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「値引きはできません」家電量販店で委託販売を増やすパナソニック、製品サイクルは変わるのか

 

 パナソニックのブランド認知度が低下しているそうです。日本国内の20代若年層における「パナソニック」の認知度が53%だったといいます。米国でも47%にとどまり、「認知度の低さは将来の売り上げに影響する」と危惧を示し、「少なくとも80%までは引き上げたい」と、ブランド戦略担当執行役員の森井氏が述べたといいます。

パナソニック、20代認知度わずか53% ブランド強化急ぐ - 産経ニュース

ブランド戦略におけるデジタル化の遅れや、ESG(環境・社会・企業統治)の取り組みの発信が十分でないことが背景にあるとみている。(出所:産経新聞

それに加えて、20代に訴求する魅力ある商品が提供できなくなったということでもあるのでしょう。

 

 

 パナソニックが、これまでの商慣行を見直し、家電量販店で委託販売する商品を増やしているそうです。委託販売で変わることは、値引き販売をしなくなることといいます。つまり販売価格の決定権が量販店からメーカ側に変わること意味します。特定商品の販売のみに委託販売を適用し、それに準じる契約を取り交わせば、法的な問題は生じないといいます。

パナソニック「指定価格」導入に揺れる家電量販店 | IT・電機・半導体・部品 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 家電量販店にとってはこれまでのビジネスモデルを揺るがす由々しき事態なのかもしれませんが、一方で、パナソニック側には、売価維持のために1年ごとに新商品を投入しなければならないという悪習を断てることができるといいます。

 1年ごとの製品開発で大幅に機能を刷新するには限界もある。小さな機能変更が中心となってしまい、画期的な新製品は生まれにくい。それに対し新たな取引形態では、価格下落に対応する目的で新製品を投入する必要がなくなり、製品サイクルを2~3年に伸ばせることになる。(出所:東洋経済オンライン)

(写真:パナソニック

 こうした販売方法を見直すことで、魅力ある商品が開発できるようになれば、ブランド価値を棄損するようなこともなくなるのかもしれません。

 

 

 新しいものをつくる前には壊さなければいけないとよくいわれる。しかし、慣習を変えず、前例主義で変化を嫌がるのがいまの日本とForbesはいいます。

いま日本に必要な、もうひとつのR&D「Resarch & Destroy」 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

新しいものを生むために、いまの世の中の違和感や、進化を阻害しているものを調べて壊す必要がある。(出所:Forbes)

 そのためには、新しいR&D=Research & Destroyが必要と指摘します。パナソニックの商習慣の見直しは、この新しいR&Dなのでしょうか。

 電機メーカの調達部門にいた頃は、下落する販売価格に追いつくコストダウンを常に要求され、汲々としていました。原料が高騰したと値上げ申請しに来る素材メーカが羨ましいと思いつつ、疎ましくも感じたものです。

「今度家電量販店に行ったら、値引きは結構です。定価販売でお願いします」と言ってよと冗談でお願いしたりしていました。そんなことが現実になったのかと思いましたが、委託販売は何も新しいことではなく、小売りの業界では当たり前だったりします。古い慣習に縛られずに、双方にとって利益になる方法にもっと早く見直すべきだったということなのでしょう。

 こうしたパナソニックの動きに追従するメーカはあるのでしょうか。しかし、どんな時でも、お客様に納得いただける価格で提供することは絶対に避け得ないことであるのでしょう。