日本の基幹産業のひとつの自動車メーカが、窮地なのでしょうか。
トヨタでは社長が交代し、日産はルノーとの資本関係を見直しました。ホンダは、ソニーグループと提携し、新たなEVを共同開発するようになりました。
脱炭素やソフトウエア重視の流れが強まり、100年に一度の変革期というように自動車はまさに激動期のさなかにあるようです。
EVシフト
EVシフトが今後の競争力を左右するといいます。
テスラ筆頭に新興勢力が力をつけ、中国BYDが日本で販売を始めるのもその現れなのでしょう。
「EV時代」の今こそ問われるホンダの存立意義 | 最新の週刊東洋経済 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
EVシフトは国家が覇権を競い合うパワーゲームの側面も強い。(出所:東洋経済オンライン)
環境規制は国や地域によって異なり、中国や欧州などでは販売が伸びているといいます。一方で、電池などに使用される重要鉱物資源の争奪戦となりかねず、そこには国益も絡んでくるといいます。
「このままだと本当に日本の自動車産業は沈没する」、ホンダ幹部がそう危機感を滲ませているといいます。
半導体の失敗
かつて世界一を誇った半導体が米国の策略で衰退していったように自動車産業も凋落してしまうのでしょうか。
米国視点で見る「日本半導体敗戦」、痛手だったサムスンへの政治的支援 | 日経クロステック(xTECH)
日本の半導体メーカーによる最大の失策は、パソコンの流行を逃したことだった。(出所:日経クロステック)
日本企業によってDRAM事業から撤退すること余儀なくされた米インテルは、パソコン向けマイクロプロセッサー事業に注力するようになり、PCメーカーとの結びつきを通じてパソコン製造のエコシステムを形成することになったといいます。
同じ轍を踏まぬよう、その失敗から教訓を得るべきなのかもしれません。
復活を確かにしたソニー
電機業界では、ソニーグループの社長が、吉田氏から十時氏に交代になりました。業績好調時の交代に意外との印象を持ちます。
経営環境が大きく変化しようとする中、ソニーグループの企業価値を最大化するために、明確な「成長」軌道に乗せるための攻めの経営を行うためだ。(出所:Forbes)
ソニーが絶好調でも経営体制を見直すワケ | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
平井氏がCEOを務めたときに、中核のエレキ事業が立て直され、テレビ事業が黒字転換しました。また、ビジョンとミッションが定義されました。平井氏が6年余りで退任し、その後を継いだ吉田氏は、パーパス経営を掲げ、ソフトばかりに傾注することなく、ソニーの強みを改めて明確にしたのではないでしょうか。戦略、「ナラティブ」が明確になったといってもいいのかもしれません。
吉田氏の在任は5年余り、その後を継ぐ十時氏は、この物語を具現化し、カタチに変えて、成長軌道を歩むことになるのでしょうか。
「事業ポートフォリオは動的なもの。経営環境の変化に応じて常に変化するものだ。そして事業が多様になれば、それぞれに異なるハーベストサイクル(投資から回収までの期間)が生まれる。各事業を個別に理解・俯瞰して、投資と資金回収の経営を行わねばならず、またその判断のスピードも上げていかなければならない(十時氏)」(出所:Forbes)
記事によれば、吉田氏は十時氏の財務能力を「コンテンツの知財買収戦略について事業を深く理解した上で自ら動き、イメージセンサー事業では需要動向、競争環境の変化など事業部側と情報交換を密にしながら投資計画を詰めてくれた。2兆円の戦略投資枠を実現してくれたことも大きい。この予算があるからこそ自社株にも戦略投資もを実施し、5000億円の自己株式取得を財務面からサポートしてくれた」と評価したといいます。際立つ財務センスと実行力がこれから求められる能力になっていくのでしょうか。
いずれにせよ、ソニーの復活の物語をベストプラクティスにすべきなのでしょう。
ただ成長軌道を歩むことは、あらたな衰退の始まりのような気がします。不断な改革なくして、企業が持続的に成長していくことはないのでしょう。そのために、ソニーのようにCEOの在任期間をあまり長くせずに新風を注ぎ続けることも求められるのかもしれません。
「参考文書」
社説:日産の脱「ルノー支配」 生き残り戦略の出発点に | 毎日新聞
ソニー社長交代で見えた「再建→再成長」戦略 | 経営 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース