組むというのが現職としての最大の仕事でございますので、これに最大限注力をしていくということで、それに答えは尽きるというところです」

と答えていた。

 

 何事も優先順位がある。今解決すべき問題を何より優先すべきということであろう。

 

 

「関連文書」

dsupplying.hatenablog.com

  

 「参考文書」

www.kantei.go.jp

www.metro.tokyo.lg.jp

 

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トヨタが考えるSDGsの本質とは

 

 トヨタが業績発表を行った。多くの企業が今期の予想を見送る中、「通期予想あえて開示 再始動へ基準必要」と日本経済新聞が伝える。

 日経新聞によれば、「コロナで一瞬見えにくくなってはいるが、自動車業界の構造変化で電動化などCASE対応が必要なことには変わりなく、豊田社長も「未来への種まきについてはアクセルを踏み続けたい」と強調した」という。

 

www.nikkei.com

 

 豊田章男社長は、この業績発表の会見時に、SDGsのことについても触れていた。

 ・・・・世界中で、自分以外の誰かの幸せを願い、行動することができるトヨタパーソンを育てることだと思います。私流に言えば「YOUの視点」をもった人財を育てるということです。

これが、ウィズコロナ、アフターコロナの時代に向けて、私自身が全身全霊をかけて取り組むことだと思っております。

そして、これは、「誰ひとり取り残さない」という姿勢で国際社会が目指している「SDGs」、「持続可能な開発目標」に本気で取り組むことでもあると考えております。

人類に乗り越えられない危機はありません

(出所:トヨタ プレスリリース)

  

global.toyota

  

 

 

SDGsに関する調査から見えてくる生活者の意識変化

 電通が、第3回「SDGsに関する生活者調査」の結果を公表した。

 SDGsという言葉の認知が急上昇、認知率は29.1%、2019年2月の調査から13.1ポイント上昇しているという。学生の認知率は45.1%、前回調査24.8%から約20.3ポイントも上昇したという。 

 "ミニマリスト"や"シェアリングエコノミー"などの関心が高まり、個人の生活の質を高めるために社会の仕組みが大きく変化することへの期待も高まっているという。そうした生活行動の変化の中にはテレワーク(在宅ワーク)も含まれている。

在宅ワーク」と「シェアリングエコノミー」については、調査終了後に新型コロナウィルスの感染拡大がみられたため、現時点では大きく変化していると予想されると電通は指摘する。

 

www.dentsu.co.jp

  

上場企業で進むSDGs

 GPIF 年金積立金管理運用独立行政法人は、「第5回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表した。

 このアンケート調査は東証1部上場企業を対象にしている。この中で、SDGsの認知についても調査が行われたようだ。GPIFによれば、知っていると回答した企業がほぼ100%となり、取組みを始めている企業も6割を超えたという。

 取組みの際に参考にしているものとして、経済産業省の「SDGs 経営ガイド」が最も多く(49.8%)、次いでGRI国連グローバル・コンパクト(UNGC)と wbcsd による 「SDG Compass」(38.5%)、環境省の「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド」(36.9%)、経団連の「Society 5.0 for SDGs」(32.9%)などが多く挙げられたという。

 

「第5回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」の公表について (年金積立金管理運用独立行政法人)

 

 上場企業の多くがSDGsを認知しているにもかかわらず、いざ生活者となると、その認知率が29%に急減という見方があるのかもしれない。企業のSDGs活動が、消費者はもちろんのこと従業員も巻き込んでいないとも言える結果なのかもしれない。

  

 

 

豊田社長の使命

 豊田社長は、ウィズコロナ、アフターコロナの時代に向けて、

「自分以外の誰かの幸せを願い、行動することができる人財を育てる」ことが自身の使命だと語った。

 

 確かに、それがSDGsの本質なのかもしれない。

 

 

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