世界鉄鋼協会の最新のレポートによると、2020年の中国の粗鋼生産量は前年比7%増の10億6500万トンとなり、全世界の生産量に占める比率は56.7%に達したという。中国の増加分だけで他国の減少分の合計を上回ったという。
一方、世界の鉄鋼業界が向こう数年で最大700億ドルの資産評価損を迫られる可能性があるという。
ロイターによれば、脱炭素を理由にして、今後、石炭を使用する溶鉱炉は不要もしくは操業不可能となり、「座礁資産」となる可能性があるという。
世界最大の鉄鋼生産国である中国を中心に、従来型高炉による生産能力約5000万トンの開発が進んでいる (出所:ロイター)
中国で、鉄鋼メーカーの再編が続いているそうだ。
中国政府は、生産能力が依然として過剰な状態にあると見ているそうだ。最大手の宝武を中心に再編を推し進め、余剰生産能力の削減につなげるようだという。
日本経済新聞によれば、中国最大の国有鉄鋼企業である中国宝武鋼鉄集団と同7位の山東鋼鉄集団が、経営統合など再編に向けて交渉を開始したそうだ。
中国の鉄鋼業界は新型コロナの影響が薄れ、経済が回復し始めると、多くの企業が増産に動き出し、20年の中国の粗鋼生産量は10億5300万トンと過去最高を更新したという。
こうした状況でも政府は警戒する。
中国当局はすでに21年の粗鋼生産量を前年より削減する方針を示している。
最大生産地である河北省唐山市では市当局が鉄鋼メーカーに対して、21年末まで生産量の大幅な削減を求める通達を出している。 (出所:日本経済新聞)
その中国で16日、温暖化ガスの排出量取引制度ETSの取引が始まったという。二酸化炭素排出量で40億トン以上の世界最大の市場で、第1段階では、約2225の発電所が対象となっているが、今後、鉄鋼、非鉄金属、化学などにも拡大されていくことが予想されるという。
ロイターは、これらの業界団体が政府と協力して業界のデータ収集に取り組んでいるという。
世界鉄鋼協会がまとめた2020年の粗鋼生産ランキングで、中国の宝武鋼鉄集団が初めて第一位になったという。これまでのトップだったアルセロール・ミッタルはその地位を譲り、2位に後退した。
国内鉄鋼メーカでは、日本製鉄が前年の3位から5位に後退、JFEスチールが順位を2つ落とし14位、前年55位だった神戸製鋼所は64位に後退した。
脱炭素時代、鉄鋼は強い逆風に晒されている。規模が大きくなればなるほど、脱炭素に対応する費用は膨大になる。一方で、野放図のように大小様々なメーカが乱立する業界ではなく、再編されれば管理はしやすくなる。
鉄鋼再編、従来の経済論理に従い、規模を追うということを捨て去るということはないのかもしれないが、脱炭素への対応があるのだろうか。
業界再編が進み、減産となれば、排出削減に向けた電気炉への転換などもスムースに対応できるようになるのかもしれない。
まずは業界の脱炭素化が最優先なのだろう。その技術革新が次の経済競争にも繋がる。優先順位を違えてはならない。
中国は、それを着実に進めようとしているのだろうか。国内では、なぜか「カーボンプライシング」の議論に反対勢力が存在するようだ。いつまで勘違いを続けるつもりなのだろうか。