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東大が面白い! 次々と企業と連携、SDGsにも東大の力

 

  民間企業との連携を次々と東大が発表している。11月末に台湾TSMC半導体関連で、その後、ソフトバンクと『Beyond AI研究所』を共同で設立、研究成果の事業化に向けた取り組みに関する協定を締結したと発表した。その後も、メルカリと「価値交換工学」の設置を、IBMとは「量子コンピューター」の研究開発で協力すると発表した。

 産学連携は珍しいことではないまでも、こう続けざまに連携の発表があると興味を引く。国境を越えた連携はもう珍しくないのかもしれないが、台湾TSMCとの連携は特に興味を引いた。進化は終わっていないが、技術開発の方向性がはっきりし、産業界だけでも開発が可能と思われる半導体で東大がTSMCと連携することに少々驚いた。それに加え、連携発表時に東大総長の五神真氏が同席していることに興味をそそられた。

 五神真総長、第30代東京大学総長で任期は2015年4月1日から6年間。物理学者であり、理学博士、東京大学教授でもあるという。

 総長に就任した2015年10月に「東京大学ビジョン2020」を発表し、「異分野間の対話と連携、さらには摩擦や衝突もシナジーに変えるという「卓越性と多様性の相互連環」こそ、東京大学のあるべき姿だ」と話す。(出所:mugendai) 

 

 五神総長はSDGsにも着目していると言い、「学内外の活動の共通目標」と語る。

SDGsの達成には分野を超えた連携が必須ですので、その異分野融合を促すために、司令塔として、昨年7月に総長室直下に未来社会協創推進本部 (Future Society Initiative)という全学的な組織を立ち上げました。SDGsの達成という高いビジョンを共有したうえで研究活動を行なったり、産業界と連携を進めることを通じて、人類社会が調和的に発展することに貢献したいと考えています。(出所:mugendai)

www.mugendai-web.jp

 

「mugendai」のインタビューでは、「ゲームチェンジ」「多様性」「産業界との連携」という言葉を多用する。各発表時における五神総長の言葉から、その真意を探ってみよう。

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 台湾TSMCとの連携 先進的な半導体の実現には学理と技術のシナジー

 「東京大学TSMCゲートウェイ構想

東大がチップデザインのためのハブ(拠点)となり、日本の新産業とTSMCゲートウェイになるという。また、先進的な半導体実現のための共同研究を進める。 

 マイナビニュースが紹介する五神総長の言葉。

 「通信技術は、サイバー空間とフィジカル空間を生み出し、その融合が今進みつつある。その結果、社会のさまざまな領域でデータ活用が進み、スマート化が進んでおり、経済的な価値はモノから無形のサービスへとシフトし、人類のあらゆる営みに不連続な変化をもたらしている。それは資本集約型の社会から、知識集約型の社会へのパラダイムシフトであり、これにはリアルタイムでのデータ活用が必要となってくる。日本ではSociety 5.0の実現に向け、さまざまな試みが進められているが、その実現には半導体は必要なもの。センサ、サーバは言うに及ばず、データ解析も複雑化が増す一方で、データセンターの電力消費量も増大。地球環境に負荷をかけずに、サイバー空間を持続可能なものにするためには、半導体の電力性能を向上させるための進歩が求められている。そこではナノテクや物性科学の粋を極めたものが求められる。それを実現していくためには、最先端の学理と技術を動因する必要がある。そのためにTSMCと東大が組んで、トップレベルの技術と学理の融合を図ろうというのが今回の取り組み」(出所:マイナビニュース)

news.mynavi.jp

 

日経ビジネスで語る五神総長の言葉からは、東大が、「企業が連携するためのプラットフォーム」になろうとの意志を感じる。

「日本は半導体産業で非常に大きな技術の蓄積を持っている。活躍できる人材も産業界に数多くいる。半導体分野の技術や人材の蓄積を最大限活用して戦略的に勝負をかけなければいけないのはこれからの10年だ」(出所:日経ビジネス) 

business.nikkei.co

 

 

ソフトバンクが 「10年で200億円投資」 東大とAI研究所設立

 日本のAI研究がこれから世界と対等に戦っていくために、大学と強力なタッグを組む必要性を痛感しているとソフトバンクはいう。ソフトバンク東京大学と「Beyond AI研究所」を設立し、その特徴は、「AIに特化した取り組み」「事業化を念頭においた体制」「海外の著名なAI研究者を招聘」の3つとBusiness Insiderは紹介する。

 Business Insiderでは五神総長は次のように語る。

「今まで、溜め込んだビッグデータを使ってサービスを行ってきました。しかし、今後は時事刻々と集まってくるリアルタイムのデータに対して有効なサービスをどう作るかが課題になってきます。

日本には、SINETという自由に瞬時に使える大規模な(学術情報)ネットワークが整備されています。これは、世界的に見ても優位なインフラです。このネットワークを有効活用することで、逆転のシナリオの一つを作れるだろうと感じています」(出所:Business Insider)

  

 「豪雨が起きた時にリアルタイムで降雨量を測定し、別の場所にあるスーパーコンピューターを使って、洪水や土砂崩れの予測をするといった活用が想定される」とBusiness Insiderは紹介する。 

www.businessinsider.jp

 

IBM 日本に量子コンピューターを設置 東大と連携

本郷キャンパスに量子ハードなどの技術開発を行うための「量子システム技術センター」を開設する」とITmediaNEWSは伝え、そのIBMはプレスリリースで五神総長の言葉を紹介する。 

知識集約型社会への変革が人類にとってより良い社会をもたらすには、DFFT(Data Free Flow with Trust)を実現し、実空間とサイバー空間が高度に結合したグローバルコモンズ(=地球の資源と生態系を包含した概念)を持続可能かつ信頼できるものとすることが必要です。そのために、量子技術は最も重要な未来技術の一つです。量子コンピュータの商用利用を先導しているIBMと幅広い連携の枠組みを作ることで、基礎研究にとどまることなく利用技術につながる研究開発体制を我が国に一気に備えることができるとともに、それを担う人材育成を進める上でも大きな意義があると考えています」

www-03.ibm.com

 

   

まとめ 

 「パラダイム・シフトはゲームチェンジのチャンス」が五神総長の持論だという。

 デジタル革命が急速に進化し社会に浸透し、社会構造が知識集約型へシフトを始めている。そうしたパラダイム・シフトの中にあっては、大学の役割も変化する。

 人類社会をよりよい方向に導くためにと、東京大学が様々な企業と積極的に連携、ゲームチェンジを仕掛ける。理系と文系という従来の垣根を外し、東大の総合力を生かすそうとする。

 「Society 5.0(超スマート社会)」の実現のため、東京大学が、企業が連携するためのプラットフォームになろうとの意欲を感じる。様々な格差を解消し、多様性を尊重した社会、そんな未来像が五神総長の言葉から見えてくる。五神東大から目が離せない。

  

 

 

 「関連文書」

www.nikkei.com

forbesjapan.com

www.itmedia.co.jp

www.ibm.com

dshotmugdsupplying.iiblog.jp

ps.nikkei.co.jp