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供給網の改善が進むことはあるのだろうか

 

 半導体不足に始まり、資源高、サプライチェーン(供給網)の混乱と言われて長い時間を経つが一向に正常化する兆しが見えない。

 脱炭素に、異常気象、地政学リスクの高まりなど様々な要素が加わっていることが問題を複雑化させているのだろう。

正常化する海運?

 そんな中、世界最大級の海運会社APモラー・マースクが、サプライチェーンの問題は数カ月後には正常化している可能性があると示唆したという。

 海運、物流の混乱もその要因のひとつだった。船は荷揚げできずに港の外で長く待たされ、コンテナが不足するようになった。その悪影響が収まることは吉報になるのかもしれない。

インフレ押し上げる供給制約、下期には緩和見通し-海運大手マースク - Bloomberg

 ブルームバーグによれば、マースクのCEO最高経営責任者が、これまで続いてきた海運の滞りは今年下期に解消され始めると予想しているそうだ。消費者物価の押し上げ、製造業の生産を鈍らせてき供給網の混乱が長引くことへの懸念が緩和されていくという。高騰した運賃も正常化に向かうということであろうか。

 

 

モノ不足はまだまだ続くのか

 一方、日経XTECHは、サプライチェーン上における「モノ不足」は22年も続きそうだと指摘し、22年に供給が難しくなると予期されている4つの分野「建設関係資材」、「プラスチックス」、「食品と肥料・農薬」、「アルミニウム」について説明している。

2022年のモノ不足、4品目の状況を予想する | 日経クロステック(xTECH)

プラスチックス」、脱プラが進んではいるのだろうが、その利用はまだ広範に及んでいる。ここ最近の食品の値上げにおいても、包装用プラの高騰が示唆されている。原油高に加え、アジアで需要が堅調に推移し、プラスチックス原料の需給の引き締りの影響があるという。

 昨年米国テキサス州大寒波が襲った影響で、一部プラスチックス材料の供給が不足したといわれている。これを教訓にして、在庫を積み増すメーカもあるというが、この先も起きるであろう異常気象への対処できるか課題を残しているという。

アルミニウム」、脱炭素を理由に中国がアルミニウムの生産を絞り、その影響で需要と供給のギャップを生じさせているという。日本でも飲料メーカにおいて、アルミ缶不足が生じているそうだ。

食品」、資源高に加え、新型コロナによる工場の操業低下により、肥料、農薬が高騰しているという。これは、今期の収穫量の低下にもつながることが予想されるという。

 

 

一時的なGDPの回復か

 内閣府が発表した2021年10~12月期のGDP 国内総生産速報値では、実質で前期比1.3%増、年率換算で5.4%増となったという。

 個人消費は前期比2.7%増え、内需のもう一つの柱である設備投資も0.4%増で2四半期ぶりの増加になったそうだ。

10~12月GDP、実質年率5.4%増 2期ぶりプラス成長: 日本経済新聞

 日本経済新聞によれば、前期は緊急事態宣言下での企業間の商談の滞りや、東南アジアでの感染拡大による部品供給の遅れでマイナスだったが、10~12月期は持ち直したという。

 ただ、メーカごとでその回復ぶりには差があり、まだまだ回復軌道に戻ったと喜ぶことはできそうにもない。

 たとえば、三菱電機が第3四半期の決算を発表し、21年度の業績見通しを前回から下方修正したという。売上高は100億円減となり、営業利益も200億円減の見通しを公表した。こうした業績に水を差すことになったのは、半導体不足をはじめとするモノ不足に、それらに伴う素材価格や物流コストの高騰の影響という。

半導体・部材不足、在庫を持つか価格交渉か 三菱電機の対策 | 日経クロステック(xTECH)

 特に、自動車機器事業と国内向け空調機器事業が影響を受けたといい、空調機器事業では、在庫を極力持たない生産戦略が裏目に出たと日経XTECHは指摘する。

地産地消”、すなわち国内生産・国内消費を基本とするため、あまり在庫を持たない形で国内向け空調機器を生産・運営している。

これは本来、造りすぎのムダや値崩れを防いで利益を高める手法だが、在庫が薄い分、半導体や部材を調達できなくなるとすぐに製品を造れなくなるため、生産・販売台数に直接響く。(出所:日経XTECH)

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 この混乱を経験することで、メーカの資材調達のしかたやサプライチェーンそのものに変化が生じるのだろうか。いずれにせよ、理由は何にあれ、資材調達に滞りが生じれば、業績に直接影響する。これまでは一時的で限定的な供給網の混乱はあったが、これほど長引く混乱を経験することはなかった。今までは部材はあって当たり前だったが、もうそろそろその考えを改めていかなければならないのだろう。この先は調達力が競争力の源泉のひとつになりはしないだろうか。

 電機会社にいたころ、冗談交じりに、身分制度士農工商を持ち出しては自虐的に、資材調達部門はそれ以下だからなと言っては笑っていた。