ホンダが、国際的な部品供給網グローバルサプライチェーンを再編し、中国を切り離す検討に入ったといいます。
<独自>ホンダ、中国抜きのサプライチェーン構築へ - 産経ニュース
ホンダにとって中国はグローバルサプライチェーンの要であったが、ゼロコロナ政策によるロックダウン(都市封鎖)で国内外の生産に影響が生じたことを受けた理由といいます。また、米中対立や台湾情勢の緊迫化など地政学リスクに対応する。中国国内では供給網を再構築し完成車の生産を続けるといいます。
今さらとも感じますし、やはりそうなるのかとも思います。今後の動向が気になります。
産経新聞によれば、ホンダの部品供給網に中国が占める比率は、1~5割程度で見直しは難航も予想されるといいます。一方、ホンダの昨年度の世界生産414万台のうち中国は162万台と大きな市場のため、中国内での部品供給体制を再構築して事業は継続するといいます。
不確実性が増した世界で、グローバリゼーションが揺らぎ、終焉を迎えつつあるのではないかといわれます。
「グローバリゼーション」は死なず 米ハーバード大ロドリック教授:日経ビジネス電子版
日経ビジネスによれば、貿易データから見ても、明らかにこれまでのグローバリゼーションが減速方向にあるといいます。
新自由主義が拡がり、世界がグローバリゼーションを標榜するようになり、それに合わせて自国の社会を調整するようになったといいます。
グローバリゼーションが目的で、社会が手段であるかのような考え方でこれまでであったといいます。
しかし、世界が急速に変わり始め、もう1つの概念に回帰しつつあると日経ビジネスは指摘します。
いかに国内の包摂性(インクルージョン)を実現するか、いかに国内の強靱(きょうじん)な回復力を実現するか、いかに強固な公衆衛生システムを確立するか、さらにはいかに気候変動に対処するかといったことです。
これまでのようにグローバル化それ自体を目的とするのではなく、上記のような新たな目的のために、グローバル化を道具としていくことが、これからのグローバリゼーションといいます。
世界最大の工作機械メーカDMG森精機が思い切った給与改定を行っているそうです。2023年4月の新卒初任給を大幅に引き上げ、また既存従業員の給与は、新卒初任給の水準に合わせて22年7月に改定したといいます。
経営ひと言/DMG森精機・森雅彦社長「初任給引き上げ」 | 日刊工業新聞 電子版
ドイツや米国の社員に比べ日本人社員の給与が低く、「これではいけない、経営者としての責務」と社長の森雅彦氏は考えたそうです。
DMG森精機は、新しいグローバリゼーションの形を実践し始めているのでしょうか。
「ものづくり」という言葉を嫌い、「垂直統合こそ力」と森社長はいっているそうです。
DMG森精機社長、「ものづくり」という言葉が嫌い 垂直統合こそ力:日経ビジネス電子版
製造現場の効率化や製品の品質向上に向けたPDCA(計画・実行・検証・改善)や、P(計画)をS(標準化)にした「SDCA」には真剣に取り組んでいます。こうしたことは全然否定していません。
ものづくり、そしてことづくりも言葉自体が非常に良くないねということです。(出所:日経ビジネス)
「職人であり、商人である」ことを京都や関西では「職商人」と呼ぶそうです。森社長は、これにヒントを得て「垂直統合型ビジネスモデル」を発想し、工作機械の製造だけでなく、ソフトウエア開発から販売まで、全てワンストップで手掛けるようになったといいます。
職人による「ものづくり」が工業化の発展とともに分業化され、様々な部署が協力することでより効率的に生産できるようになりました。その進化が国際分業となり、これまでのグローバリゼーションだったのかもしれません。そして、これまでにない低コストを実現しました。
しかし、その反面で異なる価値観が台頭し、対立が顕在化しています。
これからは、デカップリング、こうした国をサプライチェーンから切り離した形にグローバリゼーションを進化させていくことになるのでしょうか。また、経済安全保障を鑑みた国内回帰の動きもあるのかもしれません。
一方で、脱炭素や循環型社会など新しい産業では国内から始まり、分業から垂直統合に回帰し、異なったカタチでのグローバリゼーションが始まるのかもしれません。
いつまでも同じ形であることの方が不自然なのでしょう。変え難い潮流に合わせた進化が求められるのでしょう。
「参考文書」
テスラ、日本で仮想発電所 電力系と組み戸建てに蓄電池: 日本経済新聞
工場が続々と国内回帰 円安だけではないその理由:朝日新聞デジタル
インドがコメ輸出を一部制限へ、厳しい国内供給で-世界市場にリスク - Bloomberg