日清オイリオグループは4月1日から家庭用と業務用、加工用の食用油をまた値上げすると発表したといいます。値上げは昨年以降5回目となるそうです。
日清オイリオ、食用油を再び値上げ バイオ燃料需要の増加や労働力不足が原因:2022年4月から - ITmedia ビジネスオンライン
ITビジネスオンラインによると、日清オイリオは「世界的なバイオ燃料需要の増加や東南アジアの労働力不足によるパーム油需給の逼迫など、製油業のコスト環境が極めて厳しい状況が続いている」と値上げの背景について説明し、「これまでの価格改定の水準では原料コストの上昇分全てを吸収することは極めて困難である」としているといいます。仕方がないことなのでしょうか。
政府もこうした原材料コストの上昇分の適正なる価格転嫁を容認している姿勢を示しています。
日本経済新聞によれば、経済産業省が下請けの中小企業15万社を対象に、原材料コストや人件費の上昇分を価格転嫁できたかどうか大規模な調査に乗り出すといいます。
悪質事業者の洗い出しを急ぐとともに、大企業との取引環境の一段の改善につなげる。円滑な価格転嫁を進めなければ、賃上げの裾野も広がらないと判断した。(出所:日本経済新聞)
一方で、ライオンなどの日用品メーカは、単純な値上げは予定していないといいいます。
東洋経済プラスによると、「生活者ニーズや社会課題を解決する「製品の高付加価値化」を進めると共に、コストダウンや費用の効率化で対応していく」としているといいます。
ただ、「原材料価格のさらなる高騰や長期化が見込まれる場合は、単純な値上げも検討せざるを得ない」ともしているそうです。
高騰続けるパーム油
ライオンなど日用品メーカも、食用油メーカ同様、パーム油を原料に使用しています。
そのパーム油の価格は、1トンあたり576ドルから1344ドルへ2.3倍に上昇しているそうです。東洋経済プラスも「原産地の東南アジアの天候不順や労働力不足」があると指摘し、パーム油も原油も、生産国の生産が追いついていないといいます。
こうした状況を受けて、花王が日用品メーカで始めて値上げについて言及し、3月からの値上げを発表したといいます。
オーケーと対決、花王「値上げ宣言」で広がる茨道 | 値上げの裏側 | 値上げの裏側 | 週刊東洋経済プラス
花王が値上げを発表するのは初めてだと思う。だが昨今の原料高は(今までと)次元が異なる。日用品メーカー最大手の花王がリーダーシップをとらなければ値上げは前に進まない。必ず値上げをやっていく。(出所:東洋経済プラス)
しかし、こうした動きに、食品スーパーのオーケーが反発し、実際に値上げが広がっていくのか、まだ五里霧中状態のようです。
花王の値上げ交渉は茨の道となりそうだと東洋経済プラスはいいます。
特に取り扱いが多いドラッグストアとの交渉は一筋縄ではいきそうもないと指摘します。
ドラッグストアは近年、価格訴求力を強めることでスーパーなどほかの小売りから客を奪って成長してきた。値上げはそうした勢いをそぎかねない。各社は日用品など使用頻度が高い商品はむしろ値下げ攻勢を積極化させている。(出所:東洋経済プラス)
「人々の可処分所得が増えない中、客の支持を得るために価格は非常に重要。利益を上げている今だからこそ、ディスカウント(値下げ)を一層強化した」と、業界3位のコスモス薬品の横山社長は述べているそうです。
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どの言い分も正しいことを言っているように聞こえますが、それで実際に賃上げは実現し、経済は成長路線に回帰するのでしょうか。
マーケットが拡大し、景気が持続的によくなっていくという楽観性が支配しない限り、難しさを伴うのかもしれません。