Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

経済安全保障とSDGs 資生堂はなぜ国内回帰を進めるのか

 

 遠い異国での紛争が心理的にも影響するのでしょうか、エネルギーと食の安全保障が気がかりになります。その解決への期待も高まりましたが、また裏切られた気分です。改善の見込みはなくなったのでしょうか、今後が気になります。

 経済安全保障推進法がことし5月に成立し、これを受け「特定重要技術」の開発支援などに向けた基本指針案を政府がまとめたといいます。

 ゲノムやバイオ技術、半導体技術に量子情報科学など20の分野で調査研究を進め、大規模な資金を投入する特定重要技術を選定する考えといいます。

経済安保の「特定重要技術」、極超音速やAIなど20分野から選定し資金投入 : 読売新聞オンライン

重要な技術を他国や一部の外国企業などに大きく依存すると、関係が悪化した場合、利用に障害が生じる事態が想定される。国家戦略として、先端技術の開発に取り組む中国などに対抗する狙いがある。(出所:読売新聞)

 これまでの国際分業体制が終焉し、新しい技術、新しい産業は国内を主に、または協力関係を構築できる国々のみによってサプライチェーンが構成されることになるのでしょうか。

 

 

 こうした影響もあってのことでしょうか、一部産業においては国内回帰の動きがあるといいます。

 化粧品大手の資生堂が国内回帰を進めているそうです。これまで3カ所だった国内工場を、那須、大阪茨木、福岡久留米に工場を新設し、6工場体制となったといいます。

資生堂(上)生産の国内回帰を鮮明に アジアへの輸出拠点の福岡久留米工場が稼働|日刊ゲンダイDIGITAL

 日刊ゲンダイによると、資生堂はこれまで輸出先である各国に現地工場を造ることに力点を置いていたそうですが、新たな戦略のもと、生産拠点の国内回帰の成否が経営目標達成には不可欠になっているといいます。

外部環境が急激に変化する中、売り上げ拡大による成長重視から、収益とキャッシュフローを重視する方針に転換し、盤石の体制を構築したとしている。(出所:日刊ゲンダイ

 新設された久留米の新工場には450億円が投下され、最先端のIoTテクノロジーを導入したそうです。自動制御できる設備を化粧品業界で初めて実現、化粧品の充填に最新鋭のロボットを使い、リニア駆動の梱包装置を採用して、生産性を既存設備の3倍に高めたといいます。

(写真:資生堂

 また、施設内で利用する電力には100%再生可能エネルギーを用い、駐車場の敷地には太陽光パネルを設置、2023年にはさらに倍の太陽光パネルを設置し、使用する年間消費電力の11%をこれらによって賄うといいます。

 

 

 工場建屋は外壁や屋根の断熱性能を高め、照明器具も全館LED照明を採用するなどして省エネ性能を高めているそうです。また工場正面の白い外壁タイルは、原料に再生材料を20%以上用いるなどの工夫されているといいます。

  資生堂の本気のサスティナビリティの取り組みということなのでしょうか。23年以降に工場見学ができるようにするともいいます。 

 こうした資生堂SDGs的な構造改革が良き先例となって、他に波及していくことはあるのでしょうか。

 地球規模で考えれば、世界のどこで投資してもSDGs的な貢献は可能なのでしょうが、今はそれよりも経済の安全保障が優先されているのでしょうか。まずは国内優先、余力をもって再び工場の海外展開という流れになっていくのでしょうか。

 

「参考文書」

資生堂、最先端の生産技術を備えた「福岡久留米工場」竣工 | ニュースリリース詳細 | 資生堂 企業情報

経済安全保障推進法「特定重要技術」20の分野で絞り込みへ | NHK | 経済安全保障