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【経済安全保障とサプライチェーン再編】避けられそうにもない「脱中国依存」

 

 コロナ禍の影響が薄まり、対面での外交が活発化することで、国家間の緊張が解ける方向に進むことを期待しています。先日の米中会談では、日本の課題でもある台湾有事が話題にあがり、最悪の事態にならないよう対話を重ねていくことが確認されました。好影響になることを期待したいものです。

 米国のエマニュエル駐日大使が日本外国特派員協会で講演し、中国の習近平国家主席が米国とその同盟国の首脳と微笑み外交したことについて、戦狼外交や経済的威圧で生じたマイナス面を覆い隠そうとするものだとの認識を示したといいます。

中国主席が重ねた首脳会談、戦狼外交ダメージ拭う試み-米駐日大使 - Bloomberg

 記事によれば、エマニュエル大使は、企業が低コストを理由に業務の最適化を図るグローバル化の古いモデルから中国はこれまで恩恵を得ていたと説明し、半導体など極めて重要なテクノロジーへのアクセスといった問題では要注意だと語ったといいます。

日米のように安定している民主主義国家に恩恵をもたらす新たなモデルが出現しつつあるとし、企業に「予測可能性というプレミアム」を提供すると語った。新型コロナウイルス禍や中国の威圧、ロシアによるウクライナでの戦争の局面を経て、「われわれは重要な経済再編・変革の初期段階にある」と論じた。(出所:ブルームバーグ

 

 

「経済安全保障」を前面に出したサプライチェーンの見直しは避けられそうにもありません。これに円安禍が加われば、さらに企業の背中を押し、その適用範囲が広がることになるのでしょうか。

 米アップルは、TSMC 台湾積体電路製造がアリゾナ州に建設し、2024年から始動する予定の工場から半導体を調達し始める準備をしているといいます。

米アップルが米国産半導体の調達を準備、アジア依存からシフト - Bloomberg

 これにより半導体調達におけるアジア依存を減らす大きな一歩となるといいます。これを皮切りに、サプライチェーン再編、徐々に中国依存からの脱却の始まりになるのでしょうか。

 中間選挙で下院の過半数を奪還した共和党は、「脱中国依存」を一段と加速させるよう主張しているといいます。

米中経済対立に拍車も 共和党「脱中国」加速で―米中間選挙:時事ドットコム

半導体レアアース(希土類)といった戦略物資の確保に向け、「サプライチェーン(供給網)を強化して対中依存を終わらせる」と訴えている。(出所:JIJI.com)

 また、民主党政権が再エネ製品の輸出大国である中国への依存を強めたとも非難しているそうです。

 

 

 日本国内では、製造業を中心にして、海外生産拠点の国内回帰を検討する動きが広がり始めているといいます。中国を念頭にした地政学リスクの高まりに加え、海外での人件費上昇、円安進行もこの流れを後押ししているそうです。

製造業、じわり国内回帰 地政学リスク警戒、円安も後押し―供給網課題、根強い慎重論:時事ドットコム

「国内回帰」にはさまざまなハードルがあり、今後の事業環境などを慎重に見極めようとする姿勢も根強い。(出所:JIJI.com)

 もっともな意見なのでしょう。国内の産業集積がうすくなった結果、必要なものが必要なときに手に入らないのなら、ムダを生み、非効率になりかねません。無理にして国内に戻ってくる価値はないのかもしれません。

 もう一度必要な技術寄せ集めて、産業集積を厚くするより、脱炭素や循環経済という視点で、国内にバリューチェーンを構築していくのがいいのかもしれません。

 

「参考文書」

米国とEU、非市場的政策への対抗で協力目指す-念頭に中国 - Bloomberg