円安で企業業績が好調といいます。その増えた利益で賃上げ率をかさ上げするのだろうかと、ある専門家を疑問を呈し、分析、予測を立てています。
コラム:来年の大幅賃上げは可能か、円安だけで実現しない物価目標=熊野英生氏 | ロイター
2022年度の賃上げ率は前年を少し上回っているそうですが、それでも、コロナ前に比べると低い水準にあるといいます。
企業の利益が増えても、それが賃金上昇には必ずしもつながらない理由はどこにあるのだろうか。
これは「古くて新しい問題」である。
賃上げがかつてのように3─4%台で進めば、それに連動して家計所得は増える。企業が値上げをする前提になる家計の許容度は、賃上げによって高まる。(出所:ロイター)
賃上げを拒んでいると、価格転嫁=値上げは容易でなくなり、企業収益は増えにくい、これを経済の悪循環といいます。
この悪循環を断ち切るチャンスが訪れていると記事は指摘し、日銀をはじめ、政府の面々は注視していることだろうといいます。
企業は価格転嫁し、円安効果があるのかもしれませんが利益は増加しました。ここで賃上げをすれば、良好な経済状態になるといいます。
現実問題として、消費者物価指数は10月に3.7%まで上昇しています。2023年4月以降の賃上げ率が、4%程度大幅な引き上げがなくては、その後の持続的な価格転嫁=値上げは進まないといいます。
ロイター記事は、為替レートの変化だけで輸入物価が決まり、それが消費者物価を押し上げるモデルで考察します。
来年2023年度の為替レートの平均が今年の平均値である137.8円以下となると、消費者物価指数の伸びはゼロ以下となり、円安要因だけで上昇していた物価は、円安が解消すると上昇が消え、企業の値上げー収益改善ー賃上げー企業の値上げという良好な経済状態に再び狂いが生じると指摘します。
また、日銀が10月末に公表した展望リポートでは、2023年度の消費者物価指数を1.6%とし、この背景には高い賃上げ率を想定していることが推測されるといいます。仮に、円安だけでこの数字を達成するには、2023年度平均で155円の為替レートが必要になるそうです。
最近の黒田総裁は、賃上げによって物価上昇が促されていないことを指摘して「私のイメージした物価上昇ではない」と説明している。この説明は、円安効果の信奉者の期待を裏切るものだ。円安効果だけでは、賃上げを十分に促せないと発言しているも同然だからだ。(出所:ロイター)
2023年度の物価が1.6%に伸びなかったなら、日銀は賃上げの想定が狂ったと説明するつもりなのだろうかと、記事は指摘します。
賃上げはマネタリーな要因で決まるのではなく、民間企業の意思決定によって決まる、もっと大胆な税制優遇を通じて賃上げをバックアップするなど手法を考えなくてはいけないといいます。これまで大規模な財政出動や低金利、円安をセットにしても、賃金は十分に上昇していないのだからといいます。
興味あるシミュレーションです。経済再生を掲げる政府がもしかしたら足を引っ張っているのかもしれません。防衛力強化など何かと理由はつけては入り用といって、増税をたくらみます。それでは、企業の賃上げムードに水を差し、消費者の購買意欲をそぐことにはなりそうです。
財政規律を高め歳出改革を実行し、減税余地を作り、一時的でも減税がないと経済の再生はないのかもしれません。経済が再生しないのは、愚策続きの政策によるということなのでしょうか。
「参考文書」
日銀にチャンス到来との声、金融緩和修正-円安反転で動きやすく - Bloomberg