「デカップリング」、中国との経済的つながりを断つ可能性は低いものの、サプライチェーンはこれまでと比べ統合されたものとはならない、とウォールストリートジャーナルが指摘しています。
地政学リスクの高まりが、サプライチェーン供給網を混乱させているといいます。米国をはじめ、国内回帰が活発化し、「世界の工場」中国から移転させる動きが加速しているといいます。
欧州企業においても「中国離れ」が広がっているとの見方を、EU欧州連合の中国進出企業でつくる「中国EU商会」の会長が示したといいます。厳格なゼロコロナ政策が理由になっているようで、別の新興国に拠点をうつす動きも出始めているそうです。
朝日新聞によると、「EU域内から2020年以降、中国に新規参入した企業は一つも無かった」と、中国EU商会の会長は説明したそうです。
欧州企業、中国で新規参入ゼロ チャイナリスクで第3国へ関心高まる:朝日新聞デジタル
「昨年末以降、企業はアジア各国、インド、トルコなど他国に対して強い関心を向けている」。(出所:朝日新聞)
中国への依存度を減らす動きは日本の製造業でも広がってきているといいます。
ダイキン工業は中国製部品が無くてもエアコンを生産できるサプライチェーン 供給網を2023年度中に構築するそうです。省エネルギーなど中核機能にかかわる部品を日本国内で内製化するほか、取引先に中国外での生産を要請するといいます。
ダイキンの他にもこうした動きが日本企業にも出てきているようです。さらに加速していくことになるのでしょうか。
新型コロナの感染拡大、ウクライナ危機を経て、グローバリゼーションがピークアウトしたようだといわれます。
世界の供給網は生産拠点を国外に移す「オフショアリング」から、国内回帰の「リショアリング」、友好国や近隣国での立地を重視する「フレンドショアリング」「ニアショアリング」の時代に入った。(出所:日本経済新聞)
ただ「フレンドショアリング」は、どの国がフレンドか明確ではないことが問題といいます。そのためなのでしょうか、米国はEU 欧州連合とは「貿易技術評議会(TTC)」、アジア太平洋諸国とは「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を通じて、ロシア、中国に対抗する強靱な供給網の構築を目指しているといいます。
経済の観点からすれば、自由な交易確保が最善の選択であり、自由な経済秩序と世界平和の維持は、民主主義国共通の課題としながらも、「専制主義国による武力行使は、世界の脅威」と日本経済新聞は指摘します。
世界は今、心の内なる道徳律を貫き、世界の平和と核兵器の恒久廃絶を実現する「毎日カント主義者」を必要としている。(出所:日本経済新聞)
現実にプーチンのロシアがウクライナに侵攻し、リスクといわれたものが現実化してしまいました。こうした世界にあって、リスクの高いからそろりそろりと抜け出ることは賢明な選択であることは間違いではないのでしょう。分断化を促進するような行為は慎むべきなのでしょうが、経済安全保障の観点からすれば、やはりリスク回避は早めにしておくことが肝要ということなのでしょうか。
「参考文書」
ダイキン、中国部品無しでもエアコン生産 有事に備え: 日本経済新聞
ダイキン 半導体を自社開発へ 効率化、安定供給に - 産経ニュース