Into The FUTURE

未来はすべて次なる世代のためにある

成長産業に群がる人たちとバッテリーのサプライチェーンの健全化

 

「木の電池」、セルロースナノファイバー(CNF)による蓄電体の開発を日本製紙が行っているという。CNF蓄電体の実用化の検証実例として、学術実験以外で世界で初めて、CNF蓄電体のLED点灯検証に成功したそうだ。7秒間、LEDが点灯したという。

セルロースナノファイバー(CNF)による蓄電体の開発に向けてCNF蓄電体開発の一環で、LED点灯検証に成功|ニュースリリース|日本製紙グループ

 日本経済新聞によれば、この「木の電池」には、需給が逼迫するレアメタル希少金属)を使わないのが特徴という。今後は容量を増やして、2023年度にはドローン用電池、30年にはスマートフォン用などでの実用化をめざすそうだ。また、将来はEV 電気自動車への応用も視野に入れるという。

 

 

次世代電池 リチウム金属電池

 ソフトバンクが、米スタートアップのエンパワー・グリーンテックと共同で、次世代電池「リチウム金属電池」を開発したと発表した。

ソフトバンク、容量2倍の次世代電池 米新興と共同開発: 日本経済新聞

 日本経済新聞によれば、同じ重さのリチウムイオン電池の約2倍に電気容量を増やしたそうだ。ドローンや計画中の「空飛ぶ通信基地局」向けに2023年の実用化を目指しているという。

 蓄電池の需要が伸長すればするほど、参加するプレーヤーは当然のように増え、新しい技術が登場することになる。それはそれでいいことなのだろう。ただ、今しばらくは既存の技術中心にして動くのだろうか。主役は引き続きリチウムイオン電池のままで、そこでも競争は激化していく。

なくならない資源の奪い合い

 リチウムイオン電池に必要な資源の奪い合いが起こっているという。

再エネや電気自動車に使用されるコバルトやリチウムが新しい『石油』に。米中が争奪戦開始 | ギズモード・ジャパン

国際エネルギー機関(IEA)は、世界各国がパリ協定の目標を達成するための対策を行なった場合、既存の鉱山によるコバルトとリチウムの供給では、2030年までに必要な量の半分しか満たせない可能性があると指摘しています。(出所:GIZMODO)

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 GIZMODOによれば、専門家は昨今の世界的な半導体不足と同様に、EV用バッテリーの供給不足が起こると警告しているという。

 脱炭素の主役のひとつとして、EV電気自動車が注目されれば、俄然、蓄電池の必要量が一気に伸びる。自国の自動車産業を擁護しようとすれば、資源の奪い合いが起きても不思議ではないのだろう。ただそれはいいことなのだろうか。

 

 

サプライチェーンを健全化できるのか

未来社会を創出する、バッテリー等の基盤産業振興議員連盟」、自民党の有志議員らによる議員連盟が6月に発足した。国内の電池産業強化が目的という。

電池開発強化で自民議連 旭化成吉野氏「崖っぷちだ」: 日本経済新聞

顧問の安倍氏は、設立総会において、「国家戦略を持って政策で支援していくべき産業だ」と電池産業の重要性を強調。会長の甘利氏も「電池産業は初期投資額が桁違いに大きい。民間事業者に任せるのではなく、政策の面から後押しする必要がある」と、官民共同の体制が不可欠であることを示した。(出所:日本経済新聞

 少々胡散臭いとも感じる。目ざとい政治家どもが手を出すほどに、注目される産業になったということなのだろう。

 世界各国が電池の確保に動けば、その供給能力が課題になるのだろう。そればかりでなく、使用済み後の電池の処理フロー確立も課題なのだろう。バッテリー自体を再利用する。また使用済みバッテリーから希少金属を取り出してリサイクルする必要もあるのかもしれない。

 一方で、バッテリーの原料のひとつであるコバルトの資源採掘では児童労働の温床になったりと、今あるサプライチェーンにおいても課題が多い。

 政治家が動くことで、既得権益化することなく、バッテリー産業を健全なものにすることができるのだろうか。それが世界と伍して戦う競争力になることを忘れてはならない。