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【増える石油需要予想】脱炭素プランをアップデートさせる必要はないのだろうか

 

 中国における、リチウムイオン電池用の炭酸リチウムの取引価格が10月中旬時点で1トンあたり約320万円(18万元)になっているという。

 日本経済新聞によれば、1月中旬時点に比べ3倍近く上昇しているそうだ。希少資源といえども、元々は地球に内蔵され、資源自体は無料なのに、採掘して流通すると、これまで上昇してしまうことに驚くばかりである。このまま単純にEV拡大路線がいいのだろうかと疑問を感じてしまう。

中国BYD、EV用電池2割値上げ 原料リチウム高騰で: 日本経済新聞

 中国のEV電気自動車メーカ大手で車載用電池の外販を行うBYD比亜迪が、その車載電池の外販価格を11月から約2割上げるという。電池の主要原料であるリチウムの価格が高騰しているためだそうだ。中国や欧州を中心にEVの新車販売が伸び、電池需要が急増しているという。

 

 

 自動車のEV化が進めば、石油の需要も減じていく。現在の石油需要の半分以上を自動車を含めた輸送が占めている。

石油需要の中期的な減少見通しは、再生可能エネルギーが存在感を増すことを想定したものだが、国際エネルギー機関(IEA)は、再生可能エネルギーが急速に伸びなければ価格高騰や需給逼迫を解消できないと指摘する。 (出所:ロイター)

アングル:石油の供給と需要、ピーク迎えるのはどちらが先か | ロイター

 ただ単純に再生可能エネルギーが増加したからといっても、肝心の自動車などの電化が進まなければ、いつまでも石油需要が残り、場合によって資源開発の資金はいつまでたって必要なのではなかろうか。世界の脱炭素プランをアップデートする必要があるのではなかろうか。

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 経済産業省が、現状のガソリン車など内燃機関車の燃料として使用できる合成燃料の研究開発・社会実装計画案を公表した。

第7回 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 エネルギー構造転換分野ワーキンググループ(METI/経済産業省)

 経産省はこのプロジェクトにおいて、2017 年の IEA の分析を紹介している。

(自動車の)電動化が世界的な趨勢だが、エンジン車との共存が続く見通しであり、2040 年時点においても、乗用車販売に占める 84%はエンジン搭載車となっているため、世界的なカーボンニュートラルの実現には、脱炭素燃料の導入が重要となる。加えて、新規の合成燃料開発と合わせた燃料利用技術の最適化を進めることによって、相乗効果による更なる CO₂削減も期待される。 (出所:経済産業省

 その上で、今後、自動車分野においてカーボンニュートラルを実現する上では、バイオ燃料に加えて合成燃料も、電動車が潜在的に抱えている課題を克服する解決策の一つと考えられると指摘する。

 

 

 このプロジェクトにおいて、合成燃料は2040 年までの自立商用化を目指し、高効率かつ大規模な製造技術を確立するべく、大規模化に向けた実証を段階的に行うという。また、効率的燃焼とエミッション低減に向けた基盤となる研究を実施することによって、特に合成燃料の導入初期段階で想定される利用者の経済性悪化の緩和や、合成燃料の燃焼による大気環境への影響の緩和などを図り、将来の運輸部門等の脱炭素化に貢献させるという。

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(出所:経済産業省

 このプロジェクトで示す計画が、自動車など輸送機関の脱炭素化のバックアッププランという位置づけではないであろう。EVシフトを進める必要性に変わりはなく、それがメインストリームなのかもしれない。しかし、この計画を前倒し早期に実現させる必要もあるのではなかろうか。

 再生可能エネルギー整備を進まない途上国を思えば、合成燃料の方がはるかに脱炭素化に貢献するのではなかろうか。

 そればかりではない、現実、ポルシェが既に南米チリで、e-fuel工場の建設をはじめ、2022年にはレース用に燃料供給を始めるという。EV一辺倒と思われた欧州も合成燃料の目を捨てている訳ではないのだろう。競争がすべてではないが、脱炭素の世界のトップランナーであって欲しいなんても考えてしまう。