ビフォーコロナでは、気候変動やSDGsが地球規模の課題になっていた。それに加え、世界は今コロナ危機のさなかにある。そう思えば、最近の米中のいざこざはあまりいただけないような気がする。何故、こうも対立するのかと思う。大国同士の覇権争い、メンツ争いが根底なのであろうか。対立する分野は多岐にわたっている。
日本経済新聞は、「米中、技術覇権争いに拍車 ファーウェイへの制裁強化 他国企業にも影響必至」との記事で、ファーウェイへの制裁強化について解説する。
日本経済新聞によれば、米商務省は19年5月、ファーウェイを安全保障上問題のある企業を並べた「エンティティー・リスト」に追加し、米国製の部材やソフトウエアの輸出を事実上禁じたという。コロナ問題で棚上げされていたファーウェイへの制裁が強化されるのではと指摘する。
その理由は、「中国人民解放軍や北朝鮮、イランに米国技術が流れるとの懸念」があるからという。
米ソが激しく対立した東西冷戦期を思い出す。対立構図は今のよう米中対立のように、そんなに複雑ではなかったように思う。当時「ココム規制」なるのものがあり、輸出制限があり、共産圏以外への輸出でも煩わしい手続きがあった記憶がある。
また、そんな時代に逆戻りしてしまうのだろうか。
そんな中で、台湾 新竹サイエンスパークに本社を構える半導体製造ファウンドリのTSMCがうまい立ち回りを見せているという。
TSMCは米の禁輸規制強化を受けて「米国のルール変更に従う」とのコメントを出した。一方「外部の弁護士と分析して解釈を確認する」といい、ファーウェイとの取引停止が必要か最終的な確認を行うもようだ。台湾の業界関係者の間では、TSMCが同日に米政府の要求に応じ新工場建設を表明したことで規制強化を回避できるとの期待も出ていた。 (出所:日本経済新聞))
ロイターによれば、「米国の新工場が稼働しても、生産はTSMC全体の3-4%に過ぎず、収益率には重しになるかもしれない。しかし、この大型投資は、米中2大市場の顧客基盤を守るためには、TSMCがこれほど多額であっても喜んで支出しようとすることを浮き彫りにする。バーンスタインのアナリストは、TSMCが過去に中国で行ってきた工場進出でも同様の戦略が取られていたとし、今回の投資決定と合わせ「米国と中国の間で同社が、バランスを取ろうとしていることを示唆する」と指摘したという。
台湾の新竹市にあるサイエンスパークを最初に訪れたのは、もう何年も前のこと。そこは台湾のシリコンバレーと呼ばれる地だ。何度も通いうちに、台湾のハイテク企業と米国ハイテクの企業との結びつきの強さを感じた。
台湾の玄関口桃園国際空港では、よく広東語が耳にし、香港便の多さに驚いた。台湾と香港の往来の多さから、その結びつきを感じたりしていたことを思い出す。
香港問題が再燃している。香港国家安全法をめぐり、米政府は香港の自治失われたと公式に判断したようだ。
香港が米中対立の前線となったといいうことだろうか。これに新疆ウイグル自治区の人権侵害問題も絡む。
一方で、台湾政府は、TSMCとはまた別の動きを見せる。
ロイターは、台湾の蔡英文総統が、香港の人々に「必要な援助」を提供すると表明したと伝える。
Newsweekは、香港が英国の統治下にあったときの最後の提督クリス・パッテン氏の言葉を紹介する。
パッテンはイギリス政府に対し、「私たちが目にしている事態は、共同声明を完全に破壊するものだ」と考えるべきだと主張。共同声明とは1997年の香港返還の際にイギリスと中国の間で交わされた合意文書だ。これによれば香港は「一国二制度」の下で少なくとも2047年までは自治を維持できることになっている。 (出所:Newsweek)
新型コロナという人類共通の感染症問題に立ち向かわなければならない今、こうした二国間のデカップリング問題に世界が巻き込まれてしまう。
政治とはいったい何であろうかと考えてしまう。
ビジネスを通してだが、香港人、台湾人、中国人と多くの知り合いがいる。ビジネスを超えてよき仲間だと感じる。しかし、そこに国家とか政治が絡むと、その絆にも影響を及ぼす。
人類の歴史を対立の歴史として簡単に片づけてしまってはいけないのだろう。
かつて、東西冷戦は、ソ連ゴルバチョフ、米国レーガン、英国サッチャーが協奏することで終結した。
アフターコロナでは、この両国の動きに翻弄されることを避けなければならない。世界が協力することが今求められているはずだ。
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