デカップリング、米国経済と中国経済の関係性を解消、希薄化するなどの意味で使われてきたが、ウクライナでの戦争で、デカップリングの恐れとブルームバーグがいう。
WTO、世界の貿易見通しを下方修正-戦争でデカップリングの恐れ - Bloomberg
「コロナ禍から立ち直り始めたばかりの世界経済は回復が減速し、モノの取引が縮小するほか、世界の通商が広範にわたり分裂する恐れがある」と、WTO 世界貿易機関が、最新の世界貿易見通しでこのような見方を示したという。
見通しには食料不安や新型コロナ感染再拡大の可能性など多くの下方リスクがあると指摘した。(出所:ブルームバーグ)
「WTOは各国が武力に頼らず差異を協議できる場を提供するという、重要な役割を担うことができる」と、オコンジョイウェアラ事務局長を述べたという。互いの違いを尊重し合うことが求められるようになったのに、対立を好む人々がまだいることが残念でならない。
ロイターによれば、WTOの報告書は、コロナパンデミックが引き続き景気回復の重石となっているしたうえで、長期化するウクライナでの戦争が世界経済に打撃を与えると指摘しているという。
22年世界貿易予想、3.0%増に下方修正 食糧危機も警告=WTO | ロイター
「この紛争の経済的影響はウクライナ国境をはるかに越えて広がる」とし「パンデミックと戦争のダブルパンチがサプライチェーン供給網を混乱させ、インフレ圧力を高め、生産と貿易の成長予測を低下させたことは明らか」とWTOの事務局長は述べ、物価の急上昇による食糧危機のリスクにも警告を発したという。
輸入に頼るアフリカの約35カ国を含む低所得国が最も大きな打撃を受ける可能性があると警告。「食糧暴動の回避に向け断固として行動する必要がある」と述べ、より透明性のある監視システムの必要性と、価格を下げるための備蓄在庫の解放の可能性を指摘した。(出所:ロイター)
足元では戦争が食糧危機を招く要因となり、その長期化はデカップリングを助長しかねないということであろうか。
一方、サプライチェーンの大混乱に伴う経済への悪影響も、供給元などを多様化することで耐性の改善につながり、世界的なバリューチェーンを解体することなく大幅に軽減することができると、IMF 国際通貨基金の調査結果で明らかになったという。
サプライチェーン巡る混乱、供給元の多様化で影響軽減=IMF | ロイター
IMFは、新型コロナの感染抑制に向け貿易相手国が厳格なロックダウン(都市封鎖)措置を導入したことで、2020年上半期に各国で財の輸入および国内総生産(GDP)の大幅な減少が見られたと指摘。こうした減少は、最大限の効率化を目指して最適化されたバリューチェーンの脆弱性を明示し、各国政府による自国内への生産回帰の呼び掛けにつながっているとした。(出所:ロイター)
IMFの言わんとすることも理解できない訳でもない。リショアリング(外国に移した拠点の自国回帰)に向かえば、モノの流れが大きく変わり、国によっては大きな影響を受けて、経済が滞ることになりかねない。
国際機関がこうした警告を発するまでに分断化のリスクが高まっているということなのだろう。今後、グローバル企業はどう対応していくだろうか。
EU 欧州連合が、食料不足に対処するため食料外交を展開するという。ロシア側の説明に対抗するためという。
EUが食料外交に注力、ロに対抗 バルカン諸国や北アフリカなど | ロイター
EU外交筋は、食料不安が脆弱な国々に「憤り」をもたらしているものの、ロシア政府は今回の危機について、西側諸国による対ロ制裁の結果だと説明していると指摘。このことがEUの影響力を脅かす可能性があることから「食料外交と情報戦」で立ち向かう考えを示した。 (出所:ロイター)
何か分断化を助長しかねない措置に見えなくもない。こうしたことで食糧危機は回避されるのだろうか。そして、様々なモノの価格高騰に歯止めがかかるのだろうか。
避け得ないことなのだろうが、それと同時に和平を推進し、秩序をとり戻すことも進めなければならない。