米アマゾンが配送ドライバーの処遇改善のために今後1年間で、米国で4億5000万ドル(約650億円)を投じると発表したそうです。提携先の運輸会社で働くドライバーを対象に大学の学位などを取得できる教育プログラムを導入し、年金制度も提供するといいます。
Amazon、配送ドライバーの処遇改善に650億円投資: 日本経済新聞
アマゾンは既に物流拠点で働く自社の時給制の社員には、教育プログラムを提供しており、対象を提携先にも広げる形になるそうです。
米国政府の施策や補助金があっての行動なのでしょうか。
日本にはパワハラやセクハラに対する法律も一応あります。それなのになぜ奴隷的な労働や、パワハラ・セクハラがなくならないかというと、それを職場で実際にやめさせるような人権の規範や力がないからです。その結果、少なからぬ被害者が泣き寝入りをしている。その意味で言うと、法律をつくることよりも、規範をしっかりつくり、マジョリティーの側の価値観をアップデートしていく必要があると思う。(出所:日経ビジネス)
一方、国は、企業が人権対応を進めるための指針「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン(案)」を作成、公表したといいます。
日経ESGによると、中小企業を含む全ての企業に人権配慮を促すもので、実用的なのものといいます。人権対応の進め方や手順を分かりやすく解説し、企業事例を数多く盛り込んでいるそうです。
国際規範をコンパクトに解説している点や、新疆ウイグル問題やミャンマー、ロシアなどを想定した紛争地域での事業・調達におけるデューデリの在り方や責任ある撤退に関して、重点的な記載がある点は評価できる。(出所:日経ESG)
一方、「外国人労働者」や「国際調達」についてなどの記述内容に乏しさがあるといいます。
こうしたガイドラインがないよりは意識づけとの意味からしてもあったほうがよいのでしょうが、まずは規範を身につけ、ルールを守るという姿勢を醸成しなかれば、絵にかいた餅にならないでしょうか。
人権対応をやらないと海外の企業から取引を打ち切られる、機関投資家から投資を打ち切られるリスクがある――そうしたことも、人権対応の動機の1つにはなるかもしれません。けれども、自分たちの社会をもっと豊かで、人々が傷つかないものにしていくのは、投資家の金が欲しい、とか儲(もう)かるからやるという次元の話ではない。そんな問題とは関係なしに、必ず守らなければいけない最低限のルールなはずです。(出所:日経ビジネス)
斎藤幸平氏「資本主義のいい話は犠牲の上に成立している」:日経ビジネス電子版
自社ばかりでなく供給網 サプライチェーン全体を通して人権が守られるべきなのでしょう。そのためには、米アマゾンのようにまずは自社内から点検し、人権侵害がないか点検すべきなのかもしれません。それは国にも同じことが言えるのでしょう。
国が範を示すべきなのでしょうが、どうにも偏った価値観を押し付けているきらいがありそうです。
折角ガイドラインを作成したのだから、これを機に、国も企業も今一度自社から点検、見直しし、より良くするための改善を始めるべきなのでしょう。そうした活動を通して、規範意識が育つのではないでしょう。ガイドラインを継続的にアップデートしていくことは当然のこととして。