Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

コロナ渦のオリンピックとソニー復活が意味するもの

 

 ソニーTSMC台湾積体電路製造が手を組むようだと報じられる。情報ソースは日刊工業新聞。それによると、経済産業省主導によりソニー半導体ファウンドリー世界最大手のTSMCが合弁で熊本県半導体工場を建設する構想が浮上したという。前工程中心で総投資額1兆円以上を見込むそうだ。

japanese.engadget.com

 Engadgetによると、ソニーグループの吉田社長は経営方針説明会で、これについては「コメントは差し控える」としつつ、「(我々の半導体は)かなり部分がいわゆるファウンドリから調達している。当社にとってロジック(半導体部品)を安定的に調達するのは大切。また、一般論として思うのは、ロジックを含めた半導体を安定的に調達できるかどうかは、日本の国際競争力維持のために大切」と述べたという。

 2021 - 23年度の3年間で2兆円の戦略投資枠を設定すると発表したとロイターは伝える。

 かつて電機メーカは自社工場をEMSに売却していった。逆に、今度はファウンドリーと手を組んで国内に工場を作る。そうした流れがあってもいいのかもしれない。工場ができれば、そこで雇用も生まれる。

 また再びソニーが輝きを取り戻し、社会の牽引役になったりすることはあるのだろうか。

 

 

 c/net Japanによれば、説明会の冒頭、吉田CEOは就任以来の3年間、そして、前任の平井一夫氏が第1次中期経営計画を打ち出した2012年からの9年間を振り返ったという。

吉田氏はセグメントごとではなく、ソニーGの存在意義を軸に経営方針を示したことについて「チャレンジでもあった」と説明。企業文化が社員の実行力を担保し、「場合によっては戦略より重要かもしれないと」と述べた。 (出所:ブルームバーグ

www.sony.com

 吉田CEOの言葉に説得力がある。改革がうまくいったのも明確な戦略があってのことだろうし、その後で、その戦略の精神を企業文化として根付かすことができたということなのだろう。

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「ブランデッドハードウェア事業の収益力強化」では、赤字体質からの脱却のために、PC事業からの撤退、テレビ事業の分社化といった構造改革を実施し、規模を追わず、プレミアム路線に集中。「2014年の一連の施策が転換点だったといえる。とくに無配は、本社の構造改革を促進し、エレクトロニクス事業の構造改革に関わる社員の納得感につながった。スリム化した本社では情報の流れや意思決定のスピードが変わった。現在、ブランデッドハードウェア事業は、安定的にキャッシフローを創出する事業となった。モバイル事業の黒字化も今後につながる成果である。だが、環境変化が激しいため、常に進化するという経営の意思が重要である」とした。 (出所:c/net Japan)

japan.cnet.com

 前CEOの平井改革がちょうど始まるときに早期退職した。その改革がどういうものであったか、体感することはなかった。それまで赤字続きだったテレビ事業がエレキ部門の足を引っ張ていた。黒字化が絶対とし右往左往していた。平井改革で、そのテレビ事業が黒字化できたのは大きかったのだろう。

 テレビ事業については取引先から散々文句を言われていた。規模を追うわりには結果がでない。その数字に振り回されるばかりだと。

 

 

 コロナ禍が、オリンピックの夢を打ち砕こうとしている。その前に兆しはあったのかもしれない。カジノ計画は頓挫し、無人タクシーも実現はせず、オリンピックをより魅力的に見せるはずの演出はことごとくうまくいかなかった。コロナが観光に打撃を与え、傷が深くなったのかもしれない。砂上の楼閣だったのだろうか。

 そんなときにあっても、改革を続けてきたソニーが復活した。この苦しい時だからこそ、その歩みに、これからの進む道があるように思えてならない。もしソニーTSMCと共同で工場を作るようになれば、それで新しい幕が開けることになるのかもしれない。

 DXデジタルトランスフォーメーションというが、口先ばかりでうまく言っているとは思えない。強い製造業が復活すれば、もしかしたらDXを活かすことができるようになるのかもしれない。得手不得手はあるものだ。得意分野を起点に展開させていく方がよいこともある。砂上の楼閣はもういらない。