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【国のデジタル・半導体戦略】国内半導体産業が復活する道筋になるのか

 

 半導体不足が、まるでコロナ渦のようになかなか収束しそうにない。火災で生産停止したルネサスの工場が復旧すれば解消するかと思ったが、どうやらそうでもなさそうである。

 米半導体大手インテルのゲルシンガーCEOは、「半導体不足が解決するまでには数年かかる可能性がある」との見解を示しているという。

jp.reuters.com

 コロナによって生じた在宅勤務やオンライン学習の流れが「半導体の爆発的な成長サイクル」をもたらしたとの見方をする。生産能力拡大に向け200億ドルを投じてアリゾナ州に2工場を新設し、半導体の受託生産も手掛けるということがその証左ということなのであろうか。

 

 

 国内で半導体工場の拡張計画が次々に明らかになっている。そんな中、半導体ファウンドリーの世界最大手のTMSC台湾積体電路製造が、日本で初めてとなる半導体工場を熊本県に建設する検討に入ったという。

www.nikkei.com

 その新工場では、16ナノメートルと28ナノメートル技術を導入し、300ミリウェハーを生産するが予想され、ソニーや自動車向けになるようだ。

 現在の国内にある工場と比較すると、最先端の工場になるということだろうか。世界的にみれば、最先端ではないかもしれないが、実需があるところから始め、この先の半導体産業を強化していくことにつながっていけばいいのだろう。

 半導体素材や部品、設備では世界的な強みを持つが、いざその半導体生産になると、競争力があるのが、NAND型のフラッシュメモリーくらいで、その強みを活かしきれていない。生産強化できれば、開発の挽回もあるのかもしれない。

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 国の「半導体・デジタル産業戦略」がまとまったという。半導体・デジタル産業戦略検討会議で検討が重ねられ、経済産業省が公表した。

 それによれば、米中が技術覇権で対立する中で、再びグローバルサプライチェーンで中心的な役割・貢献を果たす地位を確立することが基本的な考え方だという。

 半導体は、失われた30年の反省と足下の地政学的変化を踏まえ、過去のレガシーが残存している間に、大胆な基盤強化を図り、産業発展の方向に舵を切り替えるという。

 

 

産業の脳

 先端のロジック半導体は、社会のあらゆる電子システムを制御し、データ駆動型経済を支える基盤デバイスであり、いわば「産業の脳」として重要であるが、ミッシングピースの一つになっていると指摘する。

 経済安全保障上の戦略的自立性の強化を図るため、海外ファウンドリーとの合弁工場の設立等を通じ、国内製造基盤を確保、さらに次世代製造技術の国産化を進めるとある。

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(資料:経済産業省「半導体戦略」

必要となる半導体生産・供給能力の確保

 国内に存在する工場が、グローバルサプライチェーンを支える役割を果たしていくためには、メモリ、センサー、パワー、マイコンのそれぞれにおいて、重要な半導体製造拠点の担い手とターゲットを見定めて、大胆な刷新を進めるという。

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(資料:経済産業省「半導体戦略」

  かつて日本の半導体は強かったといわれる。それから時が経ち、弱いところが淘汰され、競争力を維持できたものは生き残り、それがレガシーとして残っているのだろう。

 ただそうしたものもいつかは廃れる。国の主導がなくとも、本来、企業主導で動くべきなのだろうけれども。

 それともレガシー技術でも十分に需要に応えることができるから、大規模な投資が伴う先端には意欲がわかないのだろうか。

 

 TSMCが日本に工場を持つことは経済安全保障の観点から見えれば、意義あることなのかもしれない。

 それによって、国内メーカの半導体の供給不安も解消されるのかもしれない。ただ、それが自動車とスマホだけだとすると、いささか寂しい気もする。

....ビジネスの側面から見ると、日本に先端工場を持ってくる理由はどの会社にもない。日本に顧客がいないからだ。

先端は大事だが、半導体ビジネスで先端は1、2割。8割は先端ではないところを使っている。十分市場はあるし、そこで強くなることが日本にとってはまず重要ではないかと思う。 (出所:朝日新聞

digital.asahi.com

 日本製ロジックも強かった時代には、電機メーカーにまだ活気があり、半導体需要も旺盛だった。確乎としたハードウェアがあれば、シナジー効果半導体産業も勢いがあったのだろう。

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(資料:経済産業省「半導体戦略」

 これを機会にすればいいのだろう。

 優れたサービスも、優れたインフラ、そして、それを為す機器装置があって生まれる。 そして、卓越したサービスが卓越したハードウェアを育てるのかもしれない。両輪をそろえるべきなのだろう。

 そして、その先に一極集中から脱却していく道があるのだろう。

 プラットフォーム事業はGAFAが世界を席巻し、半導体は台湾と韓国が牛耳る。中国が台頭しようとすれば、それを叩こうとする。それでは、ますます一極に集中しいく。

 もしかしたら、国内半導体産業の再興がこうした流れに水を差し、軛から逃れることになるのかもしれない。いつまでも今までのような水平分業の時代ではないということなのだろう。それが富の分散にもつながったりはしないだろうか。