インドネシア、タイ、ベトナムなど東南アジア各国もカーボンニュートラル宣言し、この地域でも脱炭素が勢いを増して加速していくのだろうか。
シンガポールは、COP26でPPCA 脱石炭国際連盟への加盟を発表した。PPCAに加盟するアジアの国はシンガポールが初めてとなるという。PPCAへの加盟に伴い、2050年までに、引き続き発電燃料として温室効果ガスの排出削減対策がとられていない石炭の使用を段階的に削減するそうだ。
シンガポールのグレース・フー環境持続相はCOP26のハイレベル会合で、「パリ協定の目標達成に向けて、国内の産業や経済、社会を、エネルギーと炭素効率を良くするよう変革するとともに、低炭素エネルギーの導入を拡大していく」と述べたという。
脱炭素で変わるシンガポールの石油コンビナート
そのシンガポールのジュロン島には世界有数の石油コンビナートが存在する。
BPやエクソンモービル、シェブロン、シェルなどの石油メジャーに加え、BASFやデュポン、三井化学、住友化学などの世界のプラスチックスメーカがこのコンビナートに立地する。この島における石油精製量は1日あたり130万バレルに達し、ガソリン、灯油、ジェット燃料を製造する。また、原油からはナフサが作られ、それを起点にして様々なプラスチックスなどの化学品も作られている。
このジュロン島にも脱炭素の波が押し寄せている。持続可能なエネルギーと化学品工場の島に変えるという。いわば、この島がシンガポールの気候変動への取り組みの「中心地」になるということのようだ。
シンガポール版サーキュラーエコノミー
この石油コンビナートに工場を持つ石油メジャーのシェルは、廃プラスチックを熱分解油に変換し、ナフサクラッカーを経て、サステナブルな化学品を製造するという。
その化学品のひとつはサステナブルブタジエンだという。これを原材料とし、同じくジュロン島にプラントを持つ旭化成が、S-SBR 溶液重合法スチレンブタジエンゴムを生産する。このS-SBRは、主に「エコタイヤ」省燃費型高性能タイヤに用いられる合成ゴムだという。
自動車の燃費はタイヤにも依存し、燃費が悪化すれば、当然CO2の排出は増えることになる。また、自動車のライフサイクル全体のCO2の排出を低減させようとすれば、当然タイヤも対象となり、サステナブルなタイヤが求められる。
旭化成によれば、従来のS-SBRを用いたタイヤに比べ、この新しい材料を用いれば、CO2を大幅に削減されることが期待できるという。
東南アジアで深刻なプラごみ問題
シンガポール近隣の国々はプラスチックスごみの処理が問題になり、それが原因となって海洋ごみが発生しているといわれる。
オランダの環境団体「The Ocean Cleanup(ザ・オーシャンクリーンアップ)がこの地域の河川に、ごみ回収船「インターセプタ―」を設置、ごみ回収を続けている。
ごみも適切に処理されず、放置されれば、川に流れ出て、それが海洋ごみになったりしてしまうのだろう。シェルのプラントがこうして回収されるごみの処理にも活用されればいいのかもしれない。