国際情勢の緊迫化、地政学リスクの高まりをうけ、経済安全保障に注目が集まります。台湾海峡で緊張が走り、そうした事態を目の当たりにすると、もうそろそろ最悪を想定すべきなのでしょうか。
どのレベルまで考えるべきなのかということもあるのでしょうが、対立がさらに進展し、かつての冷戦状態にもどることを現時点では想定すべきなのでしょうか。今しばらくは、これまでと同じ貿易体制が維持されつつも、徐々に様々な障壁が出現し、貿易が制約されることを考えておくべきなのかもしれません。
セイコーエプソンは、水平多関節ロボットの国内の生産能力を増強するといいます。
ニュースイッチによれば、現在の1:4の日本と中国の生産比率を25年度には2:3とし、日本の比率を高めるといいます。理由は、米国が中国からの産業用ロボットの輸入に対し追加関税を課しているためといいます。
「国内回帰」気運高まる製造業、企業トップに問われる国内・海外生産のバランス最適化|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社
これまで中国深圳が主力生産拠点だったそうですが、長野県安曇野市の豊科事業所の製造設備を拡充、自動化も進めるといいます。国内生産比率の引き上げにより、BCP 事業継続計画の強化も図るそうです。
産業により、また企業個社によって、その対応は異なることになるのでしょうか。
海外展開を基本戦略としてきた製造業にあっては、国内回帰の選択肢は困難との見方があるようです。これまで同様に海外展開を継続、関税状況によっては生産比率の国別再配分があるのでしょうか。
Gigazineによれば、半導体メーカーのロームも、国内回帰の意向はなく、「海外での事業活動に対する地政学的なリスクを懸念していますが、少なくとも現時点ではビジネスモデルの変更は考えていません」と、ニューヨークタイムズの取材で答えていたそうです。
再び冷戦のような世界に戻り、かつてのブロック経済体制に近づいていくことはあるのでしょうか。そうなった場合、これまで中国の成長を糧にしていた西側諸国にとっても大きな打撃になることは間違いないのでしょう。中国の台頭を牽制しつつ、自らの優位性を主張し続けることには限界が生じていないでしょうか。
「ブロック経済」とは、複数の国々が経済的に相互協力の体制を築いて域内における経済交流を促進し、域外諸国には閉鎖的な経済圏のことをいいます。世界恐慌後にイギリス連邦やフランスなどがとった経済的自衛策といわれ、自由貿易から保護貿易に転じ、それぞれが市場・原料供給地などを囲い込む閉鎖的な経済圏を設けました。
特定の国に対し、力に依る現状変更を否定し、しかし、その政策がかえって緊張を高める結果になっていないでしょうか。否定は相手に譲歩を迫るもので、力が拮抗していれば、それを望むことも難しくなるのではないでしょうか。 まして、人口を含め国力が劣れば、なお厳しくなるのでしょう。
こうしたこれまでの外交や安全保障政策に落ち度はなかったのでしょうか。自己を顧みて不用意に緊張を高めるような言動は慎むべきのような気がします。
相対的に国力を回復することができればいいのですが、それが難しいことであれば、差し当たっては様々な分野における自給率を向上させることが喫緊の課題のような気がします。また、それがカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなどの新しい価値の上で実現していくべきではないでしょうか。
「参考文書」
日本は再び世界的な半導体チップ競争の舞台へと復帰しつつある - GIGAZINE