世界的半導体不足に、脱炭素、それに加え地政学リスクが高まり、日本の半導体産業を再興させる動きが加速し始める。成長が見込める産業が興れば、国に活気が再び戻ることになるかもしれない。
半導体の性能如何でハードウェアの性能が左右され、また半導体は裾野の広い産業で、半導体製造に必要な素材や部材だけでなく、特殊な梱包用部材や製造装置と、多岐な産業が集まってはじめて成立する。半導体産業が発展することが、他の産業の発展にもつながっていく。
これまで忘れ去れた産業が活気づくことで、若者たちにも注目されるようになれば、国の活力も向上するのだろう。
注目の窒化ガリウムパワー半導体
スマホなどのハイテク製品には、最新の高性能な半導体が欠かせない。そうしたものについつい目が奪われがちだが、半導体の種類は多種多様で、「レガシー半導体」といわれるマイコンやパワー半導体なども欠かすことのできない重要なものだ。また、こうした半導体の不足がサプライチェーンの混乱に拍車をかけていたといわれている。
電源の高効率化に期待されていたGaN 窒化ガリウムパワー半導体が本格的な量産化に向かうことになるのだろうか。これまで誰も積極的に投資したがらなかったレガシー半導体にも日の光があたり、技術開発も加速するのかもしれない。
トヨタ系「パワー半導体」で攻勢、GaN種結晶を量産試作|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社
トヨタグループの豊田合成が、GaN 窒化ガリウムパワー半導体の市場形成に向け、GaNの種結晶(種となる小さな単結晶)の量産試作を始めるという。
注目が集まるパワー半導体の中で、GaNは、SiC 炭化ケイ素を利用した半導体に比べ対応できるエネルギー量が大きく、高電圧に対する耐性が高いといわれている。
ルネサス パワー半導体工場が再稼働へ
ルネサスエレクトロニクスが、2014年10月に閉鎖した山梨県甲斐市の甲府工場に900億円規模の設備投資を行い、300㎜ウェハ対応のパワー半導体生産ラインとして、2024年に稼働再開させることを発表した。
甲府工場に投資し、パワー半導体生産の300㎜ラインとして稼働再開 | Renesas
甲府工場で本格的な量産が開始されることにより、ルネサスのパワー半導体の生産能力は現在の2倍になるという。
脱炭素社会の実現に向け、電力供給や制御を担う高効率なパワー半導体の需要が、今後世界的にますます高まる見込みとルネサスはいう。特に、EV 電気自動車向けの需要が急拡大することを見据えているそうだ。甲府工場では、IGBTやパワーMOSFETなどを生産するという。
脱炭素社会では今まで以上の省エネが求められそうだ。電子機器の省電力化には卓越した回路設計に加え、そのためには高効率なパワー半導体が不可欠になるのだろう。
高専で半導体人材の育成始まる
国立高等専門学校機構が、半導体人材の育成事業を開始すると発表したそうだ。企業や大学と連携し、全国の国立高等専門学校で半導体の専門知識や技術を習得できる体制を整えるという。
「大学から学ぶのでは遅すぎる」、高専機構が半導体人材の育成事業を開始 | 日経クロステック(xTECH)
産業が廃れてしまうと、それに携わる人々が減り、専門知識も衰退していく。高等教育にも流行り廃りはあるのかもしれないが、やはり基幹技術を途絶えさせてはならないのだろう。世界的に半導体の隆盛が続いていたにもかかわらず、注目されずに荒廃したのであれば残念でならない。同じ轍を踏むことなく、基幹技術を守るという姿勢を貫いて欲しい。